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後編

 ☆コンラート修道院


 修道院には多くの人が集まり、ゴロツキたちが交通整理をして、子供、老人まで幅広い年齢層の者が炊き出しをもらっていた。


「ケリー、どうしたの?貴方は自立できない女性じゃなかったの?」

 保護した女の子達に声を掛けた。


「はい、サリーさんが、鬱にも効く治療魔法を開発してもらって、まだ、時間が掛かるので、日を分けて、かけて頂いています。今ではサリーさんのお手伝いが出来るまで回復しました」


 ・・・ヒィ、勝手に治して、自立できない女の子が減れば寄付金が減るわ!



「はあ、はあ、はあ、サリー!貴女、私がいない間に何があったの?保護した娘を勝手に治して!え、ヒィーーー」


 修道院の中庭に、上半身裸ではりつけにされている男娼がいた。


「ウグ、ウグ、サリー様、どうか、お情けを」


「フン、しょうがないわね。この変態!」


 ビシ!ビシ!ビシ!とホウキで叩いている。


「あれ、マーゴット様、お帰りなさい!サリー頑張っちゃいました!ウフッ」


 ・・・ウフッじゃねえよ。怖えよ。ここは下手に出るべきね。


「サ、サリー様、私がいない間に、何が起きたのかしら」


「はい、サリー頑張っちゃいました。ウフッ」

「え~と、具体的には?」


「マーゴット様に言われたとおり、聖女の知り合いに、声を掛けてマーゴット様の思想を伝えました。

 皆、素晴らしいと賛同してくれました!」


(テヘ、ほめて~ほめて~)


 ・・・褒めてと顔にでてやがる・・腹立つ!・まあ、いいわ。後でその聖女と会いますわ。


「それで、次は」


「相談役たち、怪しかったので~スキルで鑑定したら、状態異常が検知されたので~ぶっとばして吐かせました~証拠の物は、魔カエルと猥褻魔道写真を持っていたので、そのまま騎士団に引き渡しました!」


 ・・・ヒィ、スキル持ちなの?

 でも、こうなったら、あの二人は切り捨てるしかないわね。


「そうなのね。私も欺さられていたのね。アハハハハ」


「それで、帳簿を見たら、マーゴット様は、お忙しいようなので、整理しました!」

 炊き出しは、もっと、安く出来るとフランキーさんに教わって、

 今までは一食、大銅貨2枚と小銅貨6枚と帳簿に書かれていましたが~

 何と、小銅貨4枚以内で、一食収まる業者を教えて頂きました!余ったお金は救貧院や孤児院に回しました。マーゴット様ならそうすると思って」


 ・・・何、勝手に寄付金をバラ撒いているのよ!

 それに、こいつ、帳簿が読めるの?


「フランキーって、あの、裏組織の?」


 ・・・義賊を気取る炊き出しをしている裏組織じゃない。

 下手に民衆に支持されている。

 サリーの後ろについているの?

 まさか。表の交通整理をしているゴロツキどもが・・


「え~サリーわかんない。でも、慈善活動仲間で、いいおじさんだよ。聖女の公務の慈善活動の時に知り合ったの~警備で人を出してもらっているの。テヘ」


「保護した女の子は?ここにいる以外にもいるハズよね!」


「え~と、治りの早い子には、仕事を紹介しました。大勢だったので、私のサリー商会だけでは無理だったけど、知り合いの聖女にお願いしました」


 ・・・何よ。サリー商会って。


「あ、サリーちゃん。この方が、マーゴット様ね」


「ヒィ」


「私は聖王国の筆頭聖女、セイコですわ」


「ヒィ、貴方は、聖王国の聖女様・・・転生聖女!」


 ・・・一目でわかる異世界人、黒目と黒髪・・そして、高位の聖女が着る聖女服。

 聖王国の筆頭聖女様じゃない?!


「ええ、ご安心下さい。サリーちゃんの商会で引き取れない女の子たちは、我が聖王国が責任を持って引き取りました。

 読み書き計算の教育を受けた後、商会の事務員や飲食店で健全なウエイトレスをやってもらう予定ですわ」


「え~と、サリー様とどういったご関係ですか・・」


「サリーちゃんとは転生者仲間です。転生者ネットワークがありますわ。確かに、この世界は女性の権利はないに等しいですわ。

 文明の発展途上だから仕方ないのかもしれませんね。

 マーゴット様は先駆者として歴史に名が記されるでしょう」


 サリーが転生者?!聞いてないわよ。不思議な力があると言う。

 別格扱いじゃない!


