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33話 歌劇の話をしましょう

 王立劇場で、歌劇「銀のバラの王子」を鑑賞しています。

 今は最終幕のフィナーレを飾ったばかり。役者たちへの歓声と拍手が、そこかしこから聞こえていました。


 さて、四百年前に西国で作られた歌劇「銀のバラの王子」の内容を少しだけ語りましょう。

 最終幕を迎えた今なら、ようやくあらすじを語れます。


 この歌劇は、一幕で場面転換が無いので、ものすごく一幕が短く、二幕と最終幕が長めに作られています。

 作られた当時、一幕が無くても、二幕と最終幕をたっぷり楽しめるようにと、工夫されました。

 元々は愚王の統治時代に、国王への皮肉と揶揄を込めて作られましたからね。

 真っ向から王家を批判する一幕を公演することは少なく、民衆受けする二幕と最終幕だけと言う、変則的な公開でも楽しめるように配慮がなされているそうです。

 古い歌劇には、世相が反映されていて、面白いですよね。



※※※※※



 まずは一幕から。場面変化がないので、短いですよ。見所もすくなめです。

 背の高い侍女が、周囲を伺いながら、貴族の住む家を目指す場面から始まります。

 将軍の奥方を愛してしまった王子が女装して、王子の使者の侍女として、贈り物を持って将軍家へ訪れようとしているのでした。

 将軍は長期演習で、家を留守にしておりました。仕向けたのは、王子です。

 王子の使いを出迎えた奥方は、相手が王子と気付き、客間に通しました。

 そして人払いをして、王子の行動をとがめて諭します。寡黙な夫とは違い、情熱的な王子に心引かれているのを隠しながら。

 この場面は、物憂げな奥方の表情と、主人である将軍の長期不在を嘆く歌声。

 そして、王子に心引かれている自分に戸惑いながらも、歓喜の歌声に変わっていくのが特徴です。

 対する王子は、説教されたことに怒りながらも、人妻である奥方に愛を語る歌を歌います。王子の情熱的な心を歌う力量が求められますね。

 人妻に横恋慕した王子が、奥方の諭すことを理解できるはずありません。かんしゃくを起こしました。


 そこにヒロインの子爵令嬢が、侯爵家である将軍家に訪れます。

 新興貴族の子爵令嬢は婚約をしたばかりで、世襲貴族の侯爵に、後見人として、結婚式の仲人を頼みに来たのです。

 貴族の来訪に、顔色を代えた王子。将軍の奥方に急かされ、館の裏口から逃げ出します。

 ヒーローの王子とヒロインの子爵令嬢は、出会うことなく、幕がおりました。





 休憩を挟んで二幕です。王太子のレオナール様が感動した名場面が続きますからね。少々、あらすじも長くなりそうですよ。

 舞台は王宮の舞踏会。舞踏会が終わった後、婚約した貴族たちは、王太子から銀の装飾のついたバラを祝いに贈られる習わしがありました。

 子爵令嬢の婚約者、おバカさん伯爵は、頭を深く下げて受けとります。ろくに王子の顔を見ないのでした。

 逆に子爵令嬢は、光栄だと頭を上げて、王子のお顔を拝見します。そして、二人は、一目で恋に落ちます。

 この王子と子爵令嬢が運命の出会いを歌う場面は、我が国の歌劇でも、屈指の名場面だと、私は思っています。まさに歌劇の真骨頂ですね!

