ガッシュとシュタイン
よろしくお願いしますー!
痛い…ダルい…
目が霞む…なにこれ…血?
ここはどこ…?…森?
この痛みをどうにかできないかと土にまみれながら這いずり続ける。
記憶がどうも曖昧で思い出せない、とにかくここから離れようとまた這いずり始める。
.....…少しずつ、少しずつ進んでいくと隠れられそうな木があった。地面から露出した根にはちょうど少女が隠れられそうな暗がりだった。少女はなんとか辿り着きズリズリと入り込むと背中を大樹に預けて外をぼぅっと見つめた。
私なんで死にかけてるんだっけ…?
ぼんやりとした意識に虫の音がうるさく響いていた。
弱っていることを察しているんだろう、鬱陶しい、手で追い払ってもすぐによってくる。
弱々しく繰り返していると、すごく遠くに近づいてくる人の気配がした。
気づいた少女はここを離れるか考えようとしたが、ぼんやりした頭では難しかった。何より少女はもう動きたくなかった。
ーーーー
視えて数m程度だろうという鬱蒼とした深林のなか青年たちは身軽そうに枝の間を渡りながら進んでいた。
長身の青年は枝と言うには太すぎるその場で違和感に気づき立ち止まった。正体を探ろうと緑しかないその場所に目を凝らした。
「うわ!こんなところに人がいる!」
長身の青年がなにかにきづいて駆け出した。一緒にいた大柄の青年が慌てて追いかけるが数100m以上はあったであろうその先に青年が瞬間移動?したため目の前にはもういない。
「?…!…おい!」
ーーーー
「ねぇ!君!大丈夫?!」
突然現れた声に私は驚いたがもう起き上がれない、なけなしの気力を振り絞って声を出す。
「[あっちいって…お願い…]」
「何?なんて…?安心して!必ず助けるからね!」
そう安心させるように優しく話しかけると
青年は急いで傷口に布を当てながら叫ぶ。
「ガッシューー!!こっちーー!はやくー!!」
「うるせー!!叫ぶな!!」
ガッシュと呼ばれた青年が叫び返しながら走ってきた、どうやら彼も移動が早いようだ。
少女の眼の前まできて傷の具合を確認するなり腰に差していたナイフを取り出した。
「酷いな…クソが…!」
そう悪態をついてナイフを振り上げ、戸惑うことなく自分を刺した。腕からは赤い血が溢れてくる。
刺した腕を抑えながら何かを唱えるとみるみる傷が塞がっていく、完全に塞がったあと何故か少女の方の傷も塞がっていった。
「よかった~~、間に合ったね」
のんきに長身の青年がなんでもないことのように話しかける。それに対しガッシュはキレながら怒鳴る。
「てめえ!こっちは痛えんだよ!回復持ってねえのに毎度首突っ込んでんじゃねえ!」
「でもガッシュの出番なんて稀じゃないかー大体は俺が処置してるだろう??」
「稀じゃねえ!」
「………………!」
「………」
「…」
彼等がそう言い合いしている間に傷が塞がったことに気づいた少女は二人に話しかけるが気づいてもらえない。
「[ここにいたら危険、ねえ!きいてる??何か来てるってば!]」
「[ったく!もう!!…何言ってんのかわかんないし、ここどこ]」
少女は伝えることを諦めてヨロヨロと立ち上がる。
少女が立ち上がってやっと気づいた二人
「あ!だめだよ!治ったのは傷だけで血は足りてないんだよ?」
「そうだ、無理するんじゃない」
青年はそう言いながら両手をふっている
「[何言ってるか分からないって、うわぁ!]」
ガッシュが少女を肩に担ぎ歩き出しながら言う
「とりあえず家に戻る」
「そうだね~さき行っててー俺はちょっと後ろの片付けてから戻るね」
「こんだけ話してりゃそりゃ来るか、よろしく」
何か頭上で話しているが少女はわからないし疲れたのでもう面倒くさくて放置した。
▷▷▷▷
ガッシュは器用に片腕も使いながら軽く木々の間を移り抜けていた。
本人は流しているような態度だが、少女にとっては猛スピードで移り変わる景色に目を白黒させている。
少女は移り変わるスピードに驚いていたが
ナニカに向かっていった青年のことも心配だった。
(彼は大丈夫だろうか…?)