 あの王太子め。とんでもない奴を渡しやがって!


「「「ワオ~~~~~ン、ワオ~~~~ン」」」


 何?この鳴声は?


 ガラガラガラ

 修道院前に、ケルベロスに引かせた戦車が止まった。

 乗っているのは身長190㎝、聖気で金髪がライオンのようにたなびいている巨躯の聖女。

 その後ろには、女騎士数十名が従っている。


 旗には、マーゴット軍と大陸共通語で書かれている。


「マーゴット殿!我は帝国皇女、華のフローラ姫である。聖なる女王、聖女王である」


 ヒィ、また、変なの来た!ケルベロスに戦車を引かせている!


「我は帝国の戦闘聖女!マーゴット殿、我も貴殿の趣旨、感銘を受けたぞ。共に戦おうぞ」


「「「私たち、女騎士も参加させて下さい!」」」


 ヒィ、今度は有名な帝国の皇女、女騎士&聖女、討伐したをケルベロス使役している。怖い!

 逃げよう。


「そうなのね。皆様、私はこれから用があるので、失礼しますわ」


「「ちょと、待って!」」

「待つのである」


「これから、オスカー商会と戦闘がありますの。大将がいてもらわないと困りますわ」

「サリー、マーゴット様のために頑張ったのだからね!マーゴット様のために晴れ舞台を用意したのだからね!」

「うむ。マーゴット殿、ケルベロス戦車に乗るが良い」


「ヒィ」

 マーゴットは無理矢理戦車に乗せられて、決戦場まで連れて行かれた。



 ☆川原


「おい、お前ら、俺らの麦樽に砂をいれるコンラート修道院と抗争だ!獲物を持ったか?」


「「「おう!」」」


 100人近いゴロツキ冒険者たちが、それぞれ槍や弓、剣を持って武装している。

 オスカーの周りには魔導師たちがいる。


「あの中のピンクブロンドは目から怪しい光線を出すぞ!対魔法バリアを張れ頼むぞ」

「ボス、わかりましたぜ!」

「後は、ファイヤーボールを打て!」


 ザワザワザワザワ


 川原にはオスカー商会の用心棒の他に、群衆が見物に訪れていた。


「ランチBOXは~~~如何ですか?」

「二つもらおう」

「毎度あり!」


「お、マーゴット様だ!ピンクのシスター服のマーゴット様がいらっしゃった!」


「「「ワアアアアアアアアアアア」」」


 ヒィ、どうしてこうなったの?

 私は美味しいご飯を食べて、上流階級の仲間になりたかっただけなのに!


「「「ワオ~~~~~ン」」」



 掛け合いが始まる。

「テメェ、ピンクブロンドのちんちくりん、捕まえた男娼を、M男に洗脳するな!

 オラオラ営業出来なくしやがって、取り立ても出来なくて困ってるぞ!あん?」


「サリー、知―らないっと、チンがあるだけ有難く思いなさいよ!」

「我は帝国皇女、華のフローラ姫である!」


「さあ、マーゴット様、開戦のお言葉を」

「うむ。マーゴット殿こそ相応しい」

「マーゴット様、サリーのお願い。『ぬっころすぞ。ゴラァ!』と言って下さい!」


「おい、あの化け物聖女たちを束ねているシスター、マーゴットを真っ先にやるぞ!」

「「「おう!」」」


「行くわよ!」

 聖王国の聖女が手を上に掲げると空に魔方陣が浮かび上がる。


「サリーちゃんと聖女王、女騎士さんたち、私が空爆で魔導師をぬっころすから、その後、突撃してね」


「マーゴット様はケルベロス戦車で、にっくきオスカーと一騎打ちをして下さい!大勢の戦友ともが道を切り開きますわ」


「わかったのだからね!魅了ビームをくらわせるのだからね!」

「うむ。我は聖女パンチを食らわすぞ!」

「「「私たちは剣でぬっころよ!」」」


「おう、俺たちも混ぜろ!俺たちはフランキー一家だ!この義戦に参加させてもらうぜ!いいか?野郎ども」


「「「「おう!」」」


(ヒィ、段々と人数が多くなってる!私は戦闘できないわ!でも何も言えない。怖いわ。もしかして、ワザとやってるのかしら)



