ココア・ドコア
「と言う分けで、あんた、売られることになったから」
何を言っているのかは、何となく理解された
いや、理解しなければいけなくなってしまった
売り買いと言うのが、良い事なのかは、全く不明であったが
しかし、相手の言葉を、そのままうのみにでもするのであれば、私は、この消費社会で貨幣経済でマルクスなんかが牛耳ってそうな
お金でしか何も換算できない
お金社会の中で、誰かに、これから、売られるらしい
こんな時代に、もしかすると、物々交換がされるかもしれないが
私は一体いくらで売れるのであろうか
自分の価値の算段を、他人に聞いても見たいものであった
「ああ、ひあついいあ」
私のろれつの分からない言語でも、相手には聞こえたらしい
よほど耳と理解力が良いのであろう
私とは大違いだ
間違っても、私は、みずしらずの人間を、売ろうなんて考えもしない
「なんだ、お嬢ちゃん」
あのおっさんのシャルウィーダンスみたいな、言い回しだなと、そんなことを考えながらも
私は最善の策を考える
私のポケットには、ナイフがズボンに隠されている
幸いにして、手は後ろ向きに結束バンドで縛られている
この程度なら握れないことはないだろう
「ああしあいくあでうえあんだ」
「ああん、なんだって」
急に頭の悪くなった女が先ほどと同じような、どすの利いた声で、私に言うが
私は、この素が、一向にぶれてわからない
女に対して
唾を飛ばすように言う
「ああしのねだんは、いぐらだってんだっあよぉお」
女は、私に目を向けて
懐から何か取り出した
「次喋ったら殺す
直ぐ殺す今すぐ殺す、お前を売る金よりも、お前が売れなくなった違約金よりも、ぴーぴーうるせぇ奴といる方が、私嫌なんで」
なんという仕事に対する熱情の低さ
この熱帯低気圧のような女に対して、私は、何も言えず
ただ、どこか別の方向を向いたときに、ポケットに仕込んだ、刃物を、取り出して、ゆっくりと、バンドを切った
振り返った女は、私を見て
銃を取り出そうとしたが
私は、その手に、ナイフを、投げつけると、何本か指が飛ぶのが見えた
しかし、そういえば、こいつ以外に、私を、ここに運ぶときに、手伝ったものは、居るのだろうか
この倉庫のような場所を、前に、私は、ぼんやりと、逃げることを考えていた
「ここあどこあ」
私の舌は、もつれたようにいまだに動きが鈍い
幸いにして未だに、足の方は倒れてはいないが




