97話 父と母の婚約には、大人の事情が絡みます
私の両親は、数多の障害を乗り越えて、恋愛結婚しました。
最大の障害は、春の国における身分差ですかね。
春の国の王位継承権を持つ、塩伯爵家の孫に当たる父は、国王の遠戚に当たります。
そして、塩伯爵家は、王族である西の公爵家を凌駕するほどの権力を、持っていました。
北地方の貴族たちは権力に目がくらみ、自分の娘を父に嫁がせたくて、たまりません。
父の恋人だった母を、平民の旅一座の娘と言う理由で、遠ざけようとします。
それを憂いた父は貴族の身分を捨てて、平民になり、母と結婚しようとしました。
ですが、母には、切り札がありました。
実家の雪花旅一座は、昔は春の国の王族だったという、事実です。
この鍵を握るのが「戯曲王」と呼ばれる、ご先祖様でした。
なぜか、戯曲王の正体は、世間一般では不明とされているようです。
正体を推理した様々な説を聞かされましたが、子孫である私たちは、絶句するような内容ばかりでした。
現在の王族である、三人の王子たちは、戯曲王の真実を知っているご様子。
王太子のレオナール王子は、王家の微笑みを浮かべたまま私をご覧になりました。
「アンジェなら、戯曲王の真実をある程度語れるよな?」
「ええ、語れますけど。ここは、雪花旅一座に入団予定の弟に譲ります。
ラファエロ、戯曲王様について勉強したことを、皆さんに教えてあげなさい」
「はい、アンジェ姉さま」
レオ様に抱っこされた下の弟に、教室の視線が集まりました。
他人から見られることに慣れている弟は、平然と話し始めましたけど。
「えっと、戯曲王さまは、十代目国王さまの第三王子です。
十三才のときに、地方巡業する雪花旅一座へ、身をお寄せになられました」
「ラファ、旅一座に身を寄せた理由を、もっと詳しく説明しなさい。
その答えでは、座長のおじい様に誉めてもらえませんよ?」
「はい、アンジェ姉さま。戯曲王さまが子供の頃、東国との戦争が起こりました。
雪の国と協力したことで戦争に勝てましたが、東地方は大きな被害を受けてしまいます。
そこで、戯曲王さまは雪花旅一座に入団され、東地方を巡られようとお考えになられました。
身分を隠して、苦しんでいる民の生活を実際に目で見て、救うための具体的な計画を、国王さまに進言されたのです。
そして、苦しむ民の心をお救いになるために、数多くの歌劇を執筆しました。
王子の正体を知らない民たちは、いつしか『歌劇の王者、戯曲王』と呼ぶようになったのです」
「ラファエロ、良くお勉強しましたね。偉いですよ。
皆さん、これが戯曲王様の真実です。没落貴族ではなく、十代目国王の御落胤が正体ですね。
王子なので、王家の礼儀作法にも、政治にも精通しているんですよ」
雪の天使の微笑みを浮かべて、弟の説明をまとめると、教室内から声が失われました。
真実を知って、驚愕されているようですね。
私の弟や妹たちは、皆さんの変化が面白かったのか、雪の天使の微笑みを浮かべていました。
ラファエロの発言は、そこで止まりませんでしたけどね。
「十代目王妃さまは雪花旅一座出身だったので、戯曲王さまは母さまの跡を継ごうと考えます。
成人したのち、雪花旅一座へ婿養子に入られ、座長になられました。
僕も戯曲王さまを見習い、母さまの後を継ぐために、今年の秋から雪花旅一座に入団します。
そして、将来は戯曲王さまのように若座長の娘と結婚して、婿養子になり、旅一座を盛り上げていきます!」
「……ラファ。まだ十一才なのに、そこまで将来のこと考えているなんて……不憫すぎます」
弟の決意を聞いた、宰相の息子、ラインハルト王子は憐れみを含んだ声を出しました。
仏頂面になった王太子は、姉の私を睨みましたよ。
「おい、アンジェ! お前、弟にどんな教育をしてるんだ!? もうちょい、未来への夢を持たせろよ!」
「弟を教育したのは、母です。座長の娘で、戯曲王の直系子孫の母!