 ロマンチスト王太子のレオナール様も、熱く語ってくださいました。


 さて、あらすじに戻りましょう。

 子爵令嬢のことを、部下に命じて調べた王子は憤慨しました。

 釣り合わない二人の婚約の真実を、知ってしまったのです。

 貧乏な子爵令嬢は、女性好きな伯爵に美しさを見初められ、婚約をしておりました。

 伯爵は、子爵家の借金をチャラにする約束と、伯爵の権力で脅して、子爵当主から婚約話をもぎ取ったのです。

 子爵家が借金を返せなかったのは、伯爵から強引に貸し付けられたお金を盗まれてしまったから。

 察しのいい人は、からくりに気付きますよね。王子も気付きました。


 ヒロインに恋をしてしまった王子は、王宮から抜け出し、田舎貴族の男爵の息子に変装します。

 そして、花束を手に、子爵令嬢に会いに行きました。

 子爵家には婚約祝いを持ってきたと言って訪れます。出迎えたヒロインは、王子と気付きましたが、そ知らぬ顔で家の中に招き入れました。

 王子を男爵子息として扱い、貧乏なりにもてなします。王子の通された部屋には、王宮でもらった銀のバラが飾られていました。


 そこへ、女性好きなおバカさん伯爵が、子爵家に訪れます。田舎貴族の男爵子息と話していた子爵令嬢をけなして、強引に伯爵家に連れ帰ろうとしました。

 男爵子息に扮した王子は決闘を申し込み、おバカさん伯爵をこてんぱんにやっつけます。

 観客の声援を受けながら、幕がおりました。


 この決闘場面は、身分や年齢性別を問わず、人気が高いですね。

 正義の味方が悪党を退治するのは、古来からの王道ですから。

 そして、王子が勝利を高らかに歌うのと、心配していた子爵令嬢が駆け寄りながら歌う場面は、騎士たちに人気です。

 騎士は姫を守るのが仕事ですからね。理想の体現なのでしょう。




 休憩を挟んで、最終幕に移ります。

 子爵令嬢を守るため、王子は再び侍女に変装して、将軍家を訪れました。

 今度は、侯爵当主である将軍本人が家におり、王子を出迎えます。前回の王子の来訪を将軍に黙っていた奥方は、気が気ではありませんよ。

 将軍な王子を客間に通し、人払いをします。奥方と一緒に、王子の話を伺いました。

 王子は告げます。「愛する人を、悪党から助けたい。将軍の力を貸して欲しい」と。

 子供じみていた王子が、相手を思いやる心を身につけて、成長したことを歌う場面は、うちの母のような年配に人気ですね。

 親は子供の成長を、願いますから。

 歌の後の相談の場面は、台詞がありません。内緒話をしている設定です。

 将軍は大きく頷き、王子の力になると約束しました。奥方は、胸をなでおろします。


 暗転し、場面は町中の居酒屋に移ります。

 決闘でケガをした女性好きなおバカさん伯爵は、飲んだくれながら、店の女性店員に声をかけ、抱き寄せたりして、やりたい放題でした。

 周囲は平民ばかりです。貴族の伯爵に逆らえません。おバカさんは、おバカさんなりに計算して、お酒を楽しんでいたようです。

 おバカさん伯爵役の役者は、最初は腹立たしそうに、男爵子息の悪口を歌います。

 途中で、お酒を飲む演技を挟み、陽気な台詞になっていきます。

 店員役の女性を抱き締めながら、楽しげに歌うのです。


 そこへ、新人の女性店員が、おバカさんの注文したお酒を運んで来ました。もちろん、女装した王子です。おバカさんの様子を見にきたのでした。

 酔っぱらったおバカさんは、自分をこてんぱんにした、田舎貴族の男爵子息と気付きません。

 女性店員に声をかけ、相手が嫌がってるのも構わずに、王子を抱き締めようとします。

 ですが、相手は男性の王子ですからね。護身術を会得しているわけですよ。

 おバカさんは腕をつかまれ、壁に激突させられました。おバカさんは痛さに負けて逃げ出します。

 翌朝、おバカさんは店に仕返ししようと、こっそりでかけます。

 ところが、お店には、王宮の兵がいました。兵士の代表として、あの将軍が対応します。

 昨夜、王子がお忍びで居酒屋に訪れたところ、狼藉者が現れて暴れたので、町の警備を強化することにしたと説明しました。

