第9章 1mと焼肉パーティ③
第二ラウンド、チャーシュー。注文したのは朝菱だ。
店員が持ってきたチャーシュー(一皿に十枚)が、机に置かれた。
「ま、置いちゃって良いよねー」
その内五枚が朝菱さんの箸によって網に並べられた。
「二皿目がチャーシューか。ロースとかハラミとかは?」
と工口。
「ソレは後でじゃない?」
と光野。
「「「……」」」
こんな普通の会話の中で、チラッ、と、俺・工口・光野の三人でアイコンタクト。
その瞳にこめられたメッセージは『共闘しよう』。俺達は一人では勝てないだろうし。
「ゲタ、って、どこの肉なのかしら」
「ホルモン、だっけ? それだよ♪」
さっきの光野の注文が有効に働く。肉争奪を諦めたと思わせる、一度きりの切り札。
「……それ、答えになってないわよ」
「えっ?」
ココは三人であの二人を倒す。今の内に作戦を立て、次の肉は全部俺たちが頂く!
「じゃ、ホルモン、って何? どこの肉?」
「食用の内臓、って所ね」
「ふぇえ!」
蓮宮VS朝菱VS紅空&光野&工口の開戦。白天寺がどっち所属かは知らない。
「………………はむ」
「「「「「あ」」」」」
なんて事を考えていたら、白天寺が全ての肉を食べていた。
「しまった……。アイコンタクトを観察するのに夢中で……」
「肉を見るの忘れてた……」
と、過去の自分を呪っている蓮宮と朝菱だった。
第二ラウンド、白天寺の勝利。
「何だそのダークホース」
第三ラウンド、ハラミ(大盛)。どこの肉だかさっぱりだ。
第四ラウンド、ゲタ。こちらもさっぱり分からない。
それで暴走が終わってくれれば良かったのだが、そうは行かなかった。
俺が注文したカルビ、白天寺が注文したホルモン、工口が注文したロース、光野が注文したハラミ。これら全部が二人だけで食べられた。
「あれ? 俺、なんで何も食ってないんだ……?」
と、いまさらな疑問を抱いている工口。そんな中、光野は無言で冷麺を食べている。
「……」
光野の目の前に石焼ビビンバの皿が三つ程重なっているのは気のせいかな?
「なぁ、工口」
「なんだ?」
まぁ、何を言おうとしているかはなんとなく分かるが。
「コレ、合コン……、だよな……?」
「あぁ。……多分な」
そんなの俺が知りたいぜ。工口の腹から謎のイオンが聞こえてきた。
「俺、合コンの意味知らなかったのかな……?」
と呟いたのは俺。
「俺もだ。……合コンって、男子と女子が楽しく話すパーティーの事だと思っていたよ」
「それなのに……」
「「この状況のドコが『楽しく話すパーティー』だよッ!」」
と、俺と工口が声を合わせて叫んだ。
だって、そうだろ?