私も母の跡を継ぐために、旅一座に十才で入団して、十五才で若座長の息子に嫁入りする予定だったんですよ。
急遽、死んだ父の跡を継いで領主になった私の代わりに、弟が婿入りすることになっただけです。
レオ様だって、国王のお父君の後を継ぐために、王太子になられたではありませんか。
役職や環境は違いますが、根本的な立場は、同じですよね?」
「うっ……お前たちの考え方は、母上仕込みなのか。戯曲王と言う前例もあるから、婿養子を変に思わないんだろうな。
仕方ない。今はアンジェに丸め込まれてやる。国王の父上を引き合いに出されたら、僕も反論しづらい」
口喧嘩で、私に勝てると思わないことですね。レオ様を言い負かしました。
医者伯爵の王子、ローエングリン様に抱っこされている、私の妹オデットの声がしました。
「王子様は、戯曲王の正体をご存知でした?」
「……オデット。いい加減、『ロー』って、愛称で呼んで欲しいな。
王子様って呼ばれると、他人行儀に感じるよ。だって、ライの父君も王子様になるんだから」
「……すみません、王子様。あ、ロー……エングリン様」
「うーん、少しずつで良いから、慣れていってね。姉君たちも、よろしく。特にアンジェの呼び方が重要だからね!」
「かしこまりました、ロー様。じきに弟と妹も真似すると思いますよ」
どさくさ紛れに、ローエングリン様を愛称で呼ぶように命じられましたよ。
将来、義理の姉になる私が率先して、「ロー様」とお呼びすれば、弟や妹たちも真似をするようになるでしょう。
「質問に答えると、戯曲王の正体を知っていたよ。
『十三代目国王が戯曲王と同一人物と知っている』と言う方が正しいかな?
長男の十一代目国王は即位してすぐに亡くなり、次男の十二代目国王は子宝に恵まれなかったから。
雪花旅一座の座長だった戯曲王は、王宮に呼び戻されて、十三代目国王に即位したんだよ」
……笑顔で爆弾発言してくれましたよ、軍師の家系の王子様は。
絶対、なにか企んでいます!
「おい、ロー!」
「やだな、レオ、睨まないでよ。自分は聞かれたから、答えただけ。
それに、姉君が政治の表舞台に登場したから、古き約束は破棄されてるよね。
約束が無くなったから、姉君が雪花旅一座が元王族発言したんじゃないかな。違う?」
「くっ……!」
ロー様は、王家の微笑みを浮かべて、レオ様の睨みを受け流しています。
レオ様が黙りこんだので、次は私をご覧になりました。
「レオが言えないなら、当事者の姉君に聞くよ。
十四代目国王が即位するときに、雪花旅一座の座長と交わした約束は、もう破棄されてるよね?」
「……ええ、雪花旅一座では、無効になったと判断しています。
『雪花旅一座は、王族の戸籍放棄をもって、民を守る王族の責務から外れ、政治から遠ざかれるものとする。
そして、新しき座長になる妹は、十四代目国王との兄、妹の縁を断ち切り、王家の血筋を公言しない』
この約束は、四年前に雪の国の王家との公式会談で、私と母が北地方の貴族代表として、国王陛下のお供をした瞬間から無効になったはずです。
私や母が、政治の表舞台に立った瞬間からね」
「ほら、聞いての通りだよ。なにより、古き約束がまだ有効なら、姉君がレオの秘書官になるわけないよね。
王太子の秘書官、そして将来の王妃の秘書官なんて、政治の中枢に関わる仕事なんだから」
「……ロー、アンジェ。国民に誤解を与えるような、言い回しをするな。
アンジェの父方の祖母は塩伯爵出身だから、国王は助力を願ったのだ。
断じて、元王族の雪花旅一座の座長の血筋という理由で、政治に関わらしたわけでは無い。
北地方で唯一生き残った善良王の直系子孫だから、北地方を守るために、王家に仕えてもらったのだ」
ロー様の発言は予想外だったのか、レオ様が押されています。
軍師の家系の王子様は、大人しそうに見えるのに、牙を隠していましたか。
次々と爆弾発言を投下してきましたよ。
「母君も、姉君も『アンジェリーク』なのに?
雪花旅一座が戯曲王の直系の子孫だからこそ、『アンジェリーク』なんだと思うよ」
「……ロー様は、どうして、そうお考えになられたのですか?」
「姉君、戯曲王の花嫁は『アンジェリーク』だよね?
