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果てに見た  作者: 慈鳥
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噂話

 大きな2つの川に囲まれた豊かな国「ルーチェ」。外部と内部を隔てるようにそびえ立つ巨大な円形の壁に囲まれたこの国の総人口は約300万人。世界でも有数の大国である。


 日が高く昇りちょうど天頂に至る頃、国の中央にある城の「謁見の間」には多くの貴族が集まっていた。大きな扉から続く真っ赤なカーペットを挟むように立つ貴族達の視線は1人の青年に向けられている。青年はカーペットの上で片膝をつき、頭を垂れていた。

 カツン、という杖で床を突く堅い音が響く。青年に注がれていた全ての視線がレッドカーペットの先、貴族達よりも高い位置に置かれた豪華絢爛な椅子に座る王へと向けられた。


 「全くもって遺憾なことである。500年前、この尊きルーチェ国、いや世界そのものを滅ぼそうとした愚かな魔王がいた。悔しい話だが奴の率いた軍勢は非常に強力で世界は魔王の手に落ちそうになっていた」

 「しかし、我が祖先は諦めることはなかった!当時、この国に生まれた勇者の資質を持つ者を集め魔王打倒へと乗り出したのだ!そして、その中でも特筆した力を振るった勇者が遂に!魔王を打ち倒したのだ!」


 王は手を大きく広げ、天を仰ぐ。大きな声を出して息切れを起こしたのかわずかに肩が上下している。


 「魔王の死により魔族は急激に弱体化し隠れるようになった。残党を倒すため、幾度となく我々は討伐隊を派遣した。その努力によって魔族の目撃情報はこの400年間なかった。……だが、近年妙な噂が立ち始めた。魔王が復活したという噂がな」

 「復活などありえない。魔王は神々がこの地に忘れていったとされる聖遺物の1つで倒されたのだから。聖遺物の力は強大だ。使用者を選ぶと言われているが、選ばれた者には絶大な力を与えると言われる。特に、魔に連なる者への効果は凄まじい。その穢れた魂ごと燃やし尽くすのだからな。故に、復活などできるはずもないのだ」


 目を閉じる。大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。王の呼吸音だけがしばらく空間に聞こえた。


 「もしも、本当に魔王が復活していたとするならば……この世界はまた、危機を迎えることになる。だから貴殿を呼んだのだ。この国で唯一、聖遺物に認められた貴殿をな。貴殿に噂の真偽を確かめてもらいたい。よい、面を上げよ」


 カーペットにひざまずいていた青年はゆっくりと顔を上げる。その瞳は快晴の空を思い起こさせる程の色を持ち、澄んでいる。揺れる髪は胸元まで至り、新緑の色を見せている。

 青年の瞳は玉座に座る王をしっかりと見据えている。瞳に入り込む王の表情はとても穏やかである。


 「私のような卑賤の者が聖遺物に認められた時、周囲の者は皆私に対して冷たい視線や罵詈雑言を浴びせてきました。しかし、陛下だけは私のような者にもお優しいお言葉をかけてくださいました。『いずれ、選ばれた意味が明らかになる』……そう仰っていただいた時に予感はしておりました。そして今、私はこのために聖遺物に認められたのだと確信いたしました」


 青年は覚悟を決めたかのような真剣な表情で言葉を発する。

 聖遺物に認められるということはそれ相応の責任が伴う。

 魔に連なる者に対して強い効力を発揮する聖遺物を扱える者は否が応でも戦場に立つ使命にあるのだ。


 「なんと勇ましい。貴殿のような若者にこのような危険で大きな責務を伴う命を下すのはとても心苦しい。しかし、本当に魔王が復活していた場合は聖遺物の力がなければ……」


 王は悲痛な面持ちでとても苦しそうに言葉を発した。

 魔王の力は想像を絶するほど強い。各国の歴史書に様々な形で書き記される、世界の常識である。

 そんな魔王の討伐に聖遺物に認められたというだけで赴かなければならないこの青年は一切の悲観も持ち合わせてはいないような表情だ。


 「お任せください。必ずやご期待に添える働きをして参ります」

 「では、聖遺物に認められし者アルブムよ。これより貴殿に魔王復活の真偽の確認の任を与える。もし、魔王の復活が真実だったならば魔王を討伐してもらいたい。この世界のためにその力、存分に発揮するがよい」