六人中二人は他人の肉を横取り。
残った四人の内の一人は焼肉を食べずにビビンバとかで腹を膨らましている。
「美味しそうだなー……」
つい呟いても文句は言われまい。
因みに、朝菱と蓮宮さんは、今は自分達の肉で争奪戦を行っている。
三人は最初に注文したライスとソフトドリンクで腹を膨らま……せられる訳無いだろ。
「………………帰っても良い?」
と、白天寺が俺の服の袖を引っ張りながら言っていた。
「……もう少しの辛抱だ。多分、アイツらももうすぐ満腹だ」
「………………本当に?」
だと良いんだけどなー。
そして、さらに、四十分経過。
現在、朝菱と蓮宮の二人はお手洗いへ行っている。
「……なぁ、翔?」
と、工口が疲れきった顔で尋ねてきた。
「なんだ?」
と、俺も疲れきった顔で答える。
「今、アイツら、何皿目?」
「さぁ……?」
机には皿が五枚位重なっている。しかも、二人の食欲が衰える事は無い。
「アイツらの腹はブラックホールかよ」
正確には胃袋がブラックホールだ。
「なぁ、翔」
心の底から疲れきった様な声で工口が言ってきた。
「白天寺、光野もだ」
工口にしては真面目な顔で。
「アイツらはあと肉を二、三皿は注文するはずだ」
紅空、光野、白天寺が頷く。
「その内、一皿でも良い。俺らの胃袋に入れようじゃないか」
工口が、コイツにしてはカッコ良く言い放った。
「って言ってもさぁ、あの二人に勝つなんて無理だろ」
と、光野が俺の意見を代弁した。
「ソレが出来たらとっくにやってるしな」
出来ないから、今俺達はこんな話をしているんだ。
「NEVER GIVE UP!」
高らかに。無題に良い発音で、工口が叫んだ(店に迷惑がかからないレベルで)。
「………………うるさい」
「すいません」
静かな声で文句を言った白天寺に速攻で謝った工口だった。
「ま、要するに。工口には何か策はあるんだろ?」
何も策が無いのにそういう事を言うとは思えない。
「勿論だ」
そこで一拍置いてから。
「だが、この作戦にはお前ら三人の協力が必要だ」
全員に視線を送って、残りの言葉を吐く。
「どうする?」
数秒の沈黙が流れた。店員が焦げた網を交換しに来た。
その間も四人は沈黙していた。
「アタシはやる」
最初に口を開いたのは光野だった。
「何もしなかったらどうせ何も食えないんだ。やって損は無いだろ?」
確かに。
「………………私は、紅空がやるなら、やる」
なんで俺が基準なんだろう。白天寺の思考回路は時々理解出来ない。
「………………紅空、どうする?」
真っ直ぐに見つめられると少し照れるんだが。
「俺は……」
この場合。俺はどうすれば良いのだろう。
「まぁ、やるんだがな」
面白そうな事には乗ってみるのが俺のポリシー。
主人公だったら、ここは乗るだろ?
「仲間が結束して敵を倒す、か」
燃える展開だな。うん。実に主人公っぽい。
「よしっ!じゃ、作戦を説明する!」
高らかに叫んだ工口であった。
作戦説明開始から一分経過。敵である二人が帰還した。
「お待たせしましたー」
二人が居ない間に注文しておいた肉、カルビが来た。白天寺のチョイスだ。
「へぇー、カルビ頼んだんだー♪」
「どうせ食べれないのにね」
皿の上には十枚のカルビが乗っている。
俺は仲間である三人に目配せをした。三人はそれぞれ頷いた。
俺達は声に出さずにこう言った。
『この戦い、必ず勝つ!』
と。まぁ、実際に言ったかは分からないがな。
「にしても美味しいねー。この店の肉」
二杯目のオレンジジュースを飲みながら朝菱が言った。
「……冗談じゃ無ぇ」
こちとら未だに一枚も肉を食って無ぇんだよ!
「翔、落ち着け」
網の上の肉が少しずつ焼けてゆく。
俺一人の力ではこの肉は俺の口に入らないだろう。
だが、仲間との結束があれば!
