受験
千代は学校ではテストの点数は平均。テスト勉強だって一回もしたことがない。チョロっと勉強してるだけ。千代はフルートを習っているので練習に時間をつやしているのだ。そのほかはボードゲームをしたりランニングをしたり千里とクイズ大会をしたり。テレビを見たり、本を読んだりはしないので5年生だけど視力はA。勉強はめんどくさくて千代は嫌いと思っていた。千代の好きな教科は音楽と図工だ。しかし、次の日受験勉強を試しに初めて見ると案外簡単なものだった。これに関しては、お父さんもお母さんもびっくりしていた。
「千代は天才肌なの?」
それに千代はこうやって勉強をしてみると楽しいと思った。
(これはいけるかもしれない)
そう思ったお母さんは、千代をいい塾に入会させることにした。千代が目指すのは県の周りで一番いい学校よもぎ女子中高一貫校だ。5年の半ばから勉強を始めては入れる場所ではない。だけど入ってみたいと思ったのは千代なのでやってみることにした。
連休最終日。この日はお父さんが最後の日なので出かけることにした。
「花畑にでも行くか」
お父さんに連れてってもらった津軽花畑にはまだ少しだけつぼみのコスモスが一面に咲いていた。
「ふまわり~あ~い」
千里は5歳児のくせに赤ちゃんみたいな声を出している。この年の子にはよくあることだ。特に兄弟のいる子は。
また別の場所には大きな池に美しい睡蓮の花が咲いている。
「これは?」
千里がお母さんの顔を見る。
「これはねスイレンっていうんだよ」
「スイレンってレンコンできるやつだっけ」
千代が小さくいう
「レンコンはハスだね」
物知りなお父さんが教えてくれた。千代はいつかレンコン狩りをしてみたいなとおもった。
―翌朝
千代が目覚まし時計で目を覚ますと、もうお父さんはいなかった。また次の旅行場所へ出かけてしまった。時計を見るとまだ6時半
(そうだ。今日は学校。今日は嫌いな社会があるからな)
と少し憂鬱な気持ちで体を起こしゆっくり着替えてリビングに降りて行った。
「千代、遅いじゃない。あと30分しかないわよ」
千代の登校班が出発するのは7時半。ゆっくり服を選んで、ゆっくり着替えていたせいか、もう7時になっている。今からするとまだ寝息を立てている千里がうらやましい。
「うん。早く食べないとね」
千代はそう返したが、昨日久しぶりに出かけたせいか疲れで体がパッとしない。千代はシリアルを一杯だけ食べると、朝のラジオ体操を5分だけやって。集合場所にかけていった。学校に着くと
「千代ちゃんおはよう!」
「うんおはよう」
話しかけてきたのは友達実夢だった。千代は無理やり笑顔を作り、挨拶を返すとみんなに挨拶をしている元気な実夢に抜かされていった
1時間目は千代の好きな音楽だった。音楽はあまりみんなに好かれていない。千代は精一杯歌うと、やっと目が覚めた。
2時間目は千代の嫌いな社会。ぼーっと授業を受けているとチャイムが鳴った。その休み時間。この休み時間はちょっとだけ長いので、みんないろんな場所に散らばっている。いつもの8分か10分の休み時間では、当番の人は黒板を消したり配るものを配らなくてはいけないし、次の時間の準備もしなくてはならない。トイレに行きたい人は行くが、少し遠いところにあるので歩いて往復すると3分。用を足していたら5分はかかる。そんなこんなで休み時間はほんの少ししかない。15分あるこの休み時間はみんな大好きな時間だ。
「ねね、千代ちゃん。千代ちゃんって受験しないんだよね?」
先ほどの実夢だった。今度は有希絵もつれている
「う~ん。ちょっと考えてるかな。」
千代はおとといのことを頭に入れながら考えた。
「じゃあどこ行くの?」
「できればよもぎに行きたいけど」
「よもぎ⁉」
千代が言い終わる前に有希絵が叫んだ。
「私も受験考えてるんだけど。さすがによもぎはないわ。そうゆうのってテスト毎回百点の澪奈とかが行くんじゃないの。」
