前編
貴族学園の終業式、この国の学園では成績上位者の表彰がある。成績上位者は父兄同伴が慣習である。
誉れを家族に知らしめるのが目的だ。
しかし、異常事態が続いていた。
高額な給与が必要な家庭教師を雇えないハズの男爵家の令嬢が学期を通じて一番を連続している。
おそらく、年間MVPになるであろうと予測された。
王太子は圏外なので、陛下は出席していない。
王太子の婚約者は2番と発表され
正に、一番の発表の時、
「成績一位は・・」
「ちょっと、待って、異議あり!」
「王太子殿下・・」
教員の発表を遮り、王太子は壇上に上がり、生徒を見渡しながら
「今日は私から皆に伝えることがある。断罪だ!」
と伝えた。
ザワザワザワ
「一位の発表だから、もしかして、あの男爵令嬢?」
「まさか。ちょっと言動が変わっているけど・・」
ゴホン!
「不正に成績一位を独占している・・マン男爵令嬢サリーよ。貴様を貴族学園から追放する!」
「ちょ、ちょっと、何でよ!」
「しらばっくれるな。証言者前へ」
王太子の後ろに、婚約者の公爵令嬢が、震えながら背中に隠れていた。
サリーを見つけると、「ヒィ」と小声で叫び震える。
証人は、次々に発言する。
皆、サリーに一位の座を奪われている高位貴族子弟達だ。
「サリーは、元平民の身分をわきまえずに、王太子の婚約者であらせられる公爵令嬢アマンダ様の悪口を言ってました!」
「私は見ました。サリーがアマンダ様をにらみつけているのを、今もにらみつけています」
「サリーは元平民の分際で成績が良いです。何か不正をしているのに違いありません」
「サリーは、裸足で木に登って、降りられなくなった猫を助けました。王太子殿下の気を引こうとしたに違いありません!」
・・・し、知らないわよ。
悪口を言ってないし
そりゃ、目に入れば見るでしょう。あの縦ロール!
成績が良いのは、私は前世で高校に通っていたからよ!
猫は、助けるわよ!
ここはゲームの世界、誰も攻略せずに、ざまぁもせずに、ざまぁ返しもされないように
過ごしていたけど、何?これがゲームの強制力なの?
断罪されるのは、ピンクブロンドヒロインの宿命なの?
「ちょっと、全く意味不明じゃない?!証言だけじゃない!」
「それに、ロクに学校に来ないのに成績が良い。不正の証拠だ!」
「学校の欠席が多かったのも、聖女の公務をしていただけじゃない!公休じゃない!きちんと届け出ているじゃない。先生に確認して下さい!」
「ええ、殿下、サリー嬢は、聖女に課せられた浄化や慈善活動をしておりました。それも加点になります。殿下は・・如何でしょうか?」
と教師が遠慮がちに援護射撃をするが、
「出席日数のことは些細なことだ。私の婚約者のアマンダが、可哀想にこんなにブルブル震えておるではないか?
それが証拠だ!」
「意味不明なんですけどーーー」
「アマンダに嫉妬して意地悪をした罪と、不正に成績上位を独占していた罰として、貴族学園を退学の上、修道院に行ってもらう。王太子命令だ!衛兵よ。連れて行け!」
「「「ハッ」」」
「お待ち下さい。王太子殿下!あまりに理不尽な物言いです。良くお調べになったら如何ですか?」
たまらずサリーの義父、マン男爵が物言いをつける。
「殿下、これは何かの間違いではございませんか?証拠らしい証拠はないように見受けられます」
「ほお、マン男爵、それなら、爵位を掛けて裁判をするか?」
「ええ、そ、そんな~」
「義父様ぁあああああ!」
「サリーーーーー」
☆その後の生徒会室
「フフフフ、やったな。アマンダよ。あのピンクブロンドは聖女だ。平民だが、聖女のギフトがあるから、男爵家に養子になれたのだ。これでアマンダが繰り上げで一位だ」
「ええ、殿下、一石二鳥ですわ。これで私が敬愛するマーゴット様が院長を務める修道院に、聖女が一人所属することになって、ハクがつきます」
「だが、男爵令嬢の木っ端聖女だ」
「ええ、でも、聖女が在籍した実績が出来ました。次はお金で呼びますわ」
「「ハハハハハハハハッ」」
☆コンラート修道院
サリーは王都内のコンラート修道院に連れて来られた。
ここで、奉仕活動をすることになる。
「良く来ました。私が当院の修道院長、マーゴットです。貴方が殿下に懸想して追放されたサリー様ですね」
「ちょと、違うわよ!」
「フフフフ、それは些細なことよ。女神様の元では私たちの出会いは運命よ。貴方の使命を教えるわ」
「使命?」
修道院長マーゴットは、サリーを修道院の一室に連れて行く。
そこには
「皆、どうしちゃったのよ~」
10半ばから20代前半の女性が体育座りをして、3人ほどいた。
元気がなく、カルタのような遊戯をやっていた。
女神カルタだ。
「サリー、これが現実よ。彼女らは、男性から、性的な被害、搾取を受けたの。他には、強いモラハラを受けて自立できなくなった娘たちなの」
この世界は、心療内科などない。薬もないわ。皆、無気力にゲームをしているわ。
「ヒィ、ヒドイ」
サリーは孤児院出身だが、現在の義理の親からは愛情をたっぷりもらっていた。
「女神様は・・当然女性、私たち女性は神の化身。だから、女性はもっと尊ばれるべきだと思うの」
!ピコンとサリーの頭に電球がついた。
「そ、そんな。本当は尊ばれるべき存在である女性が抑圧されている」
「協力してくれるわね!」
「はい!私に出来ることがあるのなら!」
・・・フフフフフ、これで聖女様まで、私の趣旨に賛同してくれたと宣伝できる。
元平民で、男爵令嬢なのがイマイチだけど、高位の聖女を呼び寄せる撒き餌になればいいわね。
「サリー様、お知り合いの聖女様がいたら、是非、当院に呼んで下さい。出来たら高位の方が宜しいですわ」
「はい!影響力の強い方がいいですね。サリー、納得しちゃいました」
「それでは、活動を教えるわ」
「はい!」
☆繁華街
「ピンクは女性が安心を感じるのよ」
「へえ、だから、ピンクの馬車ですね。納得です!メモ、メモっと」
・・・メモまでして、すっかりはまったわね。
繁華街で馬車を止め。ここで街行く女の子にお菓子や食料を配る。
家出少女を探し、保護するためだ。
「キヒヒヒィ、お姉ちゃん。俺とデートしよう!俺、男娼、初回は無料でいいからさ」
「困ります」
壁ドン!
