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「みんなは夢はありますか。文化祭では夢をテーマに刺繍などをして教室を飾りつけして売り物をします」

よもぎでも文化祭の季節がやってきた。よもぎの文化祭は、飾りつけで有名だ。1年生は刺繍のパッチワーク。2年生は編み物で絵をかき、3年生はすごい立体な折り紙。高校からはLvが上がる。

「うーん」

みんなが布の色を選んで刺繍を始めてるとき、千代は布の色さえ決められずにいた。夢なんて考えたことなかったのだ。この学校は文系なのでみんなが司書や通訳が多い。でも半分くらいは医者や研究者の理系もいる。千代は夢がなかったら、こんないいところに入った意味がないのではと思った。千代がぼーっとしていると誰かに制服を引っ張られた。千代が振り返ると

「あっ。あの、うお、思いつかないんですか。」

華恋がお団子を左右に揺らしながら詰まりながら聞いてきた。人見知りなのだろうか。

「うん。ほんと困っちゃうよ。夢なんて考えたことない」

華恋は千代の明るい態度に安心したのか少しうれしげに言った。

「よかったら、これ見てみてください。私の両親がカウンセラーなんですけど、私が夢がないって言ったときに買って来てくれたんです。たくさんのお仕事とその詳しい内容が書いてありますよ。後ろには相性占いがありますし。」

と言いながら華恋は手のひらサイズの分厚い本を取り出した。「わくわく子供の新お仕事図鑑」少し黄みがかかっていて2017年発効と書いてある。少し前のようだ。

「学校の文化祭なんかで書いたやつがほんとにならなくちゃいけないっていうわけじゃないから、興味を持ったやつでいいですよ」

華恋は少し無理やりな感じに、千代の手に本を持たせた。

「頑張ってね」

千代はその言葉に少し引っかかった。華恋が少しためらうような感じに言ったからだ。でも、気のせいかと思いながら図鑑を開く。その時華恋の詩集が目に入った。下書きはよく見えなかったが、試験官とビーカーが書いてあるのはわかった。

(研究者?)

千代は勝手に想像を進めながら、読み始めた。投資家や税理士なども載ってたし、漫画家やイラストレーターなどよく知られたお仕事も詳しく乗っていた。中でも千代が気になったのは保育士だった。ピッタリストという場所には、歌やピアノが上手(ピアノはわからないが、フルートをやっているので音感はある)子供が好き(千里の世話は数年やっていた)ゆうことを聞いてくれなくてもめげない(佐江や桃絵で説得する力が身についた)などなどすべて当てはまっていた。気づいたうちに千代は保育士になりたいと思っていた。でも、保育士を書くのは難しい。

「興味あるの見つかりましたか?」

華恋が横からのぞき込んできた。華恋は千代が保育士のページをじっと見ているのを見て、いかにもよかったという表情で自分の席へ戻っていった。

(そうだパペット!)

千代はパペットを書こうと思いついた。保育士といえばパペットな気がする。千代や千里の言っていた幼稚園がパペットをよく使っていたからだろうか。千代は頑張ってパペットの刺繍をしてみることにした。布はピンクを選んで下書きを始めた。

休み時間。

「千代ちゃん大丈夫?最初悩んでたみたいだけど。」

澪奈が千代に聞きに来た。

「ううん。大丈夫。華恋ちゃんがお仕事図鑑を貸してくれたの。保育士がちょっと興味あるかも。澪奈ちゃんは?」

「私は、検事。へへへ、ちょっと書くの難しいんだよねぇ。あんまり有名な奴じゃないの。」

澪奈はなぜかちょっと照れていた。検察官になりたいというのが少し誇らしいのだろうか。

「検事なの⁉ちょっと澪奈ちゃんっぽくないかもいがい。あ、ごめん。すごいなって意味で。」

「うん。頑張るね」

休み時間が終わり、また刺繍の時間が始まった。

「華恋ちゃん。これありがとう。おかげで助かったよ。」

「ううん。ずっと眠ってたやつだから。本も使ってもらえてうれしいと思うよ」

本じゃなくて華恋が嬉しそうだった。千代は華恋の刺繍を見てみたがやっぱり研究者のようだった。

放課後 

「澪奈ちゃん一緒にかえろ?」

千代が澪奈に声をかけた。いつもなら当たり前のようについてきてくれる澪奈がなんだかすごく急ぐように帰っていったからだ。

「ごめん。今日洋輔と買い物行く約束してるの。急いでるから今日はごめん。」

と澪奈は走って行ってしまった。

(恋をすると人は変わるんだなあ)

千代はそんなことを思いながらふらふら帰った。

「ただいま」

「千代。文化祭の刺繍どう?進んだ?」

千代が帰った瞬間お母さんが聞いてきた。

(うるさい)

千代はなぜか耳を抑えたくなった。でも気を抑えて

「うん。私保育士になることにしたの。今のとこだけど」

「ねえね!保育士になるの?」

千里が聞いてきた。千里ももう小学2年生だ。千里は今観察眼の鋭い、テレビっ子に育った。でもテレビばっかり見てるから、目は悪くなるがとても物知りになっている。

「そうなの。華恋ちゃんの持ってた本で思いついたの」

「へぇすごいわね」

千代はそこから適当に返事をしながら、手洗いうがいをして宿題をした。

文化祭当日 千代は澪奈、桃絵、そして亜優美と一緒に回った。澪奈と二人で回るつもりだったが、なぜか桃絵が寄ってきて澪奈がひとりでいる亜優美を見つけた。亜優美をほったらかしにするのも罪悪感がすごいので、結果四人で回ることになったのだ。

「えーこれが澪奈ちゃん?これは検事?」

桃絵がわざとらしく澪奈に聞いた。

「うん。わかってくれてよかった。」

「亜優美さんは漫画家?すごい上手だね。」

「あの作品私の小学校の人のなんです。」

千代はちょっと気が遠くなりそうになった。がやがやうるさくてなんだかいやなのだ。3年生のも回った。高校生のは見れない。千代はやっぱり3年生はすごいなと思った。自分たちの発表の時間もグループでしっかりやり切った。

「はぁー楽しかった!」

千代がうーんとうなって腕を伸ばした。澪奈は今日も洋輔と遊ぶのか、早く帰ってしまった。

「野村!野村千代!」

千代が振り返るとそこには東京に行ったはずの悠里がいた。

「悠里⁉な、なんでここにいるの」


人生は千代紙!2に続く


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