報われない愛、愛に報いる。
バイト終わり。
教室の掃除をする。以前感じた視線は最近は感じることはなくなった。今日が決行の日だ。
太一と使う避妊具にキリでわからないくらいの大きさの穴を開ける。
太一は私にこういったものを用意させるから仕組むのは楽だ。
戸が開く。
『太一。』
『ああ萩島。』
生徒のいない空き教室は私達の情事の場だ。
『その今日は・・・・』
『ああ、そうだな。』
太一の手を引き、空き教室の戸に鍵をかけて電気を消す。
机をくっつけて男女2人が寝っ転がれるくらいの
大きさにする。
太一を仰向けに寝かせた。
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乱れた着衣を整える。
『ちょっとお手洗い。』
太一はトイレへ行った。私はしっかりと確認した。太一の子種は私のお腹の中にある。あとは待つだけだ。ただ一回で決まるかはわからない。何日かは、連続でそういう日を作る事にしよう。
これで、太一との子を授かれば私は、三井から太一を奪うことができる。
『楽しみだわ。』
太一が戻ってきた。
『どうする?ウチ来て・・・続きする?』
『あ、、今日は、、、』
スマホを見る、太一。
『今日は、サークルの集まりがあるんだ。ごめんな。』
『そう・・・。じゃあ、また明日バイトでね。』
襟を整えて校舎を出る。
『あれ?』
目から涙が出る。太一は相変わらずただ性欲を満たす為だけに私の体を使う。そして、また性欲を満たす為に、三井のところへ向かう。しかし、多分三井のところには一晩中いるはずだ。一晩中、行馬が動画で見せたような・・・・。
『うぇっ、うええええっ!!!』
思わず嘔吐する。だって私に宿そうとしている子は、そんな変態的な男の血を受け継ぐのだ。
いや、違う。これは、三井への嫌悪感だ。そうに違いない。だって私は太一の全てを愛しているのだ。
『耐えるの・・・耐えなきゃ!耐えないと!!』
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いじめで、心を病んで保健室登校になったある日。行馬くんと雇った探偵のおじちゃんと3人である喫茶店にいた。
『報告してもらえるかしら?』
『お客様にお渡しできる情報はそんなにありませんが、、、、』
探偵のおじちゃんの、報告書に目を通す。
萩島玲子は、ただの村の看護師だった。現状は羽生太蔵に一番近く、たまに荻羽生村近郊に太蔵と繰り出しては、ホテルに入る姿が見られる。娘は萩島怜。
羽生太蔵は萩島玲子以外に女の影が全くない。
だとしたら、羽生太一は誰の子だ?養子?母は既に他界しているのか?
三井は村専属弁護士。主に労働関係や、養子縁組、認知など村から出される仕事はあらかた請け負っている状況だ。
『もう少し調べないとわからないわね。』
『お客様、ここから先は少し料金高くなりますよ。なんだか、あの村きな臭くて。これ以上は命にも関わりそうな雰囲気があるんですよ。』
『あら、そうなの。行馬くんはあの村の出入りは自由よね?』
ずっと沈黙を貫いていた行馬くん。
『うん、涼子ちゃん。僕はあの村の住人だからね。何を調べればいいの?』
行馬くんに、頼めば探偵なんて使う必要はなかった。しかし、行馬くんにとっては故郷だ。故郷でゴタゴタがあっては申し訳ない。
『はあ。じゃあ私の役目は・・・・。』
探偵のおじちゃんが出て行こうとする。
『待ってちょうだい。あなたに頼めそうな仕事があるわ。命の危険もないような仕事。』
『はあ、なんでしょうか?』
『羽生村を調べて欲しいのよ。』
『はあ、荻羽生村でしょうか?』
『いや、羽生村よ。』
『涼子ちゃん、復讐に関係することなの?無駄なお金を使うのはあまり気が進まないよ。』
スマホの地図アプリを立ち上げる。
『そうかしらね。見てこの地図。荻羽生村の隣にある建物。何の為にあるかわからないわ。もしかしたら荻羽生村を追い込むヒントがあるかも。』
『・・・ないよ、そんなもの。』
『え?』
行馬くんが目を見開いて眉間に皺を寄せる。
『だってさ、太一の生まれとか弁護士が請け負っていた仕事について調べるのが先でしょ?これだけじゃあ、涼子ちゃんの計画に穴ができちゃうよ。』
『うーん、お母さんも知りたいと思うのよね。』
『岬さんは、知りたくも無いはずだよ。』
『・・・まあ、いいわ。』
行馬くんがこんなに誘導したがるのは引っかかる。そもそも母さんは、『行馬くんはあなたのサポートをしてくれる手足みたいなものだから。』
としか言ってない。
手足なのだ。母さんも企てをさせたく無いのだろう。
この件については、時間の少ない私にとっても調べる価値はそこまで無さそうだ。お母さんにバトンタッチしよう。今回は萩島と三井、そして羽生さえ壊せればいいのだ。
『ねえ、おじちゃん?戸籍とかその辺調べられないのかしら?あとは血筋とか、、、』
『うーん、だいぶハードルは高いですが、、、何せ委任状がないと。』
『誰の戸籍?』
『太一くんよ。もしくは萩島さん。』
『何を調べたいの?』
『萩島さんと太一くんは、血が繋がっていると私は睨んでいるわ。』
『あの2人が?馬鹿な。』
『もしそうだとしたら楽しくない?お互いの体を貪りあった先に、実は兄妹でした、みたいな。』
『まあ、そうだね。羽生家には確実にその事実は弱みになるよね。でもさ。そんなの、太一か萩島が養子縁組に出されたら意味ないじゃないかな。』
『ふむー。たしかに。』
『三井はその資料持ってないかな?』
『あるかもね。』
『おじちゃんは忍び込んで資料を盗むとかは頼めるのかしら?』
『いやさすがに、それは・・・・。』
『そうよね。でもあなた、請け負っているわよね?』
『は、はあ。』
『やめてあげなよ。ねえ、おじちゃん?僕らをあまり甘く見ない方がいいよ。三井家に忍