「だからできればって言ってるでしょ。もう人の話ちゃんと聞きなさいよ」
「ふふふごめんごめん」
有希絵は感情が高ぶると人の話をちゃんと聞かないという弱点がある。
「実夢はそのまま地元にのこるんだって」
有希絵が言うと、実夢は少し嫌な顔をした。
「残るなんてそんないい方しないでよ」
確かにそれはそうである。そう思っているとチャイムが鳴った。3時間目と4時間目は国語と理科だった。隣の席の悠里と実験しながら、千代は空腹を我慢していた。悠里は頭がよくて県外のいいところに入るつもりだ。そこは付属だから、入れば大学に入れる確率が上がるという。
給食
今日の給食は千代の嫌いなレーズン入りのパンと千代の好きなABCスープとごはん。千代は給食当番ではないのでみんなと机をくっつけて、席が近い恵美子と談笑して過ごした。給食が終わると、掃除が始まり終わる。そして昼休みが始まる。昼休みとはいえ給食があるのでそこまで長くない。千代は掃除の時間にトイレに行ったばかりなので実夢と話すため席を立った。
「実夢ちゃん。あのさ」
「ごめん、千代ちゃん。千代ちゃん、受験するなら私、仲良くできないかも」
午前まで元気だった実夢はどこに行ったのか、実夢は千代を悪魔を見るような目で見た。
「でも、ゆきとは仲良くしてるじゃん。」
ゆきとは有希絵のことである。
「有希ちゃんは付属でしょ。よもぎなんてそのうえじゃん。」
実夢は座りながら、千代を上目遣いでにらむ。
「よもぎ目指したら友達止めるとか意味わかんない。それに目指す何て行ってない。できればって言ったの。ゆきと同じ間違いしてるね。」
実夢は間違いといわれたのが悔しいのか話題を変えた
「そ、そもそもそうゆう生まれつき頭のいい子って、私みたいな成績の気持ちなんてわかんないよね。ゆきちゃんは私と同じくらいの出来だけど、勉強頑張って私にも教えてくれるから仲良くしてるの。千代ちゃん、テストの点もよくないのによもぎなんてこの連休中にはじめて、よくできたからってことでしょ。天才派なのね。」
「え、なんでわかるの」
「友達“だった”だからよ。ともかく、私は天才派とは仲良くしたくない。天才派じゃなくても、澪奈ちゃんみたいな人とは。」
千代は急に実夢に嫌われたのがショックだった。
「私もそんな人とは仲良くしたくないわ」
といったが本当は嫌だった。しかし、残念ながら千代の友情物語に実夢が登場するのは、これが最後だった。その年の実夢の成績表はこれが原因なのかどうかは謎だが
△ばかりで、お母さんとお父さんにとてもおこられたそう。
日常
クリスマス前は千代もお休みとして千里と一緒にクリスマスツリーを飾った。
「ふんふ、ふーんふふーん。楽しいなーはクリスマス。」
千代が嬉しそうにクリスマスつりーに松ぼっくりをかけた。
「千里もやるのー!」
「やればいいじゃん。早いもん勝ちだよ」
千代は千里もことなんか気にせず続けた。
「どいてねぇね!」
千里が千代を押しのけた。
「はははは。千里、季節は守らないとだめだよ」
千里はハロウィン用の帽子をかぶっていた。千代がそう思うのも当たり前だろう。
「え?ごめん」
「謝るわけじゃないけどさ。まあ気を付けてね
翌年のお正月
よもぎの受験日は1月末にある。千代は塾の模擬試験を受けたところ、ちゃんと合格圏内だったので、上がらなければ大丈夫だろう。普段だったら楽しみなお正月だが、千代は不安でいっぱいだった。あと20日もすれば本番だ。
「千代、勉強机に向かっている千代へお母さんが声をかける。これ千里が作ったの。」
と、絵のおせちを持ってくる。千代は思わず笑ってしまった。
「食べ物じゃないの」
「千里には無理よ。小1だもん。頑張ってね、疲れたら降りてきていいからね」
お母さんは、いつもと同じことを言うとリビングへ行った。2週間後には本番がある。千代も本気だ。
本番
「頑張ってきてね。」
「ねぇねどこ行くの」
「受験よ」
