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シンデレラが選ばれた理由

これにて完結です。

お楽しみいただければ幸いです。

 それは、私が王子と結婚することになって一カ月が経った頃。

 パーティの日、王子と私が二人きりで話をしていたテラス。

 そこで日課の薬草への水やりをしていた夜のことだった。

「やあ、シンデレラ」

 満月を背景に飛んできた魔女。

 久しぶりに会えた魔女に、私は笑顔を浮かべた。

「魔女さん! お久しぶりです。お城いっぱいの薬草ありがとうございました」

「まあ、取引だからね。多かったかな?」

「全て刈り取るのは大変でしたけど、お城の人達に手伝ってもらって三日くらいで終わりました。これで研究ができそうです」

「そうかい。今、王子とはどう?」

「王子様とは仲良く、丁度空いていた隣の部屋で暮らしています。王子様が国王になるまでは婚約中で、国王になって落ち着いたら正式に結婚する予定です」

「今の国王は荒れてただろう。わざわざパーティの招待状の送り先まで変えてたのに、金持ちと結婚しなかったんだから」

「はい。何日かは国王様と王子様が対立していたんですが『贅沢ばかりしている国王より、まともな人と結婚した次期国王の王子様側についた方が良い』って考える人が多いようで、国王様の味方がどんどんいなくなって……」

「追放された、と?」

「いえいえ、対立したとはいえ父親ですから、今後は贅沢しないって約束で王子様が城の方達を説得したんです」

「へえ……。寛大だねぇ」

 と、ここで魔女はまたがって空中に浮かんでいた箒から降りた。

 周囲を気にしているようで、あまり人に見られたくないようだった。

「……あの、魔女さん」

「なんだい?」

「私って、なぜ選ばれたんですか?」

「なぜって、王子の好みに合ったからだろ?」

「そっちではなくて、魔女さんが私を選んだ理由です」

「なぜ気になる?」

「魔女さんが私に賭けてたからです。私が王子様と結婚できた時に手に入るお金は多いです。ですが、その分手に入る確率はとても低いはずです」

「うん、そうだね」

「でも、私も賭け……。あのガラスの靴と仮面を置いていった時に気付きました。外れた時に失うもの、当たった時に手に入るもの、当たる可能性、この三つを考えればやるべき賭けか……。割の良い賭けかわかると思うんです。私の場合だと、失うかもしれないものは元々履いていた靴、手に入るかもしれないものは王子様との結婚、可能性は少なくない。それで賭けるべきだと考えました」

「……シンデレラ。初めて会った日から思ってたけど、かなり知性があるよね」

「的外れな話じゃないって意味ですか?」

「……そうだね。もう過ぎた話だし、シンデレラには伝えておこうか」

 ごくりっと私は唾を飲んだ。

「最初はね、パーティで誰が王子と結婚できるかってギャンブルにするつもりだったんだ。最初に王子が招待状を出そうとしていた女性達だ。さすがに身寄りのない人までは把握していなかったみたいで、シンデレラは招待状を送る候補に入ってなかったよ。その中から、オッズが高くて王子と結婚しそうな女性を見つけるつもりだった。……ここであるトラブルが起こった。国王が招待状の送り先をお金持ちのお嬢様達に送ったんだ。私としては困る状況だよ」

「なぜです?」

「『王子は誰とも結婚しない』って選択肢もあったんだ。一度のパーティで結婚相手を決めないだろって考えの魔女も少なくなくてオッズがあまり高くなかった。このままでは、王子が好まない女性に賭けるか、当たってもほとんど金の手に入らない結婚相手無しに賭けるしかなかった。割の良いギャンブルではない。……私は金が欲しかったからどうしても割の良いギャンブルがしたかった。だから思いついた」

 魔女は私をじっと見つめた。

「そうだ。一見、王子と結婚できそうにないが実はよく調べると王子の好みに合う女性を探してその人が王子と結婚できるかというギャンブルにすれば良いんだってね」

「それで見つかったのが……私」

「そう。まず、王子は家柄を気にしないから教会で育てられた身寄りのない人を探した。次に、王子はよく働く人が好みだから労働者を全員洗い出した。さらに、王子が関心のある薬学の知識がある人を学校や学者たちがいる研究機関で探した。すると、この三つに当てはまる人が見つかった。それがシンデレラ、君だ。パーティまで時間もあまりなかったからすぐに決めたよ。……これで割の良いギャンブルが出来るってね」

 そんな理由で私は選ばれたのか。

 私がポカンとしていると、魔女は少し罪悪感があるような暗い顔をした。

「失望したかい? 味方して、魔法で協力してくれて、薬草までくれた魔女が裏ではギャンブルのために計算して動いていただなんて」

「もう一つ聞いてから、失望するか決めます。ギャンブルで得た大金は何に使うんですか?」

「……魔法の研究だよ。薬学ではないけど、怪我を治したりする魔法もまだまだ不完全でね。出来ること、増やしたいんだ」

 私はフフッと笑った。

「それじゃあ、失望しないです。魔女さんも誰かのために、色んなものを賭けて信じる人なんですから」

「ふん。分かったような口を聞くんじゃない!」

 魔女はそう言うと、フードを深く被り直して飛び立っていった。

 ガチャッ……。

「おや、ここにいたのか、シンデレラ」

「王子様」

「……また、独り言かな?」

「いえ、お友達とおしゃべりしてました」


 この物語は、私、シンデレラの人生を変えた物語。

ご覧いただきありがとうございました!

ブラッシュアップシンデレラ。

これにて簡潔です。

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