葛藤
『おーい、萩島ぁぁ!』
『あ、太一。』
目の前にいる赤髪ポニーテールのクラスメイトは、頭にバンダナをリボンの形にして巻いている。白のワンピースにスニーカー。
いつもと違う姿に思わずたじろぐ。
『なんか、いつもと違うな。』
『え、あ、うん。どうかな??』
『なんだか、萩島じゃないみたいだな。』
『どういう意味よー!!まあ、いいわ。』
似合っているという意味なんだが。
『このくらいじゃあダメなのね。』
萩島が何か言ったみたいだが、聞き取れなかった。
『今日はどこに行くんだ?』
『うーん。とりあえず目をつけているセレクトショップに行こうかなあ。それから、ヘアカットね。最後はエステよ。』
『盛り沢山だな。』
『イケメンになるためには大変なのよ。』
セレクトショップで、服を揃えて、
髪をセットし、エステでお肌を整える。
出来上がったのは、
グレーのテーラードジャケットに、紫のポケットチーフ。カジュアルなスラックスに、髪型はツイストパーマを毛先にかける。
『・・・。』
『ど、どうかな??』
『いい・・と思うわ。』
『なんだか微妙な反応だな。』
『そ、そうでないわ。あまりに変わりすぎてちょっと驚いたの。』
両人差し指をツンツンと合わせながら、チラチラ俺の方を見てくる。
『な、なんだよ?』
『いや、うん。十分。これなら、三井さんも。』
『どうだろうね。三井さん、モテそうだし。こんな高校デビューしました的な見た目。痛いと思われたりしてね。』
人差し指で頬をぽりぽりかきながら、
自虐的に笑う。
『大丈夫だよ。私は、いいと思う。』
『お、おう。』
萩島は俺を一瞥し、目を逸らす。
なんだか、ほんのり顔が紅くなっている。
『今日はありがとうな、萩島。』
ニカッと笑ってお礼を伝えた。
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『いや、うん。十分。これなら、三井さんも。』
そう十分すぎる。三井さんが、さらに太一にちょっかいかけやすくなっちゃう。
三井さんだけじゃない。たぶん、他の女の子も。
だって、太一めちゃくちゃカッコいい。
どうしよう。行馬の頼みを引き受けちゃったし。
引き受けないと、私の思いが。バレてしまう。
『今日はありがとうな、萩島。』
ズルい。そんな顔しないで。
行馬と太一と私。
ずっとこの心地よい関係でいたかったのに。
なんで。
なんで三井なんてチートみたいな女の子が、
太一に近づくのよ。
だって絶対、三井そんなに太一の事好きじゃない。ただのちょっかい。遊び。
でも、私が踏み込んで太一との関係が
崩れるのも嫌だ。
どうしよう。