イカゴ沿岸
ニラードが聞き込みを終える辺り、そしてスニークが城下町を抜けた後とほぼ同時刻。ユハとヲサイヤはイカゴの岸辺にたどり着いていた。あまり込み入ったところまでは進撃しないようソニーワイドから指示を受けていたため、二人の行動は慎重そのものであった。元々、音声を介した交信手段は望めないペアであったが、今回の任務はその方が都合がよかった。
岸から少し進んだところに、鬱蒼と茂る林がある。この先を進むにあたって、まず越えなければならない最初の門だ。ヨサイヤはこの地に来るのが初めてで、土地勘が全くない。ユハは何回目だっただろうか。少なくとも2回は来ていると聞いている。攻略するのには決して大きい数字ではないのは二人とも変わらないが。
沿岸から10キロ程を目安に、二人は侵入を開始した。周りに注意して歩かねばならない上に、侵入者を拒むかのようにただただ悪路が続いていた。二人は獣道ともつかぬ道を見つけ、辿っていった。ヲサイヤは常に目をきょろきょろさせながら、視界に現れる景色に集中力を注いでいた。木々を比べるような作業をしつつ、時折認められる動物たちにも油断せずに行動した。かれこれ1時間は歩いたところだろうか。一瞬の出来事だが、ヲサイヤの目は黒い人影を捉えた気がした。即座にユハに報告し、再び顔を向ける。もう見つけられる範囲にはいなくなっていた。対して小さくもない影であったはずだが、それが何とも未知の存在である以上は、どのような可能性も考えられる。二人は警戒心を強めながら、その影のいた方向に進むことに決めた。
果たして、ヲサイヤが最初に人影を見つけたところ、そこには足跡のようなものが確認できた。それも2つだ。確かに人型の特徴であるのを報告する。
更に目を細めて進撃を続ける。丁度二人の直線距離を二等分し、そこに垂直線を引いた延長上に、その黒い影はまた現れた。今度は二人とも見失わないように焦点を固定し、様子を伺う。
するとその直後、その影の後ろに新たな影が生まれた。それもまた、最初の一体と同じようにこちらを見据えている。更に一体、もう一体と数を増していくその黒い影たちは、今度は二人の方へと歩みを始めてきた。10メートルほどもあったその距離は、次の瞬間にはもう5メートルほどに縮まっていた。予想よりもかなり速い移動速度に、身の危険を感じた。二人は同時に後ろへ引きながら、辺りの倒木や葉を、音の速さで影の方へと飛ばした。




