表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

魔女との取引

次に妙な点は「魔女はなぜ、シンデレラを助けるために魔法を使ったのか?」です。

「魔女……!?」

「ええ。今、庭に生やした薬草は、お近づきの印にプレゼントしよう」

「ありがとうございます。これで、薬草の研究ができます」

「研究? 売って少しは贅沢するんじゃ……」

 少し戸惑った表情をする魔女。

「……まあ、良いか。話がしたいのだけど、上がっていいかな?」

 私の部屋である屋根裏部屋の魔女。

 どうぞ、と私は扉を開けるが、窓から入ると言って、魔女は箒で飛んで行った。

 屋根裏に急ぐと、魔女は靴を脱いだところだった。

 おもてなしをしようと、私の数少ない嗜好品である紅茶をふるまったところで、私は魔女に話しかけた。

「魔法を使える方って、本当にいらっしゃるんですね」

「素直に信じてくれてありがたい」

「あの、魔女の世界でこの薬草を簡単に栽培する方法ってありませんか? 教えてくれたらこちらで栽培しますので、お返しとして売って得たお金の一部を……」

「あっはっは! 魔女であるこの私に取引を仕掛けるとは大したものだよ。……悪いけど、それは断らせてもらおう。人間の世界と魔女の世界では別のお金を使うんだ。一応こっちのお金は持ってるけど、使うことはほとんどないからね」

 私ががっかりしていると、魔女は紅茶を飲み干してこう続けた。

「だけど、取引しようって考えは悪くない。こっちもそのつもりで会いに来たんだ」

「そのつもり、とは……?」

「シンデレラ、この国の王子を口説き落としてくれないかい?」

 一瞬、いや、十五秒くらい頭が止まった感覚がした。

「……はい?」

「王子と結婚するんだ。そしたら、城中に様々な薬草を生やそう。好きなだけ取って、研究でも何でも好きにするといい」

「む、無理です。会うこともできないのに……」

「城でパーティがあるんだろ? そこで出会うんだ」

「機会はあっても、パーティに参加するための招待状がありません。それに私は美しくありません。ドレスも持ってないし!」

「……私に魔法をかけてもらう権利を三つ上げよう。それなら『招待状』と『外見』の問題は解決だ」

「で、でも、男の人との恋愛なんかしたことないです。い、色々準備ってものが……」

「いいかいシンデレラ!」

 魔女のあまりの迫力に、私は黙り込んだ。

「準備に完璧などありえない。必ずどこかに不足がある状態で、何かを成すために行動しなければならない。シンデレラの考えでは、永久に行動を起こせない。『どうしてできないのか』より『今、あるものでどうすればできるのか』を考えるんだ」

 それに、と魔女は一呼吸を置く。

「チャンスは、明日のパーティが最後かもしれない。王子が結婚してもいいのかい? シンデレラではない、他の女と!」

 黙り込んでしまう私。

「……少し、考えさせてください」

 色々な話が上がって頭が混乱してきた。

 確かに、魔法が三つ使えるなら、王子様に近づけるかもしれない。薬草をもっと手に入れて、研究が進めば夢に近づけるかもしれない。

 失敗したらを考えると、少し怖い、でも、でも……!

「……質問、いいですか?」

「何だい?」

「なぜ、私にこんな取引を持ち掛けたのですか? 魔法を三つ使って、私がもし王子様と結婚出来たら薬草をたくさん貰える。こんなことをして、魔女さんにどんなメリットがあるんですか?」

 少し驚いた表情を見せた後、魔女はニヤリと笑みを浮かべた。

「へえ……。都合の良い所だけに目が行って気付かないと思ったんだけど、なかなか賢いようだね。いいだろう、教えてあげよう。シンデレラ、君はね……」

 私はごくりと唾をのむ。

「ギャンブルの対象になったんだよ」

「……ギャンブル!?」

「そう。私たち魔女はね、少しだけ魔法を使う権利を得た人間が、課された挑戦を成し遂げることができるのか、大人数の魔女で賭けをやるのさ。人間だってやるだろう? どの馬が一番速く走れるかとかさ。今回は私が内容を決める番。『身寄りのないメイドが、三つの魔法だけで王子と結婚できるのか』が、今回のテーマだね」

「遊び、なんですか?」

「そうだね。見世物は嫌かい?」

「あまり好きではないです。……けど」

「けど?」

「やります。ずっと憧れていた王子様と結婚して、薬草研究の夢もかなえたいんです」

「決まりだね。……使う魔法は何が良い? 『どんな人でも本物だと思う招待状』と『美しくなるためのドレスとメイク』は必要として、最後はどうしようか?」

 うつむいて少し考え込む私。

「当日はご主人様達のパーティ出席の準備を手伝うと思うので、それが終わってからでも間に合う移動手段が必要です」

「それなら、カボチャの馬車がお勧めだね」

「素敵。それでお願いします」

「うん、話もまとまった。明日、ご主人様とやらが出た後に馬車で迎えに来るよ。他の二つはその後で」

 話す事が全て終わり、魔女は窓の外に足を出して窓のふちに腰かけた。

「そうそう、シンデレラ。一つ言い忘れていたよ」

「何ですか?」

「私は、シンデレラが王子と結婚するに賭けたよ」

「えっ?」

「では、明日の夜に。またね」

 満月に向かって飛び、溶けるように消えていく魔女。

 私の、恐らく人生で一番の挑戦が始まろうとしていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

吉善なりのブラッシュアップは「魔女達のギャンブルの対象だったから」でした。

次は王子様が登場!

ところで皆さん、王子様は外見だけで恋人を決める人なのでしょうか? 

シンデレラという話は『美人が勝つ』という話なのでしょうか?

第3話でブラッシュアップしていきますので、よろしければご覧いただきたいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