それから
翌朝
起きたネリーはぐーーっと伸びをした。
ゆっくり休んでスッキリ元気になったようだ。
シュタイン探しにいくことにしたネリーはベッドからよいしょっと降りてドアノブに手を伸ばした。
ギィ…一番最初に見えたのは酒瓶抱えたシュタインが転がってるところだった。
ちょっぴりウゲっと思っちゃったがガッシュは守り人のお仕事があるし
しかたなくシュタインの前にしゃがみこむと指でツンツンとしながらシュタインを呼びかけた。
「シュタインーシュタイン?」
「ウ…何か可愛い声するな…なんだろ……「ネリーだよ」そうネリー…ネリー、っは!ネリー!」
「おはよーシュタイン」
「うん!おはよー!ってやばい飲み過ぎた…ぅ…あ、あたまが…」
「だいじょうぶ?」
「大丈夫大丈夫、本当にごめんね僕が起こす予定がおこしてもらっちゃった……いやほんとにこういう大人になっちゃだめだよよく言うじゃない?酒は飲んでも飲まれるなってね。僕が言うことじゃないなぁっアッハッハ!ウッ!!自分の声で頭痛………ァーいたい…」
頭を抑えながらフラフラ戸棚にいくと昨日より幾分も小さいマグを透明な瓶から取り出してパキッと割っていた、瓶にはまだ沢山入っている。
「ぅんーー効くなぁマグ様様」と晴れ晴れとした顔をした。
「それもマグ?すごいねぇ!!昨日の私に使ったマグはこのままずっと効いててくれるの?」
「ん?これはね毒消しのマグだよ。昨日のは定着もついてる優れものだからなんとなんと効いたまま!オトクダネ!!!マグってすごい!ちなみにだけどこのマグも昨日のものも姉さんが作ってるんだ。姉さんマグ専門の職人なんだ、この家にあるマグはね全部姉さんからパクっ…あっ貰ったものなんだあ!姉さんすごいよねぇ」
「姉さんずごいー!どんな人なの??」
「そうだねー姉さんはね口調が荒いことを除けばとっても優しい人だよ。そしてマグ作りかけては間違いなくこの国でトップをとれると僕は思ってる。あとはねー……はっ!ガッシュの奥さんです!」
「わー!そうなのー?!ガッシュの奥さん!?会ってみたいなぁ」
「あ!えーっと…えっとね、ね、姉さんね忙しいから………そう!マグとかでね!忙しいからガッシュにそのうち予定聞いてみようかー!」
「うん!やったー!そのうちっていつー??」
「えーーっと……ネリー!朝ご飯食べた??」
とニコニコはなしていると急に
「っ!!誰か来たよ」
ネリーは警戒した様子でそう言った。
シュタインはすぐさま切り替えた様子で無言で頷くと警戒しながら耳を澄ませた。
ドンドンとノック音がした。
「シュタイン〜〜〜〜〜〜!!いるんだろうが!このクソ愚弟!!さっさと開けろ!」
「あっ姉さんかぁ…」
思わぬ姉の訪問に脱力したシュタインだがキレた姉の様子に冷や汗が止まらなかった。ネリーはびっくりして固まっている。
「噂をすればってやつかなアハㇵ……ウーンヤバイナー」
再び顔色が悪くなったシュタインは最後の抵抗のような遅さでそろーりと近寄り少ーしだけドアをズラした。
サッと足をいれ悪党顔負けの手慣れた様子でバンっと女性が入ってきた。
同時に何かを掴む素振りで腕を上げた。
突然苦しそうに襟首掴まれた様子でシュタインが持ち上がっていった。つま先だけで何とか気道を確保しようと足掻き、言葉を絞り出した。
「ね、姉さん、く、くび、く、苦し…」
「ぁ”?」
そう凄んで睨みつけたあとフンッと鼻を鳴らして手をおろした。
ドサッ音と共にシュタインが床に崩れ落ちた。
ゴホっと咳き込みながら呼吸を整えている、何とも可哀想な様子のシュタインにネリーはどうしていいかわからず完全に固まってしまった。
「てめえの手癖の悪さに今更いちいちいう気はないよ。どーせあんたが持ってくの毒消しばっかだしね、それよりあんた実験品どこやった?サッサとだしな」
「実験品…?あーあれか、いや僕でも流石に手を出さないよ、使わないし…」
「よく言うわ2ヶ月前にやったばかりじゃない………まぁいいわ。で?そこの子は?」
(あっ気づいてたのか…どうりで優しいはずだ…ホッ)
「この子はネリーこの子については長くなるからとりあえず座ってよ。ネリーもおいで」
ネリーはこわくて正直行きたくなかったがそろーそろーと歩きシュタインにピトッと近寄っていき、シュタインと似ているが堂々とした美しさで人を圧倒すお姉さんをそっと覗き込んだ。