「ヒィ」
「おら、おら、俺様が誘っているのに、来られないってどうゆうことよ。傷付いちゃったな」
「ちょっと、あんた、何しているの?」
「へ、ド腐れ外道聖女のサリー、お前は何故、ここに?学園に収監されたのではないのか?」
「「「逃げるぞ!」」」
サリーはしつこいキャッチに困っていた女子を助けたがマーゴットは注意をする。
「サリーさん。男娼はいいのよ。困っている女の子を助けたり励ましたりする存在よ」
「へ、そうは見えなかったけど、今まで半殺しにしていたけど・・・」
「まあ、サリー様。冗談がお上手ね」
・・・時々、不思議な言動をするってアマンダ様から聞いたけども、不思議ちゃんね。
でも、男娼グループと揉めるのは危険ね。
後ろには怖い裏組織がついているからね。
サリーはそんなこともわからないのかしら。
何事もほどほどが一番ね。
その後、修道院では
サリーは一生懸命に自立できない若い女性のお世話をした。
自立できない女性はこの部屋だけではなく、他の部屋に一部屋3人~5人で居住している。
数十人はいたが、文句を言わずに食事を作り、話し相手にもなった。
・・・フフフフ、これなら、もう大丈夫ね。
「サリー様、私は講演の旅に出ます。留守をお願いしますね。相談役の方がいますから、その方達の言うことをしっかり聞くのよ」
「はい!マーゴット修道院長様!」
☆~~~数週間後~~☆
マーゴットは女性活動家として、各地の貴族や裕福な市民のサロンを転々とした。
行く先々で、観光や食事などを満喫していたが。
~ボロン、ボロン、ボロロロン♪
「コンラート修道院、マーゴット様~またもや大手柄!悪辣非道な男娼グループを壊滅させたよ!次は本命!王都最大男娼・違法娼館グループと抗争だ!
詳しくは~~天幕で、時事語りをするよ~お代は一人大銅貨一枚~コンラート修道院への寄付も受け付けます!」
街角で吟遊詩人が、自分の修道院と名前を連呼していた。
「な、なにーーー、入るわ。お代は銀貨一枚払うから、一番前の席に座らせなさい!」
「はい~毎度あり、収益の一部は女性の自立支援のために使わせてもらいます~~~」
ポロン、ポロン
時事語りが始まった。
内容はマーゴットにとっては頭が痛くなる内容だ。
一つ、マーゴット様は、魔カエルを舐めてラリっている女神教の似非神父、ボムを断罪した。
二つ、マーゴット様は、市民会有力議員マーカが、女子の猥褻魔道写真を撮っていると看破して、証拠を押さえ騎士団に引き渡した。
三つ、若い女性だけではなく、困っている方々に炊き出しも行っている。
四つ、マーゴット様は、色恋営業で婦人に高額な借金を背負わせて、娼館で働かせる男娼グループを討伐。
今は、王都最大男娼グループオスカー商会と抗争!女の子に、高額な飲食代を請求する悪徳グループだ。勝敗は如何に?絶賛、抗争中!
・・・何それ、私、英雄になっているわ。ボムとマーカってコンラート修道院の相談役じゃない!
講演途中であるが、マーゴットは叫ぶ。
「はあ、はあ、はあ、そのマーゴット・・・は偽者よ。皆、欺さられてるわ!」
「何を!女性のために働いているマーゴット様が偽者だって?何の偽者だ!」
「ピンクBBA!言って良いことと悪いことがあるぞ!」
「そうよ。偽者なら、本物はどこにいるのよ!」
女性だけではなく、男性からも支持されているわ。
皆、欺さられているわ。ピンクBBAって言った奴、後で、アマンダに言いつけて逮捕してもらうわ!
「本物は私よ!いい?私はね。街頭で世間知らずの田舎の家出娘に声を掛けて、修道院に住まわせて、貴婦人から寄付金をもらっているのよ!
貴婦人はお涙頂戴物が大好き!
たまに、炊き出しをして格好を付けているだけなの。
炊き出しと言っても、お菓子を配っているだけなのよ!」
「ヒデェ。庶民のヒーロー、マーゴット様を悪く言うとは・・・」
「俺の女房は田舎の小作農の娘だった。地主のセガレに乱暴されそうになって、身一つで都市まで逃げてきたのだ。都市に逃げてくる娘っ子は事情があるものさ。
それを、世間知らずの田舎娘だと!」
「「「出て行け偽者め!」」」
ボロン♪ボロン♪
「お代は返します~お引き取りを願います~マーゴット様を騙る偽物は~民衆の敵~一昨日来やがれ!」
吟遊詩人からビュン!とお代の銀貨を投げつけられた。
「ヒィ」
マーゴットは講演の旅を中断して、急いでコンラート修道院に帰った。
最後までお読み頂き有難うございました。