「翔。なんか途轍もなく臭い台詞を言わなかった?」
言ってない。思ったけど。
「………………私は臭い台詞、嫌いじゃない」
俺が励まされたその時、朝菱と蓮宮が箸を取った。
「今だ!」
と言う光野の声で、俺と工口も箸を取る。
そして俺は素早く、蓮宮の箸を挟んだ。
工口は、俺が蓮宮さんの箸を挟むと同時に、朝菱の箸を挟んでいる。
「「なッ?」」
二人は俺達の突然の行動に驚いている様だ。
「「「早くッ!」」」
俺、工口、光野が叫ぶ。
二人は早く箸を動かせば良いのに、驚きのあまり現状を理解していない。
その隙に白天寺が網上の肉を全て奪い取る。
「「私の肉がっ!」」
息ピッタリに叫ぶ蓮宮と朝菱。
「「「よっしゃ!」」」
そう。工口の発案した作戦は、四人居て初めて成立する。
四人の内二人が相手の動きを封じる。
残りの二人の内一人が網に肉を置き、肉の焼け具合をチェックし、合図を送る。
最後の一人は肉を網から取る。
「まさかこんな簡単に取られるなんて……」
「まさか手を組む、なんて、考えてなかった」
朝菱、蓮宮が呟いた。
食べる役は順番に交代し、可能な限り平等に食べる。
四人全員に役割があるので、食べる役の人は焼け具合にも敵にも気を払わなくて良い。
ただ、仲間の合図で動き、獲物を狩れば良い。
これが工口の立てた作戦だった。工口が思いついたにしては良い作戦だ。
二人がやっと現状を理解した頃、光野が残りの四枚を網に置いた。
「くっ!」
蓮宮は、俺が光野の様子を確認したスキに俺の箸を振りほどいた。
「やべッ!」
蓮宮さんは、再び箸を止めようとした俺の心を読んだかの様に箸を動かし、一枚の肉を取った。
「だがその肉はレアだぜ!」
被害は一枚だが、勝負を焦るあまり、半焼けの肉を引いてしまった様だな!
「ちょっ、離してよ!」
「あっ!」
やっと解放された朝菱は残りの三枚を一気に取った。
「だからその肉はまだ焼けてないんだって!」
光野が急いで止めたら朝菱も理解したらしく、取った肉は網に戻った。
が、その三枚はもう朝菱の物だ。加えて言うと、さっきの蓮宮の一枚も網の上だ。
「ちぇー」
流石に、俺達は人の取った肉を取る気は無い。
「次! ハラミだ!」
いつの間にか机に置かれていたハラミを網にセットした。
ハラミは六枚しか無い。このハラミは工口が食べる予定になっている。
朝菱の箸を押さえる係は工口から光野に、焼け具合を確認する役は白天寺に代わる。
「「「「ーッ!」」」」
俺は蓮宮さんと。
光野は朝菱と。
箸と箸で格闘していた。もう作戦はバレているしな。
向こうも大人しく箸を掴ませてはくれない。
朝菱と蓮宮さん、俺達の箸の動きを読んで箸を動かし、逃げている。
……だが、コレで良い。
「邪魔だッ!」
「幾ら蓮宮さんでも。ここは通せない!」
「退いてよ馬鹿工口ー!」
「どうすれば良い? 俺は使命と美少女の願い、どっちを優先させれば!」
「「「黙れ馬鹿工口!」」」
「ひどい!」
「美、少女……?」
「「「アンタもアンタで頬を紅くするな!」」」
向こうもツッコミは入れてくるが、意識は箸にしか向いていない。
つまり、肉から意識が逸れている。
「まだ、か……?」
そして、肉に箸が届かなければこの作戦は成立する。
「………………今」
白天寺は静かに、だがハッキリと告げる。開戦の狼煙を。
「ぃ良しッ!」
工口は一瞬で箸を肉に伸ばす。そして素早く、網から肉を奪った。
「獲ったどー!」
見事、工口は肉を六枚全て取る事が出来た。
「あ、アンタ達! 邪魔するな!」
と、蓮宮はかなりご立腹だが気にしない。逆転劇はもう始まっているのだから。
「お待たせしましたー、タン塩でー……うぇ?」
肉を置きに来た店員もこの光景に驚いていた。
