表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

王子はガラスの靴を手に

ガラスの靴を手に、町へ出た王子。

王子はシンデレラと再会できるのか?

「まさか、全員違うとは……」

 私、王子は馬車の中で今までの人生の中で指折りに大きなため息をついていた。

 パーティで出会ったあの女性の手がかりは、身寄りがない、薬学を学ぶ学生、メイド、そして、ガラスの靴に合う足をしている、この四つだ。

 裕福な家庭を一軒一軒回るのは時間がかかりすぎるし、ガラスの靴に合う足をしているかは、町の女性全員を調べる必要がある。

 教会からはおそらく独り立ちしているだろうから、手がかりを得られない可能性が高い。

 となれば、通っているといっていた学校で探すのが早い。

 と、思っていたのだが……。

「まさか、大学生たちの中にいないとは予想外でしたね、王子」

 馬車の中、私の隣に座る門番がそう声をかけた。

 ほんの一瞬とはいえ、顔を見たため、あの女性を探すのに役立てると思って連れてきていた。

 大学では校長に協力してもらい、自分がテラスで王子と話した女性だ、という人物に名乗り出てもらったのだが、これがかなりの大人数となった。

 どうやら、王子が顔を見ていない、ガラスの靴に合う足をしているという情報まで校長がしゃべってしまったようで『足が合えば王子と結婚できる』と、誤った情報が広まってしまったようだ。

 門番が、明らかに違う、もしかしたら本人かも、の二つのグループに分けてくれたため容易かったが、もしいなければかなりの時間を割いてしまっていたところだ。

「次、どこ行きましょう? 教会行って、シスターに聞き込みします?」

 まだ可能性はある、とでも言わんばかりに、門番が私に声をかける。

 馬車は大学の学生たちを振り切るためにすでに走り出しており、門番は地図を広げて教会の場所を探し始めていた。

「えーっと、大学からこっちの道に行ったから、今は大体この辺……ん?」

 門番は何かに気づき、私を軽く押しのけるほど慌てて馬車について窓から外の風景を見た。

「王子! もう一つは学校がありました! 専門学校です!」

「専門学校?」

「はい。良く考えてみれば、大学はお金がかかりすぎる、その女性は学費の安い専門学校の方に通っていた可能性があります!」

 私はあわてて馬車を急ぎ停車させた。


「はあ……。靴が無いってつらいな……」

 私、シンデレラは、そうぶつぶつ言いながら専門学校の校舎を出た。

『賭け、信じることこそが人生』

 あの時、魔女の言葉に突き動かされた私はある賭けを行っていた。

 ガラスの靴を脱ぎ『触れていない状態』となり魔法が解けるのを免れたガラスの靴を仮面と一緒にその場に放置。

 それを王子が私を探しに来てくれる手掛かりとした。

 靴を賭け、王子が探しに来てくれたら結婚できるかも、という賭けだ。

 とはいえ、裸足で外に出るのは痛みを伴うし、何より学校の友人や先生には驚かれ心配された。

 これが賭けの代償か。

 そんなことを考えていると、私は外の騒ぎに気が付いた。

「ねえ、知ってる? 王子が持ってるガラスの靴を履ければ、王子と結婚できるって!」

「本当? 行かなくっちゃ!」

 他の学生達のそんな声が聞こえた。

 私は、足の痛みもお構いなしに騒ぎの方へと駆け出した。


「私です王子!」

「顔が違い過ぎる!」

「私こそ王子と会った女性です!」

「こっちは体形! どう見ても足が大きい!」

 馬車の外では、門番が女性達を大学の時同様グループ分けをしていた。

 どうやら、大学の生徒が何人か馬車を追いかけて専門学校までたどり着いてしまったようで、そこからまた誤った情報が広まってしまったようだ。

 グループ分けが終わるまでは馬車の中で待つようにと門番に言われ、私はあの女性のことを考えていた。

 確か、最初に会った時も似たような状況だった。

 何人もの女性が私を取り囲む中、あの女性だけは少し離れたところから見惚れていた。

 窓から外の様子を見る。

 あの時と同じように、少し離れたところから、みすぼらしい姿をした裸足の女性が私の方をじっと見ていた。

「あ、あの女性は……!」

 門番の声も無視し、私は馬車から飛び出した。

 顔は分からないが、離れたところから見るところや、細かい仕草があの女性のような気がした。

「門番、あの女性は……」

「ええ、おそらく……」

 私の目線の先にいる女性を見て、門番はうなずき、その女性の前まで人だかりを割いて道を作ってくれた。

「君が、あの時の……」

「はい。シンデレラと申します」

 私はその女性、シンデレラの前で片膝をついてガラスの靴を地面に置いた。

 シンデレラは裸足の足をガラスの靴に綺麗にはめた。

「昨夜は急に帰ってしまい申し訳ございません」

「いいんだ。こちらこそ急に押しかけてすまない。君を探していたんだ。……私と、結婚してくれないか?」

「はい。もちろんです」

 私は、あの時の女性、シンデレラと再会した。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

絵本ではここで話が終わることがありますが、ブラッシュアップシンデレラはもう少しだけ続きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