 青ざめたおバカさんは、適当にごまかして、逃げました。



 場面は、伯爵の後を追い、移ろいます。伯爵が家に返ると、怪しげな使用人が出迎えました。

 この使用人は、子爵家から貸した金を盗み出した犯人です。

 おバカさん伯爵に、怪しげな使用人は小さな袋を手渡しました。

 袋の中身を確かめ、悪者の笑みを浮かべる二人。そして、場面は暗転します。


 最後は、子爵令嬢の家です。おバカさん伯爵との結婚式の当日になり、椅子に座って涙にくれておりました。

 そこに侯爵家の将軍の奥方が、訪問してきます。結婚式の仲人を頼まれたからと。

 奥方は、子爵令嬢に耳打ちをしました。子爵令嬢は目を見開きます。

 涙を拭くと立ち上がり、奥方に向かって大きく頷きました。そして、花嫁衣装をまとい、奥方と共にでかけます。

 

 将軍の奥方に導かれ、馬車からおりた先は、侯爵家が用意した結婚式の会場でした。

 花婿姿のおバカさん伯爵が出迎えます。怪しげな使用人も花婿のそばに控えておりました。

 結婚式会場の内部には、霧が立ち込めており、異様な雰囲気です。

 虚ろな目をした、伯爵の親戚や子爵令嬢の親戚が座っていました。

 使用人は小袋から粉を取り出して、香を追加で焚きました。怪しげな霧がさらに広がります。

 子爵令嬢も、将軍の奥方も、虚ろな目をしました。

 おバカさん伯爵に言われるまま、会場に入り、結婚式が進んでいきます。

 とうとう、誓いの口づけの場面になります。

 突然、扉が開きました。田舎貴族の男爵子息が花嫁泥棒に来たのです。

 口元を布で覆うと、一気に花嫁の所へ走ります。おバカさんを蹴り倒し、花嫁をお姫様だっこしました。

 おバカさん伯爵は、高らかに笑い、結婚式の客人たちに二人を捕まえるように命じます。

 虚ろな目をした客人の中には、将軍の奥方も居ます。男爵子息と花嫁は、取り囲まれ、絶対絶命を迎えました。


 あわやと言うところで、結婚式の会場に、正装した将軍が到着します。

 連れてきた兵士たちに命じて、会場に突撃。男爵子息と花嫁を助けます。

 窓をすべて開け放ち、怪しげな霧を外に追い出しました。

 おバカさん伯爵と使用人は取り押さえられ、男爵子息の前に引きずり出されます。

 奥方を抱き抱えた将軍が結婚式会場から出て来て、男爵子息に家臣の礼を取りました。

 そして、使用人の使った小袋を男爵子息に、差し出します。

 男爵子息の変装をといた王子は、おバカさんの悪事を暴き出しました。

 ろくに働かない伯爵が、お金持ちの理由。この怪しげな霧を作る小袋を使って、人々を騙して、お金を奪っていたのです。


 伯爵と使用人はそのまま、王宮へ連行されていきました。

 王子は結婚式会場に飾られていた花瓶から、銀の装飾のついたバラを選びます。そして、子爵令嬢に渡しました。

 今度は自分たちの婚約を祝う番だと。


 兵士や貴族たちが喜ぶ中、舞台の前側に将軍と奥方が出てきます。

 奥方は情熱的な王子から求愛される、子爵令嬢が羨ましいと嘆きます。

 自分の主人は寡黙で、愛の言葉を囁いてくれないと、切なげに歌うのです。

 咳払いをして、寡黙な将軍は、奥方の手を取り、結婚式会場に連れていきます。

 そして、王子と同じように、銀の装飾のついたバラを花瓶から取り出しました。

 ようやく将軍が歌う場面です。このバラにつけられた銀の装飾は、自分たちの婚約の時に、王家から送られたバラについていたものだと奥方に語ります。

 バラを奥方に差し出し、自分の心は、婚約当時から変わらないと。

 バラを受け取った奥方は、たくましい将軍の胸に飛び込みます。

 王子に視線を送り、抱いた恋心は本当だけれども、真実の愛に勝るものはないと奥方は歌います。

 将軍夫婦は手を取り合い、楽しそうに舞台脇に引っ込みます。


 そして、主役の王子と子爵令嬢が前面に移動し、二人でバラを受け渡しながら、愛を語り合う曲を歌います。

 一本のバラを二人で持ち、観客席を向いて歌い終わったら、幕がおりました。


※※※※※


 歌劇を見終わったレオナール様は、左隣にいた私に、熱く語ってくれます。

 

