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第12章 1mと駅前ライブ①

 あの合コンの翌日。

 俺は工口、鈴梨と共に食堂で昼飯を食っていた。

 俺達からは遠いが、食堂の中には朝菱も居た。

「ぅらああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!」

案の定、凄まじい勢いで食事にがっついていた。

「朝菱、今日も絶好調だな」

「食欲的な意味で、か?」

「あぁ」

 そして、そんな俺の所に。

「………………紅空。話がある。ちょっと来て」

 と、白天寺が来た。

 これが、始まりだった。


「話?」

 白天寺が、俺に、話、って事か?

「………………うん」

 珍しいな。

「あ、ああ。分かった」

 俺はから揚げ定食のお盆に箸を置き、食堂を後にした。

「お前らはもうそんな仲になっていたのかぁ!」

「おーい。から揚げもらっちゃうぞー」

 去り際、こんな台詞が俺の耳に届いた。

 ふざけるな。から揚げ定食、月一でしか食えないんだぞ。主に金銭的な意味で。

 って言うか、『そんな仲』って何だ。


「……で、呼んだ理由は?」

 俺達は食堂前の空間で話す事にした。春らしい陽気。日陰。素晴らしい。

「………………これ」

 白天寺は、俺に一枚のチラシを差し出してきた。

「なんだこれ?」

 そのチラシに書かれている事を簡単に言うと。

『次の日曜日に駅前の公園でバンドの大会を開くから腕に自信ある奴来い。賞品あり』

 だそうだ。

「お前、腕に自信あるの?」

 と言う俺の質問に白天寺は、こくり、と頷いた。

「………………お父さんが、やってたから」

 へぇー。衝撃の新事実。

 まぁ、『衝撃の』って煽りは要らないだろうけど。

「で、何故この相談を俺に?」

「………………他に話しやすい男子が居ない」

工口とかではダメなんだろうか。……ダメなんだろうなぁ。

「………………紅空、優しいし」

「え? ……何処が?」

 心当たりが全く無い。そんな事は生まれてから一度も言われた事が無い、ハズ。

「うーん……、あ」

 そう言えば、六年前も、俺にそんな事を言った奴が居た気がする。

「………………例えば、昨日の最後の、とか」

 あぁ。蓮宮に肉を譲ったアレね。

「別にあれ位、特別な事じゃ無いだろ」

 最後位は合コンらしく平和的にしたかっただけだし。

「………………そうなの?」

 そうだろ。

「………………あと、わた、……何でも無い」

「へ?」

 なんか言いかけたか?

 ま、なんか言い間違えたか、舌噛んだかだろう。

「ま、俺で良ければなんか手伝うけど……、何すりゃ良いんだ?」

 皆目見当がつかない。

 ……今時『皆目見当がつかない』とか言う高校生居るのか?

「………………エントリーとか、作詞とか」

 ん? 今、何か、聞き捨てならない台詞が聞こえた気がしない訳でも無い。

「………………あと、……」

「あと?」

「…………………練習に、……付き合って欲しい」

 その白い頬を微妙に赤くしながら、白天寺はそう言った。

「?」

 何で『練習に付き合って欲しい』って言うだけでそんな赤くなるんだ?

 あまり人に頼み事とかした事が無かったのだろうか。

「ま、その位なら別に良いが」

 なんか面白そうだしな。クラスメートとバンドっぽい事するとか。

「面白そうな事にはとりあえず乗っておいた方が得するしな」

 正に、青春、ってカンジがする。

 俺には上手く演奏出来る腕前は無いから、誰かの手伝いとして参加するのは良い機会かもしれない。

「………………じゃあ、お願い」

 キーンコーン、と、昼休み終了のお知らせのチャイムが鳴った。

「じゃ、帰るか」

 あーあ。俺のから揚げ定食が。アイツらの事だ。きっと食ってるだろう。

「…………………後で、メールする」

「ああ。分かった」

 俺は食堂から嫌な視線を二人分感じたので、駆け足で教室に戻った。

「鈴梨と工口、後でシメてやる。……あれ?」

 俺、いつ白天寺にメアド教えたっけ?

 覚えが無い。


 そして、今日の最後の授業が終わる五分前、俺のケータイがポケットの中で震えた。

「ん?」

 教師にバレない様に確認すると、メールが一通来ていた。

 差出人欄には『白天寺昇華』と。

 件名欄には『不可能なら再思考』と。

 メールを開くと、本文はたったの十五文字、『本日十六時三十分、駅前駐車場に』と。

「白天寺らしいメールだな」

 俺は一言『了解』とだけ打って送信した。

「よぉーし。今日の授業はここで終わりだー。宿題やって来いよー」

 チャイムが鳴り響いた。

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