「いいか。あのマーゴットが大将首だ。あいつをぬっころしたら、賞金、金貨100枚だ!」

「「「おう!」」」


 正に、ケンカではなく、戦闘が始まろうとした瞬間。


 ドドドドドド


 騎士団がやって来た。

 先頭にはサリーの義父と義母が乗っている馬車があり。

 その横で、一人貴公子が騎馬で指揮を執っていた。


 馬車から顔を出して、男爵と妻が叫ぶ。


「サリー!喜べ。無罪が証明されたぞ!」

「ええ、そうよ。あの王太子は廃嫡されたわ」


「義父様、お義母様と・・・誰?」


「ああ、この方は第二王子ヘンドリック殿下だ。自分の兄の不正を暴いてくれたのだ」


 ピカッ「やあ、サリー嬢、ひとまず話は後だ。素敵なご令嬢方の応援があればやる気になるのだが、私たちを応援してくれないか?」


「キャァ(ポ)」

「「「キャアアアーーー」」」


「皆の者!オスカー商会を逮捕だ!」

「「「御意!」」」


「うわー、対魔法鎧を着た精鋭だ。皆、逃げろーーー」

「「「「ギャアアアアアア」」」


 キュン「ヘンドリック王子殿下・・・(ポ)」


 ・・・ヒィ、助かったわ。何、(ポ)となっているのよ。


「うむ。サリーよ。良かったな」

「フフフフ、サリーちゃん。いい王子様じゃない?」


 キュン「もう、サリー困っちゃう」


 ・・・はあ、これからは真面目に修道院長として、困っている女子を助けよう。

 グスン、グスン。


 とマーゴットは大反省をしたが・・・



 ☆その後


 令嬢たちを欺して、高額な飲食費を請求していた悪辣な男娼グループ、オスカー商会を告発したとして、マーゴットは王宮で表彰されることになる。


 ・・・はあ、これで、あのゴロツキ聖女たちから、開放されるわ。

 次は、真面目に活動して、寄付はほどほどに集めるわ。

 身の丈にあった活動をするべきね。



「ところで、マーゴット殿、ボンビーノ王国から是非、貴殿に来てもらいたいと要望が来ている」


「へ、陛下」


「あの国はご存じの通り、最貧国だ。特に弱い立場の女性が困っている。是非、改善指導をしてもらいたいとのことだ」


「それは・・私には、この国にはコンラート修道院があります」


「それは大丈夫だ。男爵令嬢サリー嬢、いや、今は王太子の婚約者サリーの商会が責任を持って運営することになった」


「そ、そんな。私はサリー・・・様がいたから、悪徳男娼グループを摘発できたのです」


「「「また、ご謙遜を」」」


「これ、過ぎる謙遜は不敬になるぞ。ついでに、元王太子と婚約者、サリーの追放に加担した貴族の子弟の矯正もしてもらいたい」


「ヒィ」



 ☆ボンビーノ王国


 マーゴットと不良貴族子弟他5名の一行は、ボンビーノ国に、青年協力隊として参加した。


「これは、これは、高名なマーゴット様、ようこそ来て頂きました。どうぞ、お食事を」


 ・・・ヒィ、王宮の料理なのに、底の見えるスープと、固いパン・・だけ?

 それに、ここは掘っ立て小屋じゃない。

 もしかして、木の柵が城壁で、ここが王宮?