「……スイマセン」
そりゃそうだ。学生六人が必死に肉を取り合っているのだから。
俺は店員さんへの謝罪を呟いた。
「ご、ごゆっくり、ど、どうぞー……」
店員は皿を置いてから逃げる様に去っていった。
「悪い事、したかなー」
そして戦いは終わらない。次なる戦い、タン塩(五枚)を賭けた戦いが始まる。
「よっし、やっとアタシが肉を食える!」
朝菱の箸を押さえる係は光野から工口に。
蓮宮の箸を抑える係は俺から白天寺に。
焼け具合を確認する役は俺に。
光野が肉を食べる番に。
「「しくじるなよ!」」
「ああ!」
俺はトングを使い、タン塩を網の上に並べた。
火が通り易い様に並べた肉から肉汁と油が滴り落ちる。
それらが火に注がれ、炎が大きく燃え上がる。
「アンタら、私の食の邪魔をするなら、覚悟はしなさいよ」
とか言う蓮宮の脅迫も。
「お願いだから邪魔しないでよー」
とか言う朝菱の願いも。
「関係無い!」
肉を全て裏返す。
炎が肉を飲み込む。肉の色が徐々に暗くなる。
「そろそろ、か……」
蓮宮と朝菱の顔色を窺い、隙を見て言い放つ。
「今だ!」
その声と共に、光野が箸を伸ばす。炎の中にある肉を得る為に。
「熱ッ!」
光野が熱で一瞬怯むが、箸を伸ばす。
炎から出てきた光野の箸には、五枚の肉が挟まれていた。
「ぃよっしゃァ!」
ガッツポーズ。光野は肉をタレで冷まして口へ運んだ。
「俺の作戦のお陰なんだから、感謝しろよ?」
「ああ。今回だけは礼言わなきゃな。サンキュ」
さて。次が最終決戦、か。
「………………肉、来た」
朝菱の箸を押さえる係は工口から光野に、蓮宮の箸を抑える係は継続して白天寺が、焼け具合を確認する役は俺から工口に。
「さて、と」
そして、肉を食べる係は。
「………………頑張れ」
「後は紅空が勝てば!」
「健闘を祈るぜ紅空野郎!」
白天寺、光野、工口が応援してくれる。
そう。肉を食べる係は。
「行ってくる!」
光野から、俺になる。
「……いい加減にして欲しいわね」
網の上には既に肉が六枚セットされている。俺の頼んだ肉はカルビ(十枚)。
「知った事じゃ無ぇ! 翔の肉は翔の物だからな!」
白天寺が注文した時に無茶苦茶美味しそうだったので、俺もカルビを注文した。
工口が肉を裏返す。肉には綺麗な網目が付いていた。
あと十数秒で食べ頃だろう。
俺は箸を構えた。
光野は朝菱の箸を封じ、白天寺は蓮宮の箸を封じている。
二人は既に疲れきっているであろう腕に力を込めている。
「俺の為に、か」
なら俺は、その期待に答えなければならない。
「今だっ!」
工口が高らかに叫んだ。これが俺達にとって最後の戦いだ。
「ーッ!」
俺は(店に迷惑がかからないレベルで)叫んでいた。言葉にはなっていない。
箸は一直線に肉へ向かう。
「……わ、わた……」
白天寺の前にあった一枚目に箸が届いた。
そのまま箸を左に動かし、二枚目を掴む。さらに箸を左へ動かし、次へ。
「私の肉、取らせない!」
と朝菱が強く叫ぶ。箸を肉に伸ばそうとするが、それは叶わない。
「あんたの敵はこの私だッ!」
と、バトル漫画っぽい台詞を言いながら光野が箸で朝菱を封じる。
「そんなの知らないよ!」
箸で箸を挟む事で、肉に箸を触れさせない。俺は三枚目を掴んだ。
「「行けッ!」」
だが、箸を前に動かし、光野の前の肉を掴もうとした所で。
「邪魔だ!」
「………………!」
蓮宮が白天寺を振り切り、箸を伸ばす。その箸は俺が狙っていた肉を含む三枚を掴む。
それによって、網の上に肉は無い。間髪入れず、工口が残った四枚を網に並べた。
「………………ごめん」
白天寺が申し訳無さそうにこちらを見てきた。
「大丈夫だ。今まで全力で箸を握っていたんだ。しょうがねぇよ」
