僕の大好きな岬おねえちゃん
岬さんが帰ってこない。
宿泊先のバンガローに電話したら、すでにチェックアウトしたと返答があった。
それから3日だ。
バンガローがあるあたりは湖畔になっており、たくさんのボートがある。
『岬さん!岬さん!』
やっと。やっと2人きりになれたのに。
あたりを探す。聞き込みをし、時には付近の山に入り探した。三日三晩。僕も岬さんと同じバンガローに泊まり探し続けた。
捜索願を出すか?
何もやましいことはしてないのだ。警察の力を借りてもいいのだろう。
涼子の死に際。
あいつが太一に送ったメールを撮っておいた。
涼子は、なんらかの方法で僕が、涼子のおじちゃんであることを突き止めた。
『他安いものだな、人とは。』
涼子は体が弱かったのもあり、吊るしたら即死だった。自分の姪に手をかけるのは躊躇いがなかったわけではない。岬さんの、娘だし。ただ、岬さんに僕と岬さんが姉弟である事は知られたくなかった。
岬姉さんをはじめて抱いた日。血の繋がりがあれど、あんなに素敵で僕を虜にする女の人はいないと感じた。
会ったことのなかった綺麗な姉。
鯨井という名字は、荻羽生村には存在しない。
僕は岬姉さんが使用人になる頃、父と母が産んだ子だ。しかし、すぐに荻羽生村によって鯨井家により売りに出された。労働力として育てられて、小さい頃から学校終わりはいろいろなところで働かされた。
姉は洞島の家を出てたから僕のことを知らない。
僕は実家から1枚だけ岬姉さんの写真を送ってもらえた。
『なんて、綺麗な女の人なんだ。』
姉ではなく、1人の女として憧れた。
姉が荻羽生村を出た頃、僕は村に戻された。
『姉の分も荻羽生村に奉仕せよ。』
羽生村の荒屋に住まわされて、昼は学校、放課後は労働。たまに出稼ぎで、東京の岬姉さんがいた施設で働かされた。
運が良かった。すぐに岬姉さんを口説いた。
岬姉さんと会っている時間は夢のようだった。姉さんと1つになっていると体がぽかぽかしてきた。
荻羽生村のきつい仕事も乗り切れた。
僕の人生にとってはなくてならない人だ。
朝になりバンガローに戻る。バンガローは見晴らしがよく、湖畔がよく見えた。
スマホのバイブ音が鳴る。
開いてみる。
岬さんからだ。
『もう探さないで。あなたのお姉ちゃんより』
ふと窓の外を見る。
『・・・・・!!』
湖畔にはボートが1つ。ボートには青髪の女性が座っている。
『岬さんっ!』
バンガローを飛び出し、湖に近づく。
『岬さん!今、いくからっ!』
『来ないでっ!』
立ち止まる。
『私は、私はあなたの子を身籠っている!でもっ、許されない愛だった!そうでしょ?私に、弟なんているなんて思わなかった!』
『岬さん!愛に血の繋がりなんて関係ないんだっ!僕はただ、女としてあなたを愛した!それだけなんだっ!』
『わたしはーーー私はこんなの耐えられない。』
『岬さんっ!』
一発の銃声が鳴り響いた。
岬さんは湖に沈む。赤く赤く染まる湖。
『ああっ、岬っ、ああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!』
朝焼けの湖はとても、とても綺麗で、
残酷だった。




