18
マルナルはいつまでも怯夫であったわけではなかった。
「ここで何とか出来るのは俺しかいない」
その怪物の飛ばしてくる針を何度も避け、往なすのと同じだけ、彼らに反撃を試みた。元より「ラグ」の指導役として一通りの技術を身に着けている彼は、他の村民や先ほどの「海のラグ」よりは戦えるだけの魔術そして体力を備えている。その場にある自然を武器にした戦闘を試みた彼は、大型動物であるニシエルグやインエイグマを仕留めるのと同じ要領で大きな針葉樹の枝を飛ばしたり、木自体を倒して自由を奪おうとした。
ところが、10ものそれらの勢いを落とすことはできなかった。輝かせた目をあちこちに向けて落ち着きのない様子でキョロキョロしながら、遂にそいつらは村の入口へとさしかかる。「小細工」が通じないと分かったマルナルは宙を移動しそいつらを追い越し、最終的に彼が行く手をふさぐ形で入口の前で仁王立ちしていた。この先へは何としてでも行かせてはならない。背水の陣でできる限りの力を振り絞れるよう、神経を集中させる。
状況は絶望的だった。その怪物は一体につき彼の4~5倍ほどの体格をしている。重量は7倍ほどもあるだろう。何よりそいつらはまだいくらも元気が有り余っている様子だった。力比べで勝負をしたことの結果は、する前から決していた。
だが、先頭を切って進んでくる3体をマルセルは力を放出して押し留めた。信じられない圧が、彼の腕を伝わる。
「化け物め・・・」
なるほど「海のラグ」を突破するだけの馬力はある。彼も覚悟は決めていたものの、精一杯耐えていた力も底を尽きようとしていた。
このまま村に侵入したらどうなる?弱きものは殺され、強きものも大して力にはならないだろう。どれだけの『海』が殺されたのだろうか?こいつらの目的は?ええい、そんなことを考えている場合ではない。こいつらは自分一人の手には負えない。ならば、被害を食い止めるには自分が何としても「邪魔」を成功させなければならない。
彼は別の覚悟を決めていた。
「少しでもここで潰す」
3体に分散させていた力を、1体に集約させる。そのまま手早く、そして効率よく力を使うことを考えたマルナルは一瞬のうちに最大出力になるよう力を調整し、その怪物を大空へと飛ばした。飛ばされた個体は自身に何が起こったのかも分からない様子で宙を漂っているようだった。
「ハッ!」
2体、3体と同じことを繰り返したところで彼は力尽き、そのまま倒れた。
無念かな残り7体のそれらは自分達の頭数が減ったことなど意にも介さない様子でのっそりと村へ入っていった。




