午後の公園 【月夜譚No.238】
子ども達の声に笑みが零れる。天を突くような元気な声は明るくて、こちらまで楽しくなるようだ。
散歩の休憩がてら公園のベンチに腰かけた男は、走り回る小さな影に癒されていた。
こうして子ども達が遊んでいる声を五月蠅いと言う輩もいるが、それは子どもが元気いっぱいであることの証拠ではないか。仮に学校や保育園が静寂に満ちているのを想像してもらいたい。この上なく不気味であろうが。
それにそういう人間に限って、屋内でゲームでもしていれば、子どもなんだから外で遊んでこいと言うのだろう。理不尽極まりない。
しかし、この辺りの住宅街はそういった苦情がないらしい。子ども達は伸び伸びと、自由に遊べている。
ぽん、と男の足に何かが当たった。見てみると、サッカーボールが転がっている。
それを持ち上げて視線を転じると、少し離れたところに申し訳なさそうにもじもじとする少年がいた。小学校低学年くらいだろうか。
「君の?」
男が声をかけると、こくんと頷く。
周囲を見回してみるが、彼と共に遊ぶ友人も見守る親も見当たらない。一人で遊んでいるらしい。
男は先ほどとは違う種類の笑みを浮かべた。
「――君、良かったら一緒に遊ぼうか」
もうすぐ夕焼けが迫る。帰る合図の鐘の音は、少年には届かなかった。