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「そんな・・・」
ニールはたじろいだ。今目の前に迫ってきているのは7体もの怪物。対してこの村にはまだ4割がたの避難待ちの人びとがいる。そして戦えるのは「山のラグ」半分と「湖のラグ」の子供勢だけだった。
「ここは俺たちが何とかする!子供たちは残りの人びとを非難させろ!それが終わったら君たちもそのまま隠れているんだ!」
『山』の大人たちがそう言った。即座に子供たちは従って、残りの人びとを集めた。知る限り『森』のテリトリーの近くまで行き、彼らを待機させる。
「ここまで来れば後は『森』が迎えに来てくれるだろう」
「一先ずは安心だね」
そういう声が聞こえる中で、ニールだけは覚悟が違った。
「このままでいいわけがない」
「え?」
他の子供達はニールに注目した。
「行ってくるよ」
引き止める声も聞こえないほど間髪を入れずに彼は駆け出した。
―マルナルさんはどうなった?このままだと大人の人たちも―――
村にたどり着くと彼は、多くの死体が地に臥せっていることにすぐに気が付いた。青砥のような輝きを放つ体毛に体を貫かれたものや、轢死体で体が伸びてしまっているものもいた。
「何をやっている・・・早く戻れ・・・」
残っている大人たちが力なくそう言った。
「そこにいては・・・いけない・・・」
大人たちの言う通りだった。ここにいる自分は何も力になれない。填足分にも入らない力量差だった。
「????」
怪物たちは、一体も数を減らすこともないままそこにいた。一体に1つずつ、計7つの目がニールを認めると、ゆっくり、だが恐怖を感じさせる地響きでもって接近してきた。ニールは、自分にできることを考えた。『湖』でそうやっていたように、自身に沈静魔法をかけ、相手を見据えた。ヤツらは、隊をなしているようにまとまりよく丸のようなかたちを作っている。そして、更に周りを見回して気づいたことがもう一つある。『山』の大人たちの数が最初とは合わない。そこに倒れている人を数えても半分にも満たないだろう。そして先ほど彼の言葉。ニールは冴えた頭で漸く理解した。素早く地を蹴って退いた。距離にして4~5メートル。これで十分すぎるだろう。
「そこだ!」
怪物たちの中心へと亀裂が走り、そいつらがいた場所辺りにはぽっかりと穴が空いていた。




