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賭け、信じることこそが人生

ついに訪れた十二時。

魔法が解ける中、シンデレラのとった行動とは?

 ゴーン!

 それは、突然鳴り響いた。

 町では昼の十二時に鳴っているのを聞いたことがある鐘の音。

「王子様! この鐘の音は……」

「十二時の鐘だよ。一分くらいかけて十二回鳴ったら、ちょうど十二時になるね」

 今まで日付が変わるまでには眠っていたため、気付かなかった。

『魔法は今夜十二時までしか効力がない』

『必ず逃げるんだ』

 魔女の言葉が脳裏をよぎる。

 ゴーン!

 二回目の鐘の音。

 ドレスの肩を見ると、元のみすぼらしい姿に戻っている。

 それに気付いた瞬間、私は王子の元から走り去っていった。

「ご、ごめんなさい。帰ります!」

 招待状は偽物だけど、王子がかばってくれれば捕まらずに済む。

 だけどそれ以上に、王子にみすぼらしい姿を見せたくなかった。

 王子に振られるかもしれない。

 それくらいなら、美しい姿のまま去りたい。

 そんな気持ちが、私を走らせた。

「帰っちゃうのかいシンデレラ!」

 ダンスルームを抜け出て外に出たところで、魔女が箒に乗って飛んできた。

「だって! 魔法が!」

「魔法が解けたくらいなんだっていうんだ! 王子は外見で選ばない人かもしれないだろ!」

 門の近くの曲がり角を曲がると、パーティから帰る他の参加者や、それを見送る城の人たちの姿が見えた。

 あまり人に見られてはいけないのか、魔女は私から離れていった。

 王子に美しくない姿を見せたくない。

 けど、魔女の言う通り、王子は美しくない私を選んでくれるかもしれない。

 王子と結婚したい。

 でも、どうすれば?

 どうすればいいの……?

『カボチャの馬車がお勧めだね』

『どんな人でも本物だと思う招待状』

 ヒントが欲しい。

 私は魔女にかけてもらった魔法の内容を一つ一つ思い出す。

 その時だった。

『一糸まとわぬ姿になれば』

 私は、ある賭けを思い付いた。

 それを思い付いたのは、大勢のパーティ参加者を城の外に出すため開いたままの、門の目の前。

 周りはのんびりと歩く中、一人だけ走り、門の前で立ち止まった私を参加者や門番が見ている。

 私の姿は、膝あたりまで元の姿に戻っている。

「賭け、信じることこそが人生」


 私、王子はあっけにとられていた。

 先ほどまで楽しく話をしていたと思っていた女性が、十二時の鐘の音を聞いた途端走り去ってしまった。

「お、追わなくては!」

 思わず声に出し、私は女性を追い始めた。

 帰ると言っていたから、ダンスルームを出て門から外に出るはずだ。

 ダンスルームを飛び出したところで、門の近くの曲がり角を走って曲がる女性を見つけた。

「待ってくれ!」

 そう大声を上げるが、聞こえていないのか女性は止まらない。

 おそらく、門は今開いたままの状態。

 他の参加者や門番はいるはずだが、止めるように伝える手段がない。

 それでも私は後を追った。

 道を曲がって門の前までたどり着いた。

 ……女性の姿はなく、私は見失ってしまった。

「門番! 今、女性が一人、走ってここを出なかったか?」

 やや大声で声をかけた私に、門番はビクンと反応した。

「は、はい! 確かにここを通りました!」

「どこへ行った?」

「も、申し訳ございません! 門を出た先は暗いため、見失いました!」

 なんだと! と、私は肩を落とした。

 このままでは、あの女性に二度と会えなくなってしまう……。

「た、ただ……! あれを、あの女性は置いていきました」

「あれ……。だと?」

 門番が指さした先には、あの女性がつけていた仮面と、ガラスの靴が置いてあった。

「賭けがどうとか言った後、仮面と靴を脱いで立ち去っていきました」

 仮面は借り物だから分かるが、なぜガラスの靴を……?

 正直訳が分からなくなったが、私は仮面とガラスの靴をそっと拾い上げた。

「門番、明日の君の予定は……?」

「え、明日は休みの予定ですが……」

「すまないが、明日は仕事だ」

「はい?」

 私は、門番の顔をじっと見る。

「君はある女性の顔を見ているはずだ。協力してくれ。このガラスの靴に合う足をした女性を探し出すんだ」

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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