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第5章 1mと高等学校④

 翌日。高校生活二日目。

 所属する委員会を決めたり、簡易的な部活説明会があったり。

 まだ授業は始まらない。実に平和な日だ。

「で、紅空はどこに入るんだ?」

「出来るだけ楽が出来る所だな」

「夢が無い奴だなー、お前は」

「工口みたいに夢がありすぎるのもどうかと思うんだがな」

 そして、今は自分が所属する委員会を決める時間になっている。

 決め方として、まず、一人に一枚配られた紙に自分の名前と入りたい委員会の名前を書いて担任に提出(提出しなかった場合は『何処でも良い』と言った事と同じになる。つまり、人数が足らない余り物に入る事になる)。

 で、後は募集人数に合わせて人数を調整すれば決定。

「どこに入ると女子と仲良く出来るんだろうなー」

「知るか」

 工口の台詞を適当に流しつつ、俺は昨日の一件について頭を抱えていた。

 勿論、物理的に頭を抱えた訳では無い。

『それ、もの凄く価値のある物だから』

 蓮宮さんのあの意味有り気な忠告。

 ここが二次元だったら、あれは大きなイベントに繋がる重要な台詞なのだが。

 例えば、あの指輪が異世界から来た物品だった、とか。

 例えば、あの指輪が神話の世界に登場する物品だった、とか。

 例えば、あの指輪は大昔に能力を得てこの時代までやってきた物品だった、とか。

 例を出せばキリが無いが、ここは三次元。

 悪の組織も無ければ転入生と曲がり角で衝突もしない。

 転んだ拍子に女子の胸にダイブも出来ない。

 無人の教室のドアを開けても中で女子は着替えてないし、俺に前世の記憶なんてない。

 体の奥底に秘められた謎の力も無い。

 その理由は全て、この一言で説明が付く。

『ここは三次元だから』

 この、面白みも夢もへったくれも無い、簡素な一言で。

「ところで、『へったくれ』ってどういう意味なんだろう」

「……何言ってんだ、翔?」

 屁ったくれ、だろうか。

「……よし!」

「は?」

 俺は決心した。家に帰ったら『へったくれ』の意味を調べるぞ、と。

 我ながらどうでも良い決心だ。するだけ損な決心だ。やっぱやめよう。

「……あれ? 俺、何の事考えてたんだっけ」

「は? 大丈夫か、翔? ……委員会の事、じゃないのか?」

 たしか昨日に関係していた様な……。

「あ、そうか」

 そうだ、蓮宮さんの台詞の事だった。

「でもなー」

 ここが漫画の中で無いなら、あの台詞はただの盗難注意に過ぎない。

「って言う俺の今の一連の思考そのものが、何かの伏線だったりすると良いよなー」

「……どの委員会に入るかが何の伏線になるんだよ」

「うーん」

 謎だ。蓮宮さんの考えが分からない。アレがどう言う意味なのかが。

「やっぱ図書委員かなー」

「え?」

 あの台詞の意味が、図書委員?

 蓮宮さんって図書委員なのか?

 大体、『価値のある物』が、図書委員? そこはどうでも良いか。

 だったら俺も入らないといけないだろ。

「ん?」

 ……なんで工口が俺の考えを知っているんだ?

「あ」

「は?」

 そう言えば、さっきから、俺、ブツブツ言いまくっていた気がする。だからか。

「(蓮宮さんって)図書委員に入るのか?」

 これ以上、俺の秘密(?)を知る者を増やす訳には行かない。主語を抜かして話そう。

「は? 話聞いてたか? (俺は)図書委員になる、ってさっき言ったばかりだろ?」

 マジか。工口が珍しく役に立った。

「なら、俺も図書委員に入るか」

 蓮宮さんが図書委員なら、俺も図書委員になるべきだろう。

 その方が何かとフラグも立ちやすいだろうしな。

「なっ! か、翔。お前、俺と同じ図書委員になる、って事は(俺の事)好きなのか?」

 やっぱりバレてたか。

「ま、そんな事無いとは思「ああ。俺は(蓮宮さんを)好きだ。だから図書委員にしようかなー、って」さ」

 こいつは口を滑らせるタイプじゃないが、万が一何かあったら鈴梨から情報を買おう。

 そしてそれをネタに口封じ。完璧だ。

「……悪い。俺は広報委員にでも入る事にするよ」

 工口はそう言いながら、手元の紙に『工口尋 広報委員』と書いた。

 間違っても『えろ』と読まれない様に、わざわざ振り仮名まで振っている。

「ま、俺は工口が居なくても良いんだがな」

「は?」

「え?」

 工口は何に驚いているんだろう。さっぱり分からない。

「え、お前、……こんな事言うのもアレだが、(俺の事)好きなんだよな?」

 何故今その話題を繰り返すのだろう。ま、良いか。

「ああ。俺は(蓮宮さんの事)好きだけど、それがお前の委員会と関係が?」

 俺も紙に自分の名前を書き、残りのスペースに『図書委員』と書いた。

 そして席を立ち、その紙を教卓の上に提出。これで残った時間は自習時間だ。

「……翔。俺にはお前の考えが理解出来ない」

「え?」

 コイツ、蓮宮さんみたいな人は好みじゃないのだろうか。

「何で(蓮宮さんの魅力を)理解出来ないんだか」

「(お前が俺の事をどう思っているか)理解出来ないのがおかしいとでも?」

「ああ!」

 お前、昨日は『お近付きになりたい』とか言ってたのに、一日で意見変えるのか。

 俺にはお前を理解し難い。工口、好きな人がコロコロ変わるタイプの人間だったっけ?

「即答かよ!」

「……アンタ達は何を話してるんだか」

 斜め前から聞こえる鈴梨ボイス。

「だってコイツが(俺の事を)好きだ、って言うんだぜ?」

 何言ってやがるコイツはー!

「馬鹿かお前は! (俺が蓮宮さんの事を好きだって)言うなよ!」

 鈴梨に知られたら、何やかんやで俺が鈴梨にクレープやら何やら奢る羽目になる。

「……何となくだけど、工口が馬鹿な勘違いをしている事は分かった気がする」

「何言ってんだ鈴梨! コイツはさっき、確かに(俺の事を好きだって)言ったんだ!」

「言うな、って何回言えば良いんだ馬鹿!」

 鈴梨は俺の知っている人間の中で一番勘が良いんだよ! 

 一教えられたら三か四は知る事が出来る人間なんだ! あまりヒントをやるな!

「お前、さっき俺に熱く(俺への愛を)語っただろ?」

「確かに(蓮宮さんへの愛を)語った気もするが、俺が言いたいのはそう言う事じゃ!」

「……は? お前、俺の事をどう言う目で見てんだ?」

 ん? 何でここで工口への感情が出てくるんだ?

「心の底からどうでも良い」

 気持ち悪い奴だな。蓮宮さんの話の最中でいきなり自分の事を聞くなんて。

「もう何が何だかぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 工口は教室を出てどこかへ走り去った。生徒はおろか教師ですらスルーしている。

「……鈴梨。工口に何があったんだ?」

「馬鹿が紅空の台詞を馬鹿な方向に勘違いしただけの話よ」

「勘違い?」

 今の会話の何処に勘違いするタイミングがあったんだ?

「ま、良いか」

「そうね」

 俺と鈴梨は、工口の事を全く心配せず、残りの時間を過ごした。

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