可能な限り優しくフォローしておいた。
「………………ありがと」
「光野、白天寺、工口」
俺は三人に呼びかけた。
「後は俺一人で戦う」
言い終わって、俺は肉を一枚、口に放り込む。
噛み締めた時に口の中に広がる肉とタレ味。苦労の末に手に入れた肉。
味よりも喜びが先行してしまい、あまり味わえなかった。
「紅空! 何言ってんだよ!」
「………………なんで?」
「最後まで戦わせろよ、翔!」
三人から一斉攻撃を受けた。ひでぇ。
が、俺は理由を話す。
「お前ら、利き手を見ろよ」
工口と光野は右手、白天寺は左手を見る。そこには箸を強く握った跡があった。
「「……」」
「………………」
見ていてかなり痛々しい。
「ここまで協力してくれてありがとう」
後はお前らの分まで戦う。
「……じゃ、コレが最後の仕事、か」
工口は『最後の仕事』として四枚の肉を裏返す。
トングを肉の乗っていた皿に置き、工口はお手拭で手を拭いた。
辺りには肉の焼く音と他の客の話し声がしている。
「………………紅空」
肉の表面の油に火が付く。だが、その火はすぐに消えた。
それを合図にしたかの様に。
「「ッ!」」
俺と蓮宮は同時に箸を動かした。
「「「……」」」
「………………」
四人は俺達の様子を見ている。
……別に朝菱には『手を出すな』宣言、してないんだけどなぁ。
ま、自然に敵が減って助かるが。けど俺、二対一になる覚悟もしてたんだが。
「なんなんだ、あの連中……?」
「なんて言えば良いんだろう? ……殺気?」
「ままー、ぱぱー、あのひとたちなんでこわいかおし「シッ! 見ちゃいけません!」」
無視無視。
俺と蓮宮さんは俺の目の前にあった肉に箸を伸ばし、肉のすぐ上で箸と箸をぶつけ合った。まるで、さっきの箸封じの時の様に。
「なぁ、工口? アタシ達、変な奴らだと思われて無いか?」
「幼女に馬鹿にされているんだ。喜べ」
「黙れロリコン♪」
「朝菱? なんでいつも通りの明るい声でそんな差別的発言を?」
とにかく無視。
互いが相手の箸を掴み、動きを封じる。残った力を、箸を折る勢いで注ぐ。
だが、俺は油断していた。
蓮宮は。唐突に。
持っていた箸を落とした。
「?」
そして、同時に、蓮宮さんは右手を工口のライス皿に伸ばした。
そこには勿論、と言うべきか、工口の箸が置かれていた。
「え……?」
俺が状況を飲み込めず呆然としている間に行われた箸の交換。
「しまったッ!」
今のは俺を油断させる為、そして、効率良く箸による支配を潜り抜ける為の行動!
「貰った!」
だが、時既に遅し。俺が気付いた時には、蓮宮の箸が目の前の肉に迫っていた。
「蓮宮さんが俺の箸を! 生きてて良かった!」
無視しよう。今はそれ所じゃないし。もう目の前の肉には間に合わない。
「な、ら!」
端の三枚を取るだけだ! 三枚の肉は(俺から見て)右に一枚、左に二枚。
「う……らぁっ!」
右腕を一瞬でも早く、速く、右へ。この肉は蓮宮の位置から取りやすい。
「邪魔、な!」
なので先に取り除いておく。
「「ぅらぁ!」」
俺と蓮宮はほぼ同時に肉を掴んだ。
網の上に残った肉は二枚。俺から見て左、蓮宮から見て右。
その二枚はほぼ同じ位置にある。
距離的には俺の方が近いが、俺は今、腕を肉とは逆の方向に伸ばしている。
「翔!」
「紅空!」
「………………紅空!」
対して、蓮宮は肉と同じ方向に腕を伸ばしている。
この場合、俺と蓮宮のどちらが有利なのだろうか。
「大丈夫だ、勝つ!」
俺と蓮宮は二枚の肉に腕を伸ばした。もう、相手の箸を挟む、なんて妨害はしない。
ここからは、単純に速さの勝負。肉に賭ける意地の勝負。二人の腕は肉に走る。
「させない!」
そして。