「将軍夫婦は、影の主役だったんだな! 将軍のように一幕に登場していない人物が、重要な役回りなんて、珍しいぞ」

「一幕は王家を批判する内容ですからね。民衆受けする二幕と最終幕だけでも楽しめるように、配慮されて、歌劇が作られたそうです」

「ほう……当時の世相を反映されているのか。

そんなことまで知っているとは、さすが高名な旅一座の座長の孫だな」

「ふっ……母の教育方針は、手抜きをしないことですから。下の兄弟になるほど、手抜きしているように、長子の私からは見えますけどね」

「……最初の子供は、親の期待を一身に背負うからな。僕みたいに一人っ子だと、尚更だぞ」

「レオ様も、苦労されたクチですか」

「お前も、苦労したんだな」


 五人兄弟の一番上の私と、一人っ子のレオ様は、同時に苦笑いを浮かべました。思わぬ同士が身近にいたもんです。


「それよりも、歌劇だ。この物語は、恋愛ものに見せかけて、勧善懲悪ものだったんだな。

予想外の展開で、面白かったぞ。変装する王子を、うまく物語の核として取り込んでいる。

全く見たことのない趣向で面白かった。これなら、何度でも見たいぞ!」

「お気に召されましたか?」

「一幕が無くても大丈夫とか言われても、一幕で将軍の奥方の気持ちの揺れを見ていなければ、フィナーレの将軍夫婦の歌に対する気持ちが盛り上がらん。

すれ違っていたと思っていた心が、本当は最初から一つだったと、気づかせる辺り、観客の心を掴むと思う。

是非とも、恋愛歌劇が好きな僕の両親にも、すすめたい内容だ」


 ロマンチストなレオナール様は、恋愛結婚をされたご両親から生まれました。

 だから、王太子なのに、政略結婚ではなく、恋愛結婚を目指しているのでしょう。

 ご両親のような、運命の赤い糸で結ばれた花嫁を、探し求めているのです。


『しかし、最終幕のあの霧はなんだ? あんなものがあるのなら、惚れさせるのも簡単だろうに。

なあ、おい、歌劇のような霧は実在するのか?』


 変なところに気をとられたようですね。斜め前方にいた、医者伯爵の子息殿の肩を右手でたきました。

 南国の言葉で話しかけます。内緒話をしたいようですね。


『えーと、なんでそんなこと聞くわけ?』

『僕は惚れ薬が欲しい。お前だって、さっきから僕らの南国の会話を聞いてただろう』

『……本気なの? その子にするの? だって、自分の婚約者の姉君だよ?

