涼子がいなくなったあの日。
涼子が死んだ。
葬儀の日。保健室登校だったが、クラスで葬儀に出る。
『太一。』
『行馬。』
『洞島さんは、首を吊って死んでたそうだ。』
『まだ、生きる事ができたのにな・・・・。』
クラスの奴らは形だけの合掌を行い、寝てる奴もいる。萩島の姿は・・・ない。
三井は両手で顔を覆っている。クラスメイトが背中をさすっている。
『洞島さん、もっと一緒に勉強したかった・・・うう・・・・。』
三井はああやっていい子ちゃんをいつまで続けるのだろうな。
『なあ、行馬。お前、協力者なんだろ?』
『なんのこと?』
『・・・・。』
『太一の味方だよ。いつでも。』
『腹の虫がおさまらなくてね。』
『何に怒ってるんだ?』
『知ってるだろ?』
『・・・高校でやる事はもう無いよ。』
『・・・・。』
『時が来たら伝えるよ。数年後、またその時が来たら太一に物語の続きは教えるから。』
『ああ、、頼む。』
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『ティッシュ配りしてきまーす。』
私は勤め先の大検予備校の、ティッシュ配りを率先して行っていた。萩島怜がいる高校の近くで毎日毎日配っていた。
そしてその時は来た。
萩島玲子の娘、怜が通った。見るからに様子がおかしい。制服は汚れていて、萩島の髪型も乱れており、襟元が緩い。胸元が見えてしまいそうなくらいだ。足の太ももからは血の後だろうか、赤い一本の筋がつたっている。
私はとにかくティッシュだけを押しつけるようにして渡した。
『あと、5個くらいちょうだい!』
萩島は怒鳴るようにして私に伝えてきた。
そんな茫然と萩島を見送る。萩島の背中は泣いているように見えた。あの感じでわかる。うまくいったのだ。自分の娘と行馬くんの計画は恐ろしかった。本当に私達が手を汚す事なく、萩島は性暴力を受けた。
後から聞いたが、三井は羽生の坊ちゃんにも振られてとにかく坊ちゃんの気をひこうとしたが、全て手のひらをかえされたそうだ。萩島に比べてあまりにも、三井への仕打ちが軽い気がした。
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涼子の葬儀の日。
私はなんの感情もなかった。首を吊って死んだ我が愛娘。何かもう、ただただ淡々と全てを済ませた。周りからは冷たい母と思われたかもしれない。涼子はまだ生きることはできた。だけど、死を選んだ。それすらも涼子の計画だったのでは無いかと思った。
クラスメイトが葬儀に来る。
羽生の坊ちゃんだ。私のことなんか覚えてないんだろう。
『この度はご愁傷様です。』
深々と一礼して顔が見える。ああ、旦那様に似てきた。燃ゆる殺意。早くこいつにも死の鉄槌を加えねばならない。
また1人来る。
『この度は・・・うう・・・ご愁傷様です。』
嘘泣き。
ショートカットで、高校生に相応しくない下品な胸とまた、下品な香水を匂わせている女。三井玲奈。こいつは、涼子のいじめだけでなく、この父親にも借りがある。
涼子は自分の死をもって伝えたかったのではないか。
『母さんの復讐は終わっていない。荻羽生村を忘れてはいけない。』
そんな声が聞こえてくるようだ。
クラスメイトが終わり、次に挨拶してきたのは初老の男性。
『ご愁傷様です。』
誰だろうか。こんな知り合いいたかしら。
しかし涼子の死を弔いにきてるのだ。野暮なことは言えない。
それよりも、私は忘れてはならないのだ。涼子がいなくても、行馬くんと協力して荻羽生村への復讐を完遂する。そこから、私と行馬くんの幸せな未来は始まるのだから。




