トゥーン
三人の少女と別れた後、咲は一人家路に着いた。
周りにはちらほらとソフィア学園の制服を着た生徒たちがいた。
その内の女子の二人組が咲の目にとまった。一人は別の方向へ、もう一人は咲の向かう方向へと歩いていった。きっとトゥーンに住んでいるんだろう。
咲は前方にその少女がいる為、何となく目で追ってしまう。
そしてトゥーン域に入ると独創的というかヘンテコというか、そんな空間が広がっていた。
ある街灯はあらぬ方向にねじれていたり、ある家は全体的に歪んでいたりしていた。
しばらく歩いているとどこかで爆発音が聞こえた。一大事と思うかもしれないが、前方にいる少女も周りにいる人々も誰一人として慌てる素ぶりを見せない。むしろそれをおもしろがっているようだった。
これが世界一変な街と呼ばれる由縁、それと同時にこんな風にも呼ばれていた。「奇才の街」と。
かつてはどこにでもある普通の街だった。ある時一人の研究者がトゥーンに研究所を創設した。その研究者は変わり者で街の人々からは煙たがられていた。彼の研究は誰からも理解されなかった。しかし彼のある研究が高く評価されると、彼の元へ多くの研究者が訪れた。すると街の人々の彼への評価も上がった。その研究者たちは彼に意見を聞こうと街に住みつき、あちこちで研究を始めた。その結果が現在のトゥーンだ。
今もどこかしらで実験が行われているのだろう。逆に静かだと何かあったのではないかと近所の人が心配するということもある。
歩いていると今度は電流の音と悲鳴が聞こえたが、当然咲には何のリアクションもない。
そして咲は家に着いた。
咲の家はとにかく大きい。和洋折衷というより和と洋が混ざらないで同じ場所に無理矢理くっつけたような家だ。一部は木造建築で瓦屋根、また一部はレンガ造りというおかしな外観をしている。
この家をデザインしたのは咲だ。
やたら家を大きくしたのも、統一感のない外観にしたのも全て咲が考案した。
そしてその家に咲は一人で住んでいた。
まるで何かを避けているかのように。