お姉さんはネリーを見たが直ぐに弟に視線を戻し睨みつけ
「ベリーのタルトあるだけ全てだしな」
そう言って足を組んでそれはもう偉そうに座った。
▷▷▷▷
そしてネリーがモグモグとタルトを食べてる間に話しは大分進んだ。
お姉さんはファナさんというらしい
ファナと呼んでと言われてコクコク頷くだけになった、口には出せなかったの…もう少し様子みさせてほしい
ファナは特に気にした様子なかった、そして弟に目を向けると眉間にシワを寄せながらいった。
「あんたネリーちゃんに説明したの?」
「今日説明しようと思ってて…!昨日は大変だったからね!今からするよ」
息を吹き返したシュタインは真剣な顔になりネリーに向き直した。
横目で見たファナは深く息を吐いた後立ち上がって何処かにいってしまった。
「順を追って説明してあげたいんだけどごめんね、すごく苦手だから分かりづらいかも…その都度でもどのタイミングたでもいいからわかりづらいところあったら遠慮なく言ってね」
ネリーは頷いた
「ありがとう、それじゃあえっとまずはこの場所、東の森についてはなすね。森には神龍が居て生贄を差し出せばどんな願いも叶えてくれるという伝説があるんだ。……まぁ実際いるんだけどもやってもろくな結果にならないんだ、それでもやるやつが後を絶えなくて困った先々代の王がいい加減にしろってキレてから監視役を置くようになったの。それが僕達守り人なんだ。狙われるのは決まって君みたいな小さい子だったり年老いた老人抵抗のできない人間を中心に生贄としてあの森に放り込まれるんだ。ネリーのようにショックが多きすぎて記憶のなくなった人もいる」
龍の話しを聞いてキラキラしていたネリーの表情が悲しげに歪んだ。
「私みたいな人がたくさんいるってこと…?」
「うん……でもね……守り人を置くようになってからは犠牲者も減ったんだ。犠牲者が減れば伝説に頼ろうとする人も減って今ではほとんどいなくなったんだよ。」
ネリーは安心した顔を浮かべたかったができたのは複雑な表情だけだった、シュタインは眉を下げたまま話を続けた。
「この山を下りた先に麓に街があるんだけどそこにはね生け贄にされそうになった人達が住んでる。何代も前の守り人達が助けた人たちとで作り上げた街があるんだ。そこには僕の父が建てた孤児院もね」
「ネリーにはそこで過ごして行けるようにする予定だったんだけど…君には今までの子たちとは違って強い魔力適性がある、だから孤児院で他の子達と一緒に住むことができないんだ」
「魔力適性ってなに…?どうしてだめなの?」
どこにも行く場所がないのかと不安になったネリーはお腹の前で不安そうに両手を握りしめた。
「魔力適性はね体内に流せる魔力のことを言ってるんだけど、流せる量が多いと身体能力の強化が起きたり…とても力が強くなったり頑丈になることね?他にも魔力を使った現象を起こす事ができるんだ火を出したりとかね」
「火なんてでないよ?」
「うん、そうだね。でも気配がわかるでしょう?」
シュタインはそう言ってしゃがみ込んで目を合わせると大丈夫だよというようにそっと不安げなネリーをなでた。
「うんわかる…でも…シュタインもわかるんだよね…?」
「シュタインが私を見つけてくれたから…」
ネリーはそういってぎゅっとシュタインに抱きついた。
「そうだね僕も似たものを使えるよ」
そう言ってシュタインはネリーを頭を優しく撫でた。
「でもそれはたくさん訓練したからだよ。でもネリーは意識的に使ってないだろう?五感強化を超えた第六感を作り出すほどの強い魔力は……………何もしなくてもわかってしまうほどの強い魔力は他のこともいずれひきおきてしまう可能性があるんだ。他の子を傷つける可能性やネリー自身を危険にさらすかもしれない、だから他の子にも目を向けないといけない孤児院は難しいんだ。」
ネリーは自分が危険な存在だということだけはなんとなく察して堪えた感情をぎゅっと眉にのせた。
「そこで提案なんだけどネリーさん、私の家族になりませんか?」
シュタインがぎゅっと寄ったネリーの眉を優しく指で引き伸ばしながらそういった。
「僕だったら充分サポーt「なる!」」
バッと顔を上げたネリーは目を大きくまん丸にして勢いよく言った