それもすぐに杞憂におわった。
青年がこちらの方に向かってきている、少女は安心した。
(こっちにきてる…!よかった………この人も凄い速度だね……)
この速度も時間経つほど慣れてしまい流れていくその辺の草花をみるくらいの余裕が少女にできていた。
鬱蒼とした森の中を進み続けていると
少し開けた土地にでた、街が一望できそうな高台の森に畑と家があった。とても景色が良い。
ガッシュは無言で軋む扉をあけた。
年季ははいっているがそこそこ手入れされているようだ、使用されいる場所はすべてきれいだ。
奥の部屋にあるベッドに真っ直ぐ向かい、少女を寝かせるようにおろした。
「ちょっとまってろ」
ガッシュはそう手振りを加えながら言って部屋を出た。少女もなんとなく伝わったので大人しく待っていた。
少しするとガッシュは両手に沢山抱えて戻ってきた。
コップ2つに数種類の果物やパン、干した食べ物など大量だった。
少女は危なっかしい動きに慌てて駆け寄り受け取った。
ガッシュは微笑むと、お礼をいいながら食べるよう促した。
「おっありがとな、お前も食え」
少女は食べても良いことを察するといくつかつまんだ。
ひと心地ついていたら、もう一人の青年も近くまで来ていることに気がついた。少女は立ち上がって窓の外を指さした、ちょうど森と畑の境目だった。
「[ーー帰ってきたよ]」
ガッシュが目を向けて数秒ほど経つとちょうど青年がそこに降り立った。
「…!」
ガッシュは驚き、少女をみた。
ーー少女は驚くガッシュにビビった。
「もしかして位置がわかるのか?」
少女は困惑しながら首を傾げた。
「ーーそうだった、わからないんだった…」
そう言ってガッシュは少女をみて頭を搔いていた。
どう話すか頭を悩ませていると青年が帰ってきた
青年の間の抜けた声が部屋に響いた。
「ただいま〜」
青年は部屋に散乱した食べ物をスルーして果物を手にとり、噛りながら話した。
「元気そうだね、よかったよかった。モグモグ…君の言葉なんだけど…モグモグ…
ちょっと聞いたことのない言語っぽくてわかんないからひとまずスクロール持ってきたよ」
よっぽどお腹が空いていたのか食べながらそう言うと
青年は反対の手で腰のポーチから手のひらに乗るサイズの小さな物を取り出した、フォーチュンクッキーみたいな形をしている。
3人の中心でそれを割ると、中には小さな紙が入っていた。何か文字っぽいものが光った。
紙を中心に淡く光り部屋全体を包み込むような結界ができた。
「これで通じるようになったはずーー俺はシュタイン、そっちの甘いもの好きはガッシュ。お前また隠してやがったな……それで君の名前は??」
シュタインは口を開かずに話しかけた。
少女は初めてわかった言葉に目を丸くしながら答えた。
「わかんない」
「あらまーーーそれは困った」
シュタインは軽い口調でそう言うと、とりあえずという様子で話しかけ続けた。
「どうしてあの森に? 親はいるのかい?森には君一人だったけどどうやって入ったんだい?あぁ…っと!これも美味しいから食べてね」
脈絡なく出した言葉とベリーパイを手渡し笑いかけた。なるべく問い詰める形にならないよう配慮しているようだ。屈託のない笑みからはパイを食べさせたいだけのようにも見えるが…
少女はキラキラ光る美味しそうなベリーパイをみつめてゴクリと喉を鳴らした。
恐る恐る手を伸ばすとシュタインに控えめな会釈をして受け取った。
少女は矢継ぎ早に出た話が頭に入らない様子でぼぅっと答えた。
「…どうして言葉分からなかったのに分かるの?」
一瞬考えを巡らせるような間ができたあとシュタインはゆっくりと話しかけた。
「……そうかぁ えっとね、この辺ではそんなに珍しくないんだけどマグだよ。マグには言葉の壁を超える祈りがこめられてた」
少女は首を傾げながら頷いた、なんとなくわかったようだ。
シュタインはその傾げる姿に優しい笑みを返した、いつの間にか淹れていたお茶を配っている。
見守っていたガッシュが受け取ったカップから手を離し、少女を見つめていった。
「それで…名前どうする?」
「なまえ…」
足元見つめて考える様子をみせたあと顔を上げて彼らに向けていった。
「つけてくれる?」
「…ネリー」
「ネリー…うん!ネリー、ネリー……ガッシュ素敵な名前をありがとう。あ、あの…」
「うん?どうした?」
「わ、わたしね聞きたいことがあるのずっとおっきなナニカに追いかけられてたの、ここにいても大丈夫…?」
「あれなら僕がやったよ!安心して今ここはとっても安全だよ、ここにもいくらでもいるといい!僕たちはこの森の守り人ってか監視が近いかな?でねこの「今日はこのくらいにしとけ、寝ろ。あいつはいつまでも話すんだ。明日色々聞くといい、どうせ非番だ。」
シュタインがその言葉に少し反省した顔をしてネリーにそれじゃあおやすみと言って部屋を出て行った。ガッシュはネリーの寝台を整えた後頭をひと撫でして出ていった。