その日はお父さんが帰ってきていたので、千代はお父さんと一緒に受験会場へ行った。
受験会場へ着くと、お父さんが道を教えてくれた。千代はその通りに行ったが、足がだんだんと震えてきた。
「う、緊張する」
とみんなに聞こえないように小さな声で言った。自分の席に座って、心を落ち着せる。試験開始のチャイムが鳴って、みんなが紙をめくる音が聞こえた。
「はぁ、おわった」
千代はずっと頑張ってきた受験が終わったことに体と心が追い付かない。後は合格発表だけだな。と思う。合格発表は2週間後だ。千代自身はよくできたなと思うので、合否が気になるみたいだ。
「ただいま」
「おかえり、ねぇね」
「どうだった」
「うん?できたよ」
「よかったね」
千代はこの二週間、ずっとそわそわした気持ちで過ごしていた。
「今日は合否発表日だね」
その日の夢のなか、誰かわからない人に行っていた。
「うん、もう君は合格しているよ」
誰かわからない人のはずなのに返事が返ってきた。どうやら男の子の声みたいだ。
「う~ん」
現実世界の千代はもうすぐ目覚めるであろう、唸り声をあげていた。そんな間に、千代は目覚めた。
「うん、君はもう合格しているよ」
その言葉がぐるぐる頭の中で回った。
「お母さん」
「おはよう千代、張り出してあるのは午前中まで見たいだから急がなくては」
お母さんはまるで人が変わったかのようにバタバタしていた。
「千里はおばあちゃんちにおいてくからね。二人で行くのよ」
「はあい」
千代はそう言いながら着替えて、髪を結んだ。今日は澪奈みたいな優等生の髪形にしてみようと思った。澪奈の髪形はハーフアップにくるりんぱをした、かわいい髪形だ。千代にはあまりにあわないが、ハーフアップだけならいいと思ったみたいだ。
「行くわよ」
千代が朝ごはんを食べていると、お母さんがあわただしい音お立てながら来た。
「はあい」
千代はご飯を口に詰め込むとそのまま丸呑みした。少し食堂が広がり痛くなったけど、別に良かった。
千代はお母さんの車に乗りながら、サイドミラーにうつる自分の顔を眺める。それからお母さんの顔を見た。少し怒っているような顔をしていた。
(お母さんも緊張してるのかな)
千代はそんなことを考えた。
よもぎ中学に着くと、大きな提示版がして会って、もう何人もの人が群がっていた。
(206。ニイゼロロク)
自分の受験番号を心の中で唱える。
「行きなさい」
お母さんが千代の背中を押した。いわれるがままに提示版に向かう。千代は192に目を生かせる。
(192、196、197、199、203、205、206)
「あった!」
千代は思わず叫ぶ。
「もしかして、千代ちゃんも?」
「え」
千代はびっくりした。澪奈だったからだ。澪奈が受かったことにびっくりしたわけではない。自分に話しかけてきたことにびっくりしたのだ。澪奈とは少し気まずい関係にある。3年生の時、澪奈が
「千代ちゃんって昔みたいな名前だよね。私そうゆうのあこがれるな」
最後の言葉は千代の頭には入らなかった。千代は自分の名前のことを少し嫌だと思っていたのだ。澪奈はそのことに気づいていなかったが避けられているのでうすうす気づいてきた。でももう3年もたったから普通かと思い、普通に接することにした千代。
「うんそうだよ。」
「ほかにはいないみたい。知り合いがいてよかったよ」
澪奈はほっとした様子で言った。これからは千代が描いた中学生ライフが始まる。とその前に
卒業式の日
千代は卒業式があまり楽しみではなかった。なんでも、泣かないといけない雰囲気になるのが大嫌いなのだ。式が終わって写真タイムの時いったん千代は両親たちとはぐれてしまいました。実夢の仕業です。
「千代ちゃんやっぱり」
「ごめんね。実夢ちゃん、私もうあとになってそんなこと言う人とは仲良くしたくない。レベルも違うし。」
実夢も千代がよもぎに行ったことは知っていた。でもショックを受けたのは今度は実夢だった。千代も後悔はしなかった全部本音だった。