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35.私の強い意志

 私はごくりと喉を鳴らしました。

 それだとラーグ大公の言っていたことに説得力が生じます。諸侯もそれを知っているので、大公に同調しているのでしょう。

 事態はかなり複雑なようです。


「それゆえに諸侯はエンバリーの火を確実に使える王族を求めている。火の試練を突破した、優れた王族をな……」

「なるほど……。ラーグ大公の口振りからすると、今の私にも火の試練は突破はできそうなものなのでしょうか?」

「火の試練は三つの段階からなる。それぞれ突破の目安となる年齢は十歳、十二歳、十五歳だ。ラーグ大公が言ったのは十歳向けのことだろう」


 それから陛下は火の試練のことについて、より詳しく教えてくれました。


 最初の十歳向けの火の試練を突破すると、まずエンバリーの火を使うことができるようになります。しかしそれだけでは全ての力を引き出せません。残りの段階を突破することによって、エンバリーの火の本来の性能を引き出せるようです。


 とはいえ十歳向けの試練を突破して使える威力はたかが知れたもので、本来の数十分の一の破壊力なのだとか。それでも諸侯には象徴的な意味があるのでしょう。

 大叔父様が言われていたのも、これですね。納得がいきました。


「試練の内容は気になるだろうが、説明することは不可能だ。火の試練は挑む者の心を読み取り、その都度変わる。各々の試練は一度突破すると、二度と受けられぬ。ゆえに余とヒルベルトはもう受ける資格がない……リリアとフェルトには同行できぬ」

「もし失敗すると……?」

「一年は再挑戦することができないが、受かるまで挑むことは可能だ」


 それを聞いて安心しかけて――首を振りました。

 もし試練に失敗すれば、ラーグ大公に付け入る隙を与えるだけです。


「そして試練を突破すれば、このような印を得る」


 陛下と王妃様が右手の甲を差し出します。

 すると魔力が形となり、手の甲に翼を広げた鳥の赤い紋章が浮かび上がってきました。


 それはどことなく、さっきまで発動させていた魔道具を思い出させます。


「……ローラ先生はもしかして?」

「そうね、彼女が鳥にまつわる魔道具をふたりに与えていたのは、このためよ」

「ラーグ大公をきっぱりとはねのけることは、出来ないのですか」


 今まで静かにしていたフェルトです。

 そこにははっきりとラーグ大公への怒りが含まれていました。


「見ての通り、諸侯はラーグ大公を支持している。闇雲にはねのけては、禍根を残そう。あまり良い手とは思えぬ」

「……それじゃ、リリアがかわいそうです。せっかくのパーティーなのに」

「フェルト……」


 彼の言葉に胸がじーんとなります。

 本当に彼は私の味方でいてくれて。同時に甘えてばかりもいられない、と私は思いました。


 ラーグ大公には怒りを覚えますが、彼の言葉にも一理あります。

 王族になるからには、責任は果たさないといけません。

 

 それが火の試練なら受けて立つまで。

 私の魂が燃え上がっていきます。困難は自分の手で乗り越えこそ、です。

 あの最初のハーマから逃れたのも、意志があったからです。


 相手がラーグ大公であっても、それは変わりません。

 彼の介入を拒否し、自分の生活は守らないと……。

 

 そこで私はひとつのことに思い至りました。

 

「火の試練はどれくらい時間がかかるのですか?」

「うむ……? 最初の試練はそうだな……」

「あなた、1時間程度だったと思います」

「ああ、それぐらいだ。長くはない」


 今、時刻は午後三時。

 このお披露目パーティーは深夜まで続く予定です。

 つまり、それまで諸侯は大広間に残っているということ。


 私の大人の部分がフル稼働します。


 どうすれば諸侯は納得して、ラーグ大公の鼻を明かすことができるのか。

 多分ラーグ大公の言う通りにすれば、ノルザも乗り出してくるでしょう。

 私の立場を変えようと企んでくるはずです。


 ……やはり、生半可なことでは駄目です。

 ガツンとやらないと。


「リリア、また何か考えているでしょ?」

「……うん。よくわかったね」

「だって剣の稽古の時と同じ顔してるよ」


 フェルトに嘘はつけません。そうです、私は考えていました。

 ずっとは無理でも、しばらく彼を黙らせるにはどうすればいいのか。

 

 王妃様がはっと息を呑みます。


「まさか、リリアちゃん――」


 私は家族全員を見渡しました。

 やっと手に入れた家族に、邪魔はさせません。

 

 私はやると決めたらやるのです。

 ぐっとドレスを掴み、私は宣言しました。


「フェルトと一緒に、今から火の試練を受けさせてください!」

これは余談なのですが、エンバリーの火は抑止力ゆえにある程度の情報は他国にも知られています。


全てを知ってるのは直系の王家だけですが、大公家も王家が全滅したときのために、諸侯よりは詳しい情報を持っています。


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[一言]  りりあちゃーんッ!?(笑) この幼女、男前過ぎる(笑)
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