私なんかで
「どどどうしよう…秋にやろうって誘われた!」
同じクラスですでにエッチ体験済みの友達、彩萌ちゃんに、私はパニック状態で電話をかけた。
「ちょっと悠莉、落ち着いて…!」
(落ち着いてと言われてもっ!)
私はなぜか、緊張でガチガチに震えていた。
秋がそんなこと言うなんて、思いもしなかったから。
だって私たちは、キスすらまだしていないのに。
「好きな人なら大丈夫、悠莉の嫌がることするわけないんだから…秋くんにお任せしたらいいんだよ」
彩萌ちゃんの声は、私の気持ちを落ち着けるのに最適だった。
普段から大人びている彩萌ちゃんの言葉は、すごく重みがある。
「もし悠莉がまだ怖いとか思ってるなら、秋くんだって待ってくれるって」
(そうなのかな…ーーーそれで嫌われたり…しない?幻滅されない?)
「とりあえず…今から秋に返信する…」
「頑張って悠莉!またなんかあったら電話しな!」
「ありがとう彩萌ちゃん。また明日、学校でね!」
私はそう言って電話を切る。
(それで…どうしよう…ーーー)
秋は私が好きだから今度エッチしたいって言ってくれてるんだよね…、じゃあ私も…出来るならそれに応えたい。
(だけど―――不安なんだ…)
私は自分の身体にコンプレックスがあった。
(胸小さいとか幻滅されないかな…ーーーー?)
「私なんかで良ければ」
さんざん悩んで、送ったメールは、こんな可愛いげのない返事。
送ってから送らなきゃよかったと後悔した。
自分の部屋で一人、項垂れているとまた着信音が鳴った。
「悠莉だからしたいんじゃん」
(ああ…私はなんて幸せ者なんだろう…ーーー)
こんなに幸せで良いんだろうか?
私はその夜、携帯電話をぎゅっと握りしめて、眠りについた。