レオが、自分の義理の兄になるなんて、信じられない!』

『うるさいな。僕の質問に、答えてくれ』


 振り返った医者伯爵の子息殿は、ちらちらと私を見ます。私の妹は、この方の婚約者ですからね。

 レオ様の正気を疑っているようですよ。


『……まあ、あると言えばあるよ。ただ、使うと相手は心を無くした人形になるけどね。

レオが欲しいなら、調合してあげるよ。姉君は、自分のことを道具だって言い切ってるから、使ってもあんまり変わらないだろうけど』


 ほう? 私の目の前で、言い切れますか。どう考えても、私に使おうとしてますよね。


『……医者伯爵の子息殿。本人の私を前にして、よくまあ堂々と言えますね』

『おあいこだよ、姉君。王家の道具なのは、自分も同じ。

王家の分家だからね。王太子の決定には逆らえないよ』

『嘘ですね。あなたは、レオ様をからかっているだけです。

これでも、人を見る目はあるつもりですから』

『あはは! 姉君らしいね。自分は年上だから、レオをからかっただけ。

気に入らない命令は、拒否できるよ。王家の分家だからね。

でも、姉君はできない。貴族だから、家臣だから。かわいそうだね』

『……あなたのような方が伴侶だったら、私も幸せを感じたかもしれませんね。妹を宜しくお願いします』

『はいはい、宜しく頼まれました』


 憐れみの視線を受けながら、医者伯爵の子息殿に頭を下げました。

 レオナール様は、気分を害されたのか、怒鳴ります。


『アンジェは僕の嫁だぞ! あいつの嫁じゃない! 僕だけを見てくれ!』

『……あなたのことは、毎日見ているから知っていますよ。ご命令通り嫁ぎますので、ご安心ください』

『なんで、そんな言い方をするんだ! お前は僕のことをわかってくれない』

『レオ様だって、私のことをわかってくれないですよ。レオ様はロマンチストで、私は現実主義です。

意見が平行線をたどるのは、いつものことでしょう?』

『それはそうだが……納得いかん』


 レオ様は、親友としては、良い付き合いができます。

 ですが、伴侶としての相性は最悪でしょう。

 ……私のことを、わかっていただけませんから。 


『レオ、姉君を困らせないで。それから、さっきの惚れ薬の話……』

『惚れ薬はあるのか、よし!』

『えっ、本気で私に使うんですか!?』


 さすがに血の気が引きましたよ。

 今日のレオ様の勢いなら、やりかねませんね。


『あのね、惚れ薬っていうか、相手を人形みたいにする薬なら、本当にあるよ。

薬の使用分量を間違えると、そんな状態になるだけなんだけどね。

西地方の伯爵領地で原料を作ってて、王宮に納めさせてるよ。それを医者の我が家が使ってるんだ』

『ほうほう、西の伯爵領地に行けば、惚れ薬が手に入るのか♪』

『……西の伯爵?』


 何かが、引っかりました。

 おバカさんと化したレオ様を無視して、会話をしませんと。


『よし、その薬を……』

『すみません、西の伯爵って、騎士団長の領地ですか?』

『いや、もっと王都寄り。うちの元領地。ほら、レオの婚約者候補の……』

『レオ様! 今の聞きました?』

『ああ、聞いた。西の伯爵か。僕の婚約者候補に頼めば手に入る……えっ?』


 レオ様も気づいたようです。硬直しました。すぐに仏頂面に、なります。

 南国の言葉で、いとこのラインハルト王子を呼びました。


『おい、ライ! ちょっと来てくれ、重大なことを伝えたい!』

『え? 今、クレアと会話が盛り上がってるんですよ。後にしてください』


 レオ様に顔を向け、嫌そうに答える宰相の子息殿。律儀に南国の言葉で答えます。


『クレアなんて、どうでも良い。西国が国家転覆起こすぞ、おば上の故郷が滅ぶんだ! 分かったら、会話に加われ!』

『……西国が?』


 少し眉を動かした、ラインハルト王子。ものすごく残念そうな表情を作って、クレア候補令嬢を見ました。


「クレア、すみません。レオが呼んでいるので、また後で会話をしましょう。

どうやら、特別公演の演習を思い付いたようで、意見を求められました」

「まあ……そうですの」

「クレア嬢、私の妹と話していてください。歌劇の知識は豊富なので、先ほどの名場面を語れると思います。

やはり最後の花嫁泥棒の場面は、女性の憧れですよね♪ そう思いません?」

「あら、お姉さまもですの? 愛する人に、お姫様抱っこをしていただきたいですよね。クレアさまは、いかがですか?」

「愛する人の腕に……大変素敵ですわね♪」


 クレア嬢と話したあと、最後の台詞は、妹へ向けました。

 父譲りの眼力で、緊急事態が起きたので、妹にフォローを頼みます。

 心得た妹は婚約者の所を離れて、クレア嬢の話し相手になってくれました。


 レオナール王子とラインハルト王子、それから医者伯爵の子息殿と私は、南国の言葉で会話を始めます。

 西国で作られた歌劇は、西国で進んでいる陰謀にたどり着くヒントをくれたのでした。

歌劇「銀のバラの王子」の元ネタは、オペラ「バラの騎士」です。

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