きっかけは中学3年の冬
――――話は少し遡る。
私は中学から私立の女子校に通っていた。
しかも高校もエスカレーター式でそのまま女子校に通っている。
秋と私は、同じ小学校のクラスメイトで、ケンカばかりしてる仲だった。
いつも私をからかう秋に、私は憎まれ口ばかり叩いていた。
そんな秋と、付き合うようになったきっかけは…ーーー。
「ね、小学校の時好きな人とかいたよね?」
中学3年の冬、友達とそんな話になった。
「いたねー、今どんな感じなんだろー」
「会わないよねー」
私の通う私立の女子校はこの辺りでは有名なお嬢様学校で、
あちこちの小学校から受験して受かった生徒が集まっていた。
だから皆、小学校は別々だった。
「小学校の時、最後に好きだった人に電話してみようよ」
友達がそんなことを言い出して、
「えー、今さら?」
「ムリムリ、私のこと覚えてるかも分からないのに!!」
「楽しそうじゃん!皆順番にさ、やってみようよ」
その時仲の良かった友達四人と、そんな話で盛り上がった。
今思えば、スリルとか…浮いた話が欲しかっただけだったと思う。
それで結局、期末試験が終わった日に皆で公衆電話から好きだった人の家に電話をかけて告白する、という遊びをすることになった。
“これはあくまで遊び”だと、皆で言いながらそれぞれ小学校時代の好きだった人に電話した。
友達のうち一人は「居なかった」と母親に言われたと電話を切った。
もう二人は、「覚えてない」と言われたと失恋したかのように泣いた。
そしてもう一人は「オッケー貰っちゃった!」と、まさかの付き合うことになった。
明暗が別れたところで、私の番になった。
「じゃあ最後!悠莉の番だよ!」
友達に言われて私は公衆電話からドキドキしながら電話を掛ける。
手には会話のシュミレーションを何通りも書いたメモを握って。
「はい」
男の人が出た。
「あの…秋くん居ますか?」
メモを読みながら、私はそう尋ねた。
心臓がバクバク音を立てる。
「俺ですけど…」
その人が言った。
(えっ、本人?)
頭が真っ白になった。声変わりしていたから、全く分からなかったのだ。
「あの…私…―――千代田…悠莉だけど…。」
すでに頭の中が真っ白で、メモを見る余裕がなくなっていた私は、勝手に口が喋り出す。
「…―――覚えてる?」
「うん…」
私の言葉に、すぐに秋が返事をした。
(覚えててくれた…――――)
私はそれだけで、胸が一杯になった。
私という存在を、二年が経った今でも、彼は覚えててくれた。
だけど、電話をした理由はそれを確認するためだけじゃない…ーーー。
(い、言わないと…ーーー)
「私…好きだったの。だから付き合って!?」
半ばやけくそ気味に、私は言ってしまった。
「いいよ」
そんな返事が帰ってきた。
「え?」
私は思わず聞き返す。
(なんで?良いの?)
秋とは小学校卒業以来一度も会っていない。
なのに、なんで良いんだろうか?
「じゃあ…そういうことで…ーーー」
よく分からない状況のまま、私は電話を切った。
(あれ?―――付き合うことになった?)