オッズ三百倍の挑戦
ついにパーティ開始!
王子の考えた対策とは?
素敵なお城に少し見とれながら進むと、私より一つ前に来ていた招待状を貰った女性が、門番の前で大声を上げていた。
「何で居眠りしているのよこの門番! さっさと通しなさい!」
門番である男性は立ったまま門の柱にもたれかかり、居眠りをしているようだった。
大声をあげられても特に驚く様子もなく、ゆっくりと目を開けて女性の対応をした。
「パーティの参加者でしょうか?」
「ええ、そうよ!」
門番は招待状を確認すると、門を開けて女性を通した。
「入って突き当りを左に進んでください」
女性は怒った様子で門をくぐった。
次は私の番か、と門番に声をかけようとしたが、まるで狸寝入りかと思うほどの早さで再び居眠りを始めた。
正直門番としてどうなのだろうと思ったが、その反面仕方がないのかなとも思った。
私もメイドの仕事と勉強の両立で疲れて居眠りしそうになったことは何度もある。
流石に立ったまま寝るようなことはしたことないが、少しだけ気持ちは分かる。
きっと疲れがたまっているのだろう、と考え優しく門番を起こす事にした。
「あの、門番さん。お疲れのところ申し訳ございません。パーティの招待状があるのですが、門を通していただいてもよろしいでしょうか?」
私が声をかけると、門番は先ほどと違って一気に目を見開き、良い笑顔を浮かべた。
魔女から馬車で受け取っていた、魔法で作った招待状。
それを確認すると、私に返しながら一緒に何かを手渡してきた。
「……えっ!? こ、これは?」
それは、仮面だった。
「急な話で大変申し訳ございません。今夜のパーティは仮面をつけての開催となります。こちらを付けないとダンスルームに入れません。また、入った後も仮面を外すと追い出されてしまいますのでご注意下さい」
仮面は目元を中心に隠すもので、口元は空いていた。
せっかくのメイクが隠れてしまうが、決まりなら仕方がないかと想い仮面を付けた。
なんだか、町中で見かけた演劇のポスターに描かれた役者になった気分だ。
「さあ、どうぞお通り下さい。突き当りを右に進んだところの建物がダンスルームとなります」
「右ですか? 先ほどの方は左に進んだような? それに仮面も渡されていなかったような……」
「まあまあ、気にしないでください。左の方にも大勢人がいますが、気にせずどうぞ。右にお進みください」
少し困惑しつつも、私は門をくぐって突き当りを右へ進んだ。
「だいぶ絞れたな……」
女性達に気付かれないよう、控室とダンスルームを繋ぐ廊下から、ドアを少しだけ中の様子を見て、私、王子はそう呟いた。
目論見は、どうやら成功したようだ。
私の目論見は主に二つ。
一つ目は、門番に頼んで居眠りをしたふりをさせたことだ。
これは働く人に対し敬意を払えるか、高圧的な態度を取らないかを見ている。
怒鳴ってたたき起こすなど論外。
門をくぐって突き当たり左の別館行き。
ダンスルームになど向かわせない。
優しく声をかける、などをして起こした女性は次に待ち受ける二つ目のチェックを受ける。
二つ目は、以前父上が演劇の真似事をするために買い集めた仮面を付けさせること。
外見にしか自信の無い女仮面を付けたがらないためそこで別館行きに出来るし、実際に会った時に内面を出すしかなくなり、私が選びやすくなる。
残った女性は十人程度。
確か、招待状は三十人近くの女性達に渡ったはずなので、おおよそ三分の一にまで絞れたことになる。
と、その時、ダンスルームから廊下に出る扉が開いた。
「おや、王子。中の様子見ですか?」
私が覗いているのがばれないよう素早くドアを閉じて、コックである中年の男がそう言った。
ダンスルームでは今、パーティに招かれた女性達をもてなす為の食事が振舞われている。
「変な女はいなかったか?」
「いえ、特には……。そういえば一人、少々王子の好みに合いそうな方がいらっしゃいました」
「何、どの女性だ? どんな女性だった?」
「水色と白のドレスの方です。どうやら、自ら進んで料理をする方のようです。口にした料理が大変気に入ったようで『私も作りたい』とおっしゃっておりました」
「『作らせたい』ではなく『作りたい』と言ったのだ」
私は少しだけ胸を躍らせた。
妻にしたい、と心から思える女性に出会えるかもしれない、と。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
次の話は、ついにシンデレラと王子が初対面!
シンデレラはどのようにして王子に注目されるのでしょうか?
よろしければご覧いただきたいです。