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【書籍化・コミカライズ】断罪される公爵令嬢、生まれ変わってラスボスの王妃様の子どもになります  作者: りょうと かえ
王宮暮らしが始まるみたいです

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11.食べることは幸せです

 ぐるんぐるん回る台は放射線を使わないバリウム検査でした。

 付与魔法を込めたゼリーを食べ、それで内臓の調子を見るのだとか。

 まぁ、内臓を検査するのは大切だよね……。


 残りの検査を終えると、夜も近くなった。

 

 とりあえずは心配ないらしく、用意された自室へ向かう。

 用意された部屋は日当たり良好でびっくりするほど広かった。

 調度品も白を基調に品よくまとめられている。


 ベッドもふかふかで、私が両手足を伸ばしても端に触れない。

 泳げる。ベッドの上で泳げちゃう……!!


「あー……快適」


 あの家とは比べるまでもない。


 そして検査が終わったので、フェルトの用意したクッキーを食べられる。

 

「…………」


 これから晩餐だけど、ちょっとだけならね?

 だってフェルトと約束したし。感想を教えるって。

 

 あとは――単純に美味しそうだった。

 お医者様もこのクッキーなら食べていいよって言ったっけ。


 まずは一口。

 小腹を満たすだけだから。

 

 ……ぽりぽり。


 うっっま……。

 なんというハイセンスなクッキー!

 しっとりとして濃厚な甘味。隠し味は蜂蜜だ。

 

 食べる手が止まらない。

 ぽりぽり。ぽりぽりぽり。

 一人でがくがく震えながら、ゆっくりと味わう。


 久し振りに食べた甘味だ。

 公爵邸では甘い物は一切食べさせてもらえなかったから。


 頬がぱんぱんな気がするが、気のせい。

 うっかり窓を見たら、私の顔がリスみたいだったけど。

 気にしたら負けです。


 ふぅ……あっという間に完食。

 幸い、まだお腹には余裕がある。

 思ったよりも空腹だったらしい。


 それよりも、完食して消えちゃったこのクッキー。

 また食べたいなぁ。

 フェルトに聞かなくちゃ。

 このクッキー、どこで手に入れてきたのかって。

 



 自室のベッドでうにょーと手足を伸ばしながら、ひと休み。

 今日はもうやることがなく、あとは晩餐だけ。

 それもしばらくは体調を見ながらの特別メニューになるはず。

 

 で、晩餐の時間になった……のだけれど。

 なぜだか陛下も王妃様もフェルトも私の部屋に来た。


「えーと……? これはどういうことでしょうか?」


 私が王妃様に問うと、王妃様が至極当然というように微笑む。


「だってこうすれば、リリアちゃんに負担をかけないで済むでしょう?

 それに寂しくもないじゃない」

「うむ。家族というものは一緒に食事をするものだ」


 ……陛下まで。

 御足労させてしまった。


 ということで給仕の方々もやってきて、私の部屋で食事が始まった。


 私はベッドで半身を起こした超ラフな状態。

 かなり申し訳ない気持ちだ。


 そんな私に用意された食事は、ホロホロに崩れた肉と卵のスープ。

 スープの底には玄米が眠っていて、完全な健康食だった。 


 しかも、しかも。


「はい、あーん?」


 フェルトが笑顔でスプーンにスープをすくい、私に差し出す。

 

 むむぅ……完全に子ども扱いです。

 なんということでしょうか。


 いやいや、スープくらい自分で飲めますって。

 でも断ったらフェルトを傷つけるかも。


 むぅ……。

 ここはおとなしくしていましょう。

 私は大人ですから。


 フェルトの差し出したスプーンに口をつけ、ごくん。

 さっぱりとしながらも旨味がぎゅーっと口の中で弾ける。


 これは美味しい。

 思わず声が漏れてしまうほどに。

 

「んむっ……!!」

「美味しい? 今日のスープは自信作だって」

「……美味しいです」


 くっ、前世が一般人の私にこの完成度のスープは強烈だ。

 肉も卵も素材からして段違いである。


 たった一口で身体の全細胞が目の前のスープを求めている。

 次を。次の一口を……。


 フェルトがスプーンを差し出す。

 私のお世話が楽しくて仕方ないようだ。

 

「はい、ゆっくり食べてね」


 ……私の心を読んでいるんですか?

 あぶない。がっついてしまうところでした。


 はふはふ……。うまー。


 陛下も王妃様もフェルトもいて。

 皆で一緒の時間に食べている。

 これもなかったことだ。


「リリア、おかわりも食べる?」

「あるのですかっ。もちろん頂きます!」


 王妃様の言う通り、皆で食べるのは楽しい。

 やっぱり食事は人生の幸せだ。

 

 私はたっぷりの笑顔と身振り手振りで美味しさと嬉しさを表現する。

 皆が笑っている。

 しっかりと伝わったのだろう。


 ああ、いいなぁ……。

 この世界で最高の食事の時間だ。




 食事が終わると陛下と王妃様は夜会だということで、退出された。

 王様も忙しい。なのでフェルトだけが部屋に残っている。


 お腹も八分目で、うとうと……。

 ゆったりとした雰囲気で。


 いいタイミングだった。

 クッキーの感想とお礼を忘れちゃいけない。


「ね、あのクッキーとても美味しかったよ。

 ありがとう、フェルト」

「どういたしまして。……本当に美味しかった?」

「うん、すっごく。蜂蜜の味がして……。また食べたいなぁ」


 そこでフェルトが顔を綻ばせる。

 笑うと本当に天使様だ。


「リリアって結構、食べるほうなんだね」

「そ、そうでしょうか?」


 しかし、クッキーはあっさり完食。

 さっきもスープをおかわり。

 否定は難しいかもです。


「うん、食べてくれるほうが嬉しいよ」

「……?」


 小首を傾げる。

 食べてくれる、とはちょっと変わった言い方だった。


「あのクッキー、もう一度食べたい?」

「はい、それはもう」

「じゃあ、また作って持ってくるね」


 ワッツ!?

 あのクッキーはフェルトの自作だった!?


 そんな話、知らないんですけどっ。


 固まって驚いていると、愉快そうなフェルトが補足する。


「ふふっ、僕の趣味は料理なんだ。

 まだまだ料理人さんに手伝ってもらってるけど」


 衝撃を受けた頭で記憶を探る。

 思い返すと、原作の中でもフェルトが料理を持ってくるシーンがいくつかあった。 


 うぉ……なんという隠し設定。

 この天使様が料理を趣味にしているとは。


「父上も母上もお忙しいし、間食は駄目だから……。

 リリアが食べてくれるなら作り甲斐があるよ」

「は、うぅ……」


 フェルトのクッキー。

 抗えない。あの味を何度でも味わいたい……。


 食べたい。

 それも出来上がりとかを。

 きっと凄い。飛べる。


 ……。


 私はフェルトの手を握った。


「また作ったら持ってきてください……!」

「うん! もちろん!」


 これって餌付けされてる?

 と思ったけれど、気にしないことにする。


 だって幸せなんだから。

お読みいただき、ありがとうございます!!


日間6位になれました、本当にありがとうございます!!

これも読者の皆様のおかげです!


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[一言] 二人が結ばれますように!! 幸せになって欲しいです
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