いとこである戯曲王と結婚した、雪花旅一座の座長の長女。後に十三代目王妃になった、女の子の名前だよ」
「……アンジェリークは、ありふれた名前ですよ?
この中にも、アンジェリークの名前を持つご令嬢が居ますから」
「歌劇『雪の恋歌』の影響で、貴族や平民の区別なく、多い名前なのは知ってるよ。
でもね、雪花旅一座が絡むと、特別な意味を持つようになるんだ。
座長の長女で、十代目王妃になった戯曲王の母親も、『アンジェリーク』だから。
歴代の王妃で『アンジェリーク』は、雪花旅一座出身の、この二人しか居ないんだよ。
そして、戯曲王の娘で、十四代目国王の妹にあたる座長も『アンジェリーク』。
祖母や母親から名前を受け継いだ、隠された王女だったんだ。
姉君の『アンジェリーク』が、特別な意味を持つって、理解してもらえたかな?」
……ロー様も、腹黒王家の一員だけありますね。笑顔で同意を求めてきましたか。
以前、私の名前について、ロー様と話したことがあるんですよ。
私や母の「アンジェリーク」は、祖先である雪の国のアンジェリーク王女の正統な子孫として、受け継いでいると。
とっくに知っている事実を、わざわざねじ曲げて、言い出すなんて。
後日、周囲から話をふられるアンジェリーク本人は、対応が面倒くさいと理解してくださいよ!
あきれた声音を出したのは、ライ様でした。
「……ロー、そこまで言うのですか?
十三代目国王は体が弱く、即位するまで、ずっと領地に引きこもっていたことになっているんですよ。
それに雪花旅一座の血筋は、ローとオデットの仮婚約が正式婚約に変わる間、ずっと隠していましたよね?
あのとき、戯曲王の血筋を持ち出してたら、あそこまで揉めずに、すぐに決まっていたと思いますよ。それを今更……」
「自分の場合は、政治にうとい王子と思われてたから、貴族の認識を覆すために、あえて回りくどい方法をとったんだよ。
善良王の直系子孫である、塩伯爵の血筋だけで十分だったし。
だけど、今では末の姫のエルが雪の国の王家と婚約したから、さすがに隠し通せないよ。
いずれ、大陸中の者が、戯曲王の真実を知ることになる。早いか遅いかの違いだけで」
エルは私の下の妹です。うちの親戚回りになる、雪の国の王子と婚約しているんですよね。
「ライ。雪花旅一座が春の王族だった過去は、ちょっと歴史を調べれば、他国でも出てくる事実だよ。
これが王女が降嫁して王族になった血筋なら、無視できたんだろうけど……王子が婿入りしてるからね。
王子が婿入りなんて、普通ではありえない。他国がそこをついてきて、エルの婚約が破談になったら、一番困るのは春の国だよ」
「なるほど、それがローの考えなのですか。確かに、他国の王家から、根掘り葉掘り聞かれそうですね。
しかも、雪花旅一座は分家王族の戸籍を放棄して、平民に戻ってるから、王家から厄介払いされた王子と思われそうです」
「実は十三代目国王になっていて、王太子のレオの祖先にもなっていると公表すれば、他国も納得できるよね♪」
『雪花旅一座の価値が上がれば、エルの姉を花嫁にする自分も、他国の覚えが良くなって、医者伯爵家の権威も上昇。
将来、雪の国の王家と親戚になるから、春の国の王族としても安泰。一石二鳥だよね!』
ロー様の心の声まで、聞こえた気がしました。
勝ち誇った笑顔の医者伯爵の王子を横目に、ジト目で視線を寄越してくる、宰相の息子。
……知りませんよ。私は悪くありません。
文句なら、突拍子も無いことをしでかしたご先祖様、戯曲王に言ってください!
ついでに、心の声が私には垂れ流しになっている、ロー様に言ってください!