「こ、こんなの食えるか!私は元王太子だぞ」

「そうよ。私は元公爵令嬢よ。この食事は何かの間違いよ。我国の奴隷と同じ食事ですわ!」

「「「そうだ。俺たちは貴族だぞ!」」」


 ガチャ、バリ

 と皿をひっくり返した。


 ボンビーノ王は静かに激怒する。


「あ~~~俺らの1日分の食事だぞ。ゴラァ、マーゴット様~こいつらですね。馬鹿をしでかしたガキ5匹は?野郎ども出てこい!」


「「「ヘイ」」」


「隣の王様から、殺さない程度なら痛め付けていいとお墨付きをもらった」

「野郎ども、シバケ!」


「ヤ、ヤバイ、逃げるぞ!」


「ヒィ、何で私まで!」


「追え!マーゴット様を誘拐して逃げる気だ!」


 ダダダダダ


 マーゴットはボンビーノ王の迫力とその場の勢いに乗って、元王太子達と逃亡生活を送ることになる。


 ☆10年後


「ようこそおいで下さいました。隣国の王太子と王太子妃よ」


「グスン、グスン、ウウ」


「ボンビーノ王よ。すまない。妻サリーはマーゴット様を敬愛していたのだ。終焉の地で思い出したのだろう」


「グスン、グスン、だって、だって、私に道を指し示してくれた人だもの・・」


「国王として謝罪します。当方の不手際がありました」

「いいえ。こちらも、不良貴族たちを付けたのが間違いでした」


 マーゴットがボンビーノ国に行ったすぐ後に、多額の人道的無償援助が届いていた。


「グスン、いくら、マーゴット様でも無一文で立て直しはできないじゃない。

 だから、この国にサリー商会の紡績工場と、お針子学校を建てて

 聖王国から、マーゴット基金の設立と

 帝国からは、軍馬を育てるマーゴット牧場建設資金の提供と&技術指導員が来たのに・・

 その全てを統括してもらおうとしていたのに・・」


「サリー・・・」

 ヘンドリックはサリーの肩に手を掛ける。


「ええ、おかげさまで、最貧国から中流の下ぐらいまでには経済状況がよくなりました。

 皆様のおかげです。

 しかし、ほら、まだ、スラムがあります。

 マーゴット様の意思を我等が引き継ぎ。

 女性が不当な目に遭わないように・・・」


「サリー・・様、わたし、マーゴットよ」



 ボンビーノ王とサリー達が、スラムの視察中、一行に駆け寄るボロボロの服を着た女性の浮浪者が現われた。

 騎士に遮られたが、彼女は叫ぶ。


「私たちを保護して頂戴!アマンダは娼館で働いて、私は物乞い、王子ら元貴族子弟は、心的外傷で、働けなくなっているわ!」


「ふ、もう、今年で3人目の自称マーゴット様が現われたわね。マーゴット様詐欺は飽きたわ。

 いい?そんなわけないでしょう。私の敬愛するマーゴット様は、そんなみすぼらしい態度はとらないじゃない。

 それに、10年前に、この国の盗品市場でピンクのシスター服が発見されたわ!

 お亡くなりになられているじゃない!」


 マーゴットの遺体は発見されなかったので、実は生きているとの噂が流れ、ピンクのシスター服を着た偽マーゴットが王国各地に現われ、寄付金を集めようとする詐欺師が横行していた。


 本物のマーゴットは、長い路上生活の中で、苦労し、化粧品も買えず。年以上に老けて、顔が判別できなくなった。


「それは、取られたのよ。身ぐるみ剥がされたのよ!信じて、サリー、私はマーゴットよ!」


 ヅキ!


 サリーは手刀で、本物のマーゴットの喉を突いた。


「ウグ、ハッ」


「騎士よ。取り押さえろ!この不謹慎なBBAは牢獄だ!」


「ヒィ、どうして信じてくれないのよ!」


 やがて、スラムにも経済援助が届くようになるが、マーゴットはこの恩恵に浴することはなかった。

 偉人の名を騙る不届き者として、強制労働をさせられたからだ。


「マーゴット様は偽者が現われるほど有名じゃない!私、頑張る。女性の権利拡張、いえ、全ての虐げられている者のために頑張るわ!」


 サリーは空を見上げる。

 確かに、

 マーゴットの顔が大空いっぱいに浮かんだ。


 女神教典外伝。烈女伝に「マーゴット伝」の節が設けられ、女性権利の先駆者として名が記されることになる。






最後までお読み頂き有難うございました。

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[良い点] 笑った。 [一言] 架空の国・ジャポンの桃郷都に存在していると言う故羅模代表・煮斗宇氏並びに団体へのオマージュですな(笑)。 そうかあそこにもピンク頭送ると、公金ちゅうちゅうとか無くなる…
[良い点] なんだろうな、内容が頭になかなか入ってこなかったw
[良い点] 楽しく前編後編読めました!
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