 ルーチェ最大の市場にアルブムはいた。魔王討伐の旅に出る準備のためである。国から支給されたお金を握り旅に必要なものを買っていく。


 「食料、飲料、薬……他には何が必要になるだろうか。あまり荷が多いと歩くのに不便だしな」


 店一軒につき約40分の時間を費やす。命を懸けることになる旅だ、適当には選んでいられない。少しでも品質の良い薬を、日持ちのする食糧を選ぶようにじっくりと見ていく。

 旅に必要な物を全て買い終わったのは太陽が国の外壁の奥に隠れきった頃だった。

 重くなった荷物を持って最後にやってきたのは冒険者ギルドであった。


 「仲間が欲しい。400年間目撃情報がなかったとしても、魔王が本当に復活していたならば1人で魔王の軍勢を相手にできるはずがない。しかし、魔王の復活なんて信じるような奴はいるんだろうか。魔族事態がおとぎ話のものになってるっていうのに」


 400年も見られることのない魔族の存在などただの伝承、おとぎ話にすぎない。せいぜい子どもに言い聞かせるために使われる程度の存在だ。


 「とにかく、話をしてからだな。興味を持つような奴も1人はいるかもしれない」


 ギィ、と木の扉を開く。ギルドの中は賑わっており、酒やタバコ、料理に体臭など多くの匂いが入り交じっている。

 その匂いに一瞬顔を顰めたものの構わず受付まで進んでいく。受付に着くとそこには少年が立っていた。


 「こんばんは。冒険者ギルドにようこそ。ご依頼ですか?」


 受付の少年は爽やかな笑顔を見せる。身長はアルブムの胸あたり、だいたい140~145cmくらいだろう。定型文を噛むことなく言える辺り、仕事に慣れていそうだ。


 「初めまして、俺はアルブム。君がここの受付なのか?まだかなり若く見えるが」

 「はい、そうですよ。よく子どもに見えるって言われるんですが、これでも25歳です」

 「25歳……?本当か?どう見ても12歳辺りに見えるんだが」

 「あはは、12歳だとここで働いてませんよ」

 「まぁ、実年齢よりも若く見える人はいるしな」


 半ば無理矢理納得する。世界は広い、実年齢よりも10歳以上若く見える人間もいるのだろう。

 

 「旅の仲間を募りたくてギルドに来たんだ。命を懸ける旅になるから、腕利きの冒険者はいないだろうか?」

 「命を懸けた旅、ですか……。ちなみに、旅の目的は何ですか?」

 「魔王が復活したという真偽を確かめ、復活していたなら討伐するのが目的だ」

 「え、魔王……ですか?」


 騒がしかったギルドの中が静まり返る。大きな声で話していなかったのに内容が聞こえていたのだろうか、訝しげな視線を向けられている。突き刺さる視線に居心地の悪さを感じたのか口を開こうとした時――


 「アッハハハハ!!おい、聞いたかよお前ら。魔王討伐の旅だってよ!!おとぎ話に影響されちまったお子様がいるぜ!!」


 1人の男がアルブムを馬鹿にして笑い出すとそこら中から笑いが起こった。


 「おいおい、魔王だってぇ?」「復活の噂を信じてる馬鹿が本当にいたのかよぉ!」「魔族ですらおとぎ話なのに魔王ってよぉ」「子どもでも知ってるぜ?ただのおとぎ話だってよぉ!!」


