荻羽生村焼失
轟々と燃え盛る屋敷。
私の荻羽生村が燃えていく。三井家は最後まで私達の足を引っ張るとは思わなかった。
少し離れた羽生村へ逃れる。
『こんなところに逃れることになるとはな。』
間もなく羽生村も炎に巻かれるだろう。
この村を運良く出たとしても、この先に何があろうか。東京で玲子とやり直すか?それもいいかもしれない。だが、今までのように暮らせるだろうか。
『この村でやりたい放題だったからな。』
法律的にアウトなことにも手をつけた。日陰者として生きていくには年老いたような気がする。
『旦那様、ご無沙汰しております。』
『岬・・・・。』
『旦那様、まさかこんなことになるとは思いませんでしたわ。』
『な、何がだっ!』
岬は耳元で囁く。
『人って、ちょっときっかけ与えれば思うように動いてくれるんですね。火を放つ手間が省けましたわ。』
『ははは・・・・。』
岬とは連絡が取れなくなっていた。三井が全て吐いた。玲子と一緒に岬からの連絡は全て私に届かないようにしていたそうだ。
『岬。すまなかった。私の脇が甘いばかりに、、娘の医療費、私の耳に入っていれば、、娘は、死なずに、、』
『旦那様が私を拒んでなかったのが知れて安心しました。でも、本当に私達のことを案じているのでしたら、単身で東京に来てくださるくらいしてもいいのではないですか?』
『・・・・すまない。』
『旦那様、これからどうなさるおつもりで?』
『さあ、わからんよ。それより、岬。これで最後になるだろう。お前にこれを渡しておく。』
私は岬にある書類を渡した。
『これは??』
『娘が死に、私も死ぬ。お主をまた1人にしてしまうのが忍びない。』
岬には寂しい思いをさせてしまった。|せめてもと思い、託す。《・・・・・・・・・・・》
『幸せになってほしい。』
『旦那様に心配されずとも、私はもう幸せですから。お気になさらずとも大丈夫です。』
『はは、寂しいものだ。』
今更、岬にやり直そうなんて野暮なことは言えなかった。
『旦那様、逃げるにしてもどうやってお逃げになるおつもりで?』
『ああ羽生村の出口があるからな。』
『そうですか。』
岬はニコリと笑い、去っていく。今日ほど時を戻せたらと感じたことはなかった。私は未だに岬に対して未練があったようだ。あんな美しく女盛りを二度と抱けない虚しさを感じていた。
『これからは、|弟と楽しく暮らすのだぞ。《・・・・・・・・・・》』
遠のく岬の姿にそう伝えてみた。
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『それではお昼のニュースをお伝えします。本日11時頃、○○県荻羽生村で大規模な火災がありました。地元消防署によると火は未だ消えておらず荻羽生村半径5キロにまで燃え広がっているようです。死傷者数不明、村に続く林道も火で通れなくなっているようで、懸命な消火活動は続いています。』
僕のいた村は、今まさに消えかかっていた。
岬さんは無事なようで、東京に向かっているようだ。何やら、羽生太蔵から書類をもらったみたいだ。
荻羽生村の火災焼失により、僕のお勤めは終わりだ。
施設に顔を出す。
『あら、行馬くん。聞いたわよ。どうする?雇用主が居なくなってしまって。良ければうちで直接働かない?』
ニコリと笑顔で答える。
『いいえ、結構です。|もう罰はしっかり受けたので《・・・・・・・・・・・・・》。』
ロッカーの荷物だけ受け取る。
太蔵が渡した書類が気になる。しかしもうどうでもいいのだ。岬さんとの幸せな生活が待っているのだから、何も怖くない。




