萩島はもう戻らない。
萩島の遺体は、部屋にあった。
ベッドに横たわり綺麗な顔だった。
『ごめんね。ありがとう。少しでも夢を見させてくれて。私の恋は許されないものだった。』
そうチャットが送られてきた。
涼子の計画は俺が萩島と三井と関係を持つこと。それで完結するとだけ聞かされていた。
萩島の部屋に来てみたら、息をしていなかった。
慌てて119番を呼んだ。
病院まで付き添った。蘇生を試みたようだが、すでに手遅れだった。萩島のお母さんが死体安置室に駆けつけた。
『うそよ・・・・うそよおおおお!!!』
無言の面会。萩島の母は泣き崩れた。
『親父?』
親父。羽生太蔵も現れた。萩島の母の背中をさすりながら親父の背中も震えている。
どういう事だ?
赤の他人の子どもが亡くなっただけなんだ。なのに、なぜこんなに悲しんでいるのだろうか。
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葬儀は盛大に行われた。
後から聞いた話だが、父がかなりお金を工面したようだった。
葬儀から数日。
親父から、萩島のお母さんと、萩島の遺品整理を行うように言われた。
萩島の部屋に上がる。萩島のお母さんはすでに遺品整理を始めていた。遺品整理、というよりは何かあるはずのものを必死に探しているように見えた。鬼の形相だ。
俺はそんな萩島のお母さんを尻目に遺品整理を始めた。
『ん?』
封筒が1枚出てきた。
『あの、なんか、手紙が出てきたのですが・・・・。』
『見せてくれる?』
声は落ちついているが、目をカッと見開き目尻に力が入りすぎているのか青筋が浮かんでいる。
『ありがとう太一くん。あなたはもう帰っていいわ。』
『そうですか、、、』
立ち上がり玄関に向かう。
『あとね、太一くん。』
『怜、あなたとの子どもを孕ってたみたいなの。知ってた?』
一瞬、体全身がずしんと重くなった。自分の体じゃないみたいだ。
『孕って・・・た?』
振り返ると、恨めしそうな表情をした萩島のお母さんの顔があった。
近づく萩島のお母さん。俺の頬を撫でて歯をカチカチ言わせながら告げる。
『太一、あなたは1番やってはいけないことをしてしまったのよ・・・・。』
なんだろう。赤の他人に対する言葉ではなく、
何か我が子に諭すような優しくも厳しさを含んだ言葉。
『太蔵さんのところに明日の朝一の新幹線で向かいなさい。そこであなたは、羽生としてのケジメをつけるのよ。大丈夫。私もいるから。』
頬から手を離し、振り向く。
手には新幹線のチケットがある。
明日はバイトだ。しかし、もう行く必要はないだろう。涼子による萩島への復讐は完遂したのだ。
あとは三井だが、一体この先はどうすればいいのだろうか。
家に戻る。
涼子の計画書を見返す。
『萩島と三井を毎日。太一くんが二股してるのがわかるように、匂わせながら。片割れがリタイアしたら、あとは運命のままに、流れにみを任せて。』
よくわからない。他にヒントはないだろうか。
涼子が最後に送ったメッセージをふと見返す。
迷ったらおじちゃんが教えてくれるよ。
おじちゃん?誰だろうか。まさか俺の親父?だとしたら萩島の母から言われたことは腑に落ちる。あの言葉は多分、親父からの伝言だろうから。
今日は疲れた。普段やらないような事はやってはならないのだろう。
新幹線は6時台だ。今日は早めに寝ることにした。