 ギャハハ!と下品な笑い声と馬鹿にする言葉が耳につく。周りの反応を伺ってため息を吐く。受付の少年はアルブムを見てオロオロとしている。


 「この調子じゃまともに仲間を見つけることもできそうにないな」

 「あの、えっと、えっと、あのアルブムさん」

 「なら、ギルドへ正式に依頼したい。難易度は最高難易度、報酬は旅が終わってからになってしまうが前金もある。旅が終わって無事に帰って来られたなら国から褒賞がもらえることになっている。俺は褒賞に興味はないんでな、旅の費用以外は成功報酬として依頼を受けてくれた奴らで折半してもらって構わない」

 「最高難易度ですか?かなり高額になりますし、受けられる人もかなり少ないのですぐに見つかるかどうかわかりませんよ」

 「あぁ、構わないさ」


 アルブムに依頼の意思をしっかりと確認してから用紙を取り出し必要事項を書き記していく。


「では、こちらの欄にご本人様からの依頼であるという証明のために署名をお願いいたします」


 完成した依頼書に署名をしようとすると後ろから用紙を奪われる。驚いて後ろを振り向くと先ほどいの一番にアルブムを笑った男が用紙をまじまじと見ていた。


 「おい、返せよ。おとぎ話を信じるお子様の依頼書なんて見ても楽しくないだろ」


 眉間にしわを寄せる。その表情は不機嫌さを微塵も隠そうとしていない。

 男は依頼書を読み終えるとアルブムに視線を移す。その表情はニヤついている。だが、先ほどとは違い馬鹿にするというよりは美味い獲物が見つかった、とでも言いたげな表情だった。


 「これ、なかなか美味い話じゃねぇか。馬鹿みたいな噂の調査するだけで最高難易度の報酬だろ?いいね、この依頼受けるぜ」

 「は?アンタがか?」

 「アルブムさん、この人見た目とか言動はアレですけど一応腕利きの冒険者なんです。最高難易度の依頼も受けれるくらいに」

 「おい、チャッド?」

 「あっはは~、お顔が怖いですよヴォルさん」


 アルブムをいの一番に馬鹿にした男がアルブムの依頼を受ける。なんとも言えなそうな表情をするアルブムだが最高難易度の依頼を受けられる冒険者は数少ないとのことだ。この機を逃せば他が見つかるまで何ヶ月かかるか見当もつかない。それならばとアルブムはヴォルを見た。


 「受付が腕は確かだと言うんだ。まぁ、信じられるだろう」

 「ッカ~!生意気な坊やだぜこりゃ。まぁまぁ、そこは目をつぶってやるよ」

 「それでは、ヴォルさんが受注するということで良いですね」

 「あぁ、頼む。もう少し人が欲しいが……それはおいおい探すとしよう。少しでも早く噂の真偽を確かめたいしな」


 依頼書に署名をし、受注作業を終わらせアルブムとヴォルはギルドを出る。外は完全に日が沈み、月が顔を出している。旅の準備だけで半日が潰れたようだ。


 「長い旅になるぞ、準備はどのくらいかかる」

 「出発は2日後でいいぜ?基本的な準備は常にしてんだよ。足りねぇもんの買い足しの日数もそんないらねぇしな」

 「なら出発は2日後の午前7:00。集合は大門前だ」

 「りょーかい。遅れてくんなよ坊や」

 「誰が坊やだ。アンタこそ遅れるなよ」

 「はいはい。じゃ、2日後な~」


 手を振りながら帰路につくヴォルを見るアルブムは酷く不安そうな表情をしていた。

初めまして、初投稿作品です。

1話目を衝動のままに書き始めてしまうという愚かな事をしました。

ちゃんと設定練ります……。

更新スピードはカタツムリよりも遅いので失踪しないよう頑張ります。

感想やアドバイスなどいただけますと励みになります。

素人ではございますが温かい目で見守ってください。

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