「失われた王族が、オデットのひいひいおばあ様の代で、北の侯爵の息子の後妻になったのは、良かったのか悪かったのか、自分も判断に困るけどね。
結果的に娘は座長の妻になり、再び子孫たちは、二つの王家の血筋を主張できることになったんだから。
現在、エルの二つの王位継承権を主張できる根拠を、後押しすることにも繋がっているよね、レオ」
「まあな、ローの言葉は一理ある。古ければ古いほど、高貴であれば高貴であるほど、血筋の価値が高まるからな。
そして、雪の王家がアンジェやエルを花嫁に望んだのも、十三代目国王の子孫になる、雪花旅一座の座長の血筋を評価したからだろう。
アンジェたちの両親の結婚には、雪の国の王家が深く関わったことも、影響していそうだがな」
ロー様は雪花旅一座の血筋を持ちあげるため、一芝居打っているように見えます。
レオ様も、仕方なく付き合っている感じですね。
雪花旅一座の座長の価値が高まれば、座長の孫娘であるオデットやエルの価値も高まります。
オデットの婚約相手である、ロー様にすれば、願ったりかなったりの状況。
医者伯爵家は、元が伯爵階級の貴族であったため、王族としての立場も、貴族に対する影響力も弱いんですよ。
でも、オデットが嫁げば、王家の血筋としての価値が、一気に強まることになります。
軍師の家系の王子様は、物静かな外見に反して、虎視眈々と医者伯爵家の権力を上昇させる機会を狙っていたようですね。
今回は、レオ様やライ様を出し抜いて、自分の有利な方向へ、話を誘導されました。ロー様の作戦勝ちです。
ロー様の悪巧みを止められなかったライ様は、王家の微笑みを浮かべて、気持ちを静めておられました。。
そして、抱っこしていた、うちの末っ子に視線を落としてます。
「おや? エル、お昼寝中ですか? 難し過ぎて、眠くなったんですかね」
ライ様は、膝の上でウトウトしていた、うちの末っ子を揺り起こします。
ねぼすけまなこのエルは、ライ様を見上げて、自己主張しました。
「おとなのおはなち、むずあーでちゅわ。えりゅ、わかりまちぇんの」
(大人のお話し、難しいですわ。エル、分かりませんの)
昔の王族の話なんて、六才のお子様には退屈な話題だったんでしょう。
ぐする末っ子を、ライ様があやしはじめます。
「エル、いずれ、あなたは雪の王子妃になるんですよ?
今は難しい話と思っても、きちんと春の国の王家の歴史を勉強して、理解できるようになりましょう。あなたのご先祖さまのお話なのですから。
王宮に帰ったら、ライ兄上が教えてあげるから、一緒に勉強しましょうか?」
「らーおーちゃま、おちえてくれまちゅの?」
(ライ王子様が、教えてくれますの?)
「……ええ、ライ王子様が教えてあげますね」
「兄」と呼んで欲しかったのか、さりげなく主張した一人っ子王子様。
お子様が思惑に気づくはずもなく、「王子様」と呼ばれて、ライ様は少々落ち込みながら返事しました。
教室内の雰囲気が、エルに気をとられている内に、話を進めましょうか。
元は、うちの両親の婚約についてだったのですから。
「エル。お父様とお母様が、王様の子孫なのは、知っていますね?」
「あいでちゅの」(はいですの)
「王様の子孫と言うことは、生まれたときから、お父様は王子様、お母様はお姫様と考えることができます。
お父様は王子様として、お姫様のお母様と結婚しようとしていました」
「おーちゃまと、おみめちゃまのおはにゃち、ちってまちゅわ」
(王子様とお姫様のお話し、知っていますわ)
「王子様とお姫様が結婚する絵本は、いじわるする人がして、邪魔をしますよね?」
「……とーちゃ、おーちゃ、いじわるちゃれまちたの?」
(お父様とお母様、意地悪されましたの?)
「はい。お姫様になれない貴族のご令嬢が、お母様をニセモノのお姫様だと、春の国の王様に訴えたのです。
そして、自分がお姫様になりすまして、王子様のお父様と結婚しようとしました」
「ちょんにゃの、だめでちゅわ! おーちゃま、ほんもにょのおひめちゃまでちぬのよ!」
(そんなのダメですわ! お母様が、本物のお姫様ですのよ!)
「そうです、お母様は、本物のお姫様です。
貴族令嬢は、いくら自分がお姫様と言っても、王族でない以上、本物のお姫様にはなれません。
ですから、お父様とお母様を助けてくれる人が、現れたのです。
それは、雪の国の王子様やお姫様でした。
春の国の王様に、お父様が本物のお姫様と結婚できるように、お話をしてくださったのです」
「ゆきのおーちゃま、おはにゃちちたから、ほんもにょのおひめちゃまとけっこんできまちなたよのね?」
(雪の王子様がお話ししてくれたから、本物のお姫様と結婚できましたのね?)
