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水鏡の夏  作者: ゆきや
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【水鏡伝承】について...

湖の誕生は、つい数十年前のことにすぎなかった。

人々の暮らす谷を水で満たし、電力を生み出すために、巨大なコンクリートの壁が築かれた。村は移転を余儀なくされ、田畑も、社も、そして小さな泉も、水の底へと沈んだ。


その泉こそが「水鏡様」と呼ばれていた。

村人たちは子どものころからこう教えられてきたという。


――水鏡はただの泉ではない。

満月の夜、泉は鏡のように澄み渡り、のぞき込んだ者の願いを映す。

ただし、願いの代償として、泉は必ず“何か”を奪う。

それが「命」であるのか、「時間」であるのか、「記憶」であるのかは誰にもわからない。


やがてダムの水に覆われ、泉は姿を消した。

けれども村の古老たちは今も言う。


「水鏡様は死んではおらん。湖の底で眠っておるのじゃ。

だから、湖が月光を受けて静まり返る夜には、あの泉の力が水面に浮かぶのだ」


現代の人々は笑って取り合わない。

ただの昔話、迷信だと。

だが蒼汰は、その夜の湖面を見つめながら、言い伝えの重さを静かに感じ取っていた。

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