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17.海の怪物

村落に到着した時には、全てがパニックに陥っていた。怪物の姿は幸いにもまだないようだが、辺りは逃げ惑う人々で埋め尽くされている。

「既に『海』から連絡が入って、もう彼らもギリギリみたいなんですって!まだ耐えていますが、もう少ししたら村にもたどり着きますよ!」

『海』というのは『海のラグ』の略である。村人たちはこのように場所の名を冠した所属で区別する。

「指導者は、何と言っている」

「『山』半分で王都の方へ応援を要請するよう派遣しました!もう半分はここに残って、怪物を迎え撃つと。あと『森』で村の人たちを一先ず森の中の安全な方へ導いています!僕たち『湖』の子供はこうやって皆に情報を伝えていて『湖』の大人たちは『海』を助けに行きました、でも僕たちは怪物が来たら『山』と一緒に戦います!」

マルナルは彼らの役割を瞬時に理解した。『山』はこのあたりの道に通じている為、王都へは最もスムーズに移動することができる。『森』に皆の衆を誘導するのは、木々が隠れ蓑になってくれるからであろう。これも森に通じた彼らが適役。『湖』は『海』を助けるのにはフィールドの面からちょうどよいし、『森』や『山』が出払っている以上は情報伝達を『湖』が補填的に行うのが合理的だ。

目下の問題は、その怪物とやらが一体何かということである。

「分かった。ニール、お前は引き続き皆を頼む。私は海へ行く」

「マルナルさんが行ってくれれば心強いです!お願いします!」

『湖』の活躍もあってか、人は少しずつこの場からいなくなっている。もう少し。私も早く向かわねば。

村からもう一歩のところで出られるところまできて、嫌な感じがすることに気付く。そう、その予感はこの先へと続いている。

「ピシュン」

彼の足元へ、尖った何かが飛んでくる。拾い上げて見たそれは、何かの棒のようだった。黒くて、少し太い。

目を凝らして見るより先に地響きのような音がして、続々と何かが近付いてきた。輪郭と色くらいしか判別できないが先ほど飛んできた矢のようなものの持ち主であることは疑いようもなかった。体全体が黒の長い毛におおわれていて、毛むくじゃらの身体かららんらんと光る眼玉が一つ、マルナルの方を向を覗いていた。ドドドドと走ってきながら飛ばしてくる体毛を彼は防いだり避けたりせねばならなかった。マルナルの知っている生き物の中に、このような見た目をしたものはない。10体ほどのその怪物は近づく速さを緩めることなく突進してくる。

その先に守るべき村があるということにようやく、我に返ったマルナルが気付いたころには彼らはもう目と鼻の先に迫っていた。


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