表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/53

秋の部屋

「悠莉の地元、なにげに初めて来たわ」


週末に柚希が、私の地元にやってきた。

理由は一つ、金子と秋と遊ぶためだ。



「おーい、柚希ちゃん!悠莉!」

待ち合わせていた懐かしの小学校に、金子と秋がやってきた。

秋は不機嫌そうにうつ向いていた。


「ここが悠莉の通ってた小学校なんだー」


「柚希ちゃん、ちょっと来てみ」

金子が柚希に声をかけて、小学校の頃よく遊んだアスレチックに登る。


「わ、楽しい!」

柚希はきゃっきゃとはしゃいでいる。



「わ、私も行ってみようかな」

独り言みたいにそう言って、私もアスレチックに登る。


「ねぇ悠莉の格好、どう?」

突然柚希がそんなことを言う。


今日の服は、いつもお洒落な笑里に選んでもらった服だった。

いつもは履かないぐらいのミニスカートだったから、

自分に似合っているのか不安だった。


「あぁ、なんかオシャレじゃね?」

金子がそう言いながら、なぁと秋の方を向く。


「まぁ…」

秋は私の方を見ることなく、そう言っただけだった。


(うわ…なんかすっごい恥ずかしい…ーーー)


私が一人で照れていると、

「じゃあ、秋の家に行きますか!」

金子がそう言いながら、柚希と並んで先を歩いていく。



(本当に…行くんだ…ーーーー)


同じ小学校だったけど、家は近くなかったのでどこに住んでいるのか私は知らなかった。


だから緊張はしたけど、少し近づけた気がして…嬉しかった。



「お邪魔しまーす」

秋の後から金子がそう言って玄関に入っていく。


「ほら、悠莉も入ってよ」

ためらう私の背中を柚希が押す。


「お邪魔します…」

私は、ドキドキしながらそう言って、靴を脱いであがった。



「ここが秋くんの部屋?へぇー」

柚希がキョロキョロと見回しながら言う。

「寛いでね」

金子がおどけて言うと、

「お前の部屋じゃねーだろ」

と、秋がツッコんだ。


(あ、喋った――――!)

失礼だけど、私はそう思って秋のことをチラッと見た。



「おばさん今日居ねぇの?」

「うん、居ない。出掛けてる」

金子が言うと、秋が素っ気なく答える。


(あ、おうちの人、いないんだ)

それが分かって、私は少し緊張がとけた。

挨拶しなきゃいけないのかとか、色々考えていたから。



「じゃあ俺、なんか飲み物買ってくるわ」

ホッとしたのも束の間、金子がいきなり立ち上がって言う。


「あ、じゃあ私も行くわ」

柚希も合わせたかのように金子と部屋を出ていく。


「ちょっと柚希…っ」

私が助けを求めるように柚希を呼び止めると、

柚希は振り返ってニコッと微笑んで手を振って行ってしまった。



(嘘でしょーっ、ちょっとこれは…ーーー)


私は秋の部屋に、二人きりにされてしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