落とせるか、否か
「おぉ、悠莉久しぶり!」
「うん。絢人、元気だった?」
週末のスノボに向けてのショッピング。
そこで久しぶりに長塚絢人に会った。
(……相変わらずイケメンで高身長だな。)
合コンのあとで知ったことだが、彼は私の会社の関連会社に出向していて、実は会社で共通の知り合いがやたら多かった。
彩美には説明しておいたけど、そこから私と絢人の距離は一気に縮まっていた。
「長塚くんこれ、どうかな?」
「ん?どれどれ?」
そう声をかけられて、絢人が彩美の元へ向かう。絢人はノリも軽くて話しやすいし、誰とでも距離が近い。
(勘違いする女の子、多いんだろうなー…)
彩美と楽しそうにショッピングする絢人をチラッと見て、勝手にそんな事を考えていた。
ーーーー外山くんと付き合うことになる少し前に出逢った絢人に、少しだけ挑戦してみようとしたことがある。
初めての合コンの帰り、帰りの方向がたまたま同じだった彼とタクシーに相乗りした時、初めて二人きりで会話をした。
『私、苗字で呼ぶの苦手だから“絢人”って呼んでもいい?』
『いいよ。じゃあ俺も、悠莉って呼ぶわ』
他の女子から一歩リードするために、皆がしていなかった名前呼び、しかも呼び捨てをしてみた。
大抵の男はここで勘違いして私の事を意識するのに、絢人はにこやかにそれをかわしたのだ。
私はその瞬間、どこか自分と同じニオイを感じた。
タイプかどうかと言われたらめちゃくちゃタイプだけど。背も高いし、イケメンだし、理想の彼氏像そのものなんだけど。
(手強いよな…。って私、彼氏いるんだった……)
どこで何してんだか、連絡も寄越さない彼氏が。
まぁ、あの人は別に私のことなんてなんとも思ってないし?
私が誰と何しようが、何とも思ってないし?
そんな言い訳を盾にして、私は目の前でショッピングをする絢人を見つめる。
(落とせるわけないから、逆に落としてみたくなる)
ハンター脳がついつい疼いてしまうのは、きっともう癖なんだろう。私は、ずっとこれを繰返してきたから。
(分かっては、いるんだけど…)
恋愛ごっこがしたくて。
ドキドキきゅんきゅんしてみたくて。
やっぱり楽しみたいんだよな、このスリルを。
「絢人ー、これどうかな?」
買う予定だったスノーゴーグルを試着して、絢人に見せてみる。
すると絢人が顔を近づけてまじまじと見つめてくる。
「良いんじゃね?悠莉によく似合ってる」
「本当にそう思ってるー?」
「思ってるよ」
「じゃあなんで笑ってんの?」
「笑ってないって」
「ちょっと」
私たちのやり取りを間近で見ていた彩美が、堪らずといった感じで口を挟む。
「イチャつかないでよ」
「「イチャついてないし!」」
そうツッコむ私と絢人の声が、ハモった。