「はい。ニセモノのお姫様になろうとした貴族を、春の王様はこらしめてくれました。
そして、いじわるだった貴族は、心を入れ換えて、王子様と本物のお姫様の結婚をお祝いします。
結婚式をあげた二人は、王子様の領地で、王子様が亡くなるまで、ずっと幸せに暮らしましたとさ」
「めでたち、めでたちでちゅわね♪」
(めでたし、めでたし、ですわね♪)
難しい内容をそぎおとして、エルにも理解できるように話せば、こんな感じになりますかね?
王子様とお姫様が無事に結婚できたと分かったのか、エルは無邪気な笑顔で、めでたしと喜んでいます。
「……両親の婚約話を、簡潔にまとめたな、アンジェ。
実際は、北地方の貴族に母上が平民と言われたことで、雪の国の王家が『血筋を侮辱された』と憤慨したんだ。
戦争寸前にまでなったから、当時の国王だった僕のおじい様は、とても苦労したんだぞ」
「知っています。うちの両親の仲人を、先代国王陛下がなさらなかったら、春の国の北地方は、地図の上から消えていたでしょうね。
雪花旅一座には、戯曲王や北の侯爵家を通じて、雪の国の王家の血が流れています。
誇り高き雪の国の王族にとって、許し固かったのでしょうね」
建前として、難解な言い回しをしておきました。
現在の雪花旅一座は、雪の国の分家王族と言う秘密情報を持っていなければ、雪の国の怒りの真の意味は理解できないでしょうから。
春の国の王族の戸籍を放棄したときに、雪花旅一座は、雪の国の王族になることを選んだのです。
国王になった兄と兄妹の縁を断ち切ろうとも、妹は影から兄を助けることを選んだのです。
「子供のラファやエルには、王家の矜持は、まだ理解できんかもしれんな……。
いいか、二人とも。心から愛し合っていた王子様とお姫様は、皆に喜ばれながら、結婚して幸せになったんだ。
この王子様とお姫様が、ラファやエルの父上と母上だと、覚えて置けばいい。
お前たちも、父上や母上のように、幸せな結婚をするんだぞ!」
そこまで言い切って、レオ様はラファの頭を、がしがしとなでました。
下の弟は、目を閉じて、手荒な撫で方にびっくりしていましたよ。
●王子たちが、雪花旅一座の血筋をヨイショする理由について。
悪の組織の女幹部(王太子の秘書官、アンジェリーク)の死亡
又は、女幹部の妹たち(オデット&エル)の婚約破談
↓
軍事国家の雪の国が怒り、全面戦争突入
↓
春の国の滅亡、及び、春の王族全員処刑確定
雪の国の王族でもある、雪花旅一座の血筋を、春の国王の味方に引き込んだ代償に、バッドエンドの破滅フラグも、立っているのです。
悪の組織のボス(将来の国王、レオナール王子)と、
参謀(将来の宰相、ラインハルト王子)と、
博士(将来の王宮医師、ローエングリン王子)は、
春の国の滅亡&王族処刑フラグを回避する手段の一つとして、婚約の破談を阻止する方向に動いています。
特に軍師の家系でもあるローエングリン王子は、婚約の当事者なので、破滅フラグをへし折るのに必死なのです。
●「雪花旅一座のアンジェリーク」に関する伏線
「26話 領地から最強の母が来ました」で、王太子と最強の母親の会話の最後の方。
「ですが、一の姫は私と同じ『アンジェリーク』です。そのことをお忘れないように、春の国の王子様。
あなたと父君が、賢明な判断を下されることを、家臣の伯爵家として期待しています」
「……心にとどめておきましょう、南の雪の天使の姫君。それでは、失礼します」
そして、「60話 猫可愛がり、し過ぎです 」の最後の方、先代国王夫妻の発言。
「安心せい。アンジェリークも、王家伝統の名前の一つじゃ。
妻に反対されたとき、過去の王家の名前を調べて説得したから、問題ないぞい」
「五百年ほどの王家の歴史のうち、五人のアンジェリーク王女を確認しました。
歴代の王妃の中にも二人のアンジェリークが居ますし、問題無いとわたくしも、判断しています。
早くひ孫のアンジェリークを、抱かせてください」
以上、二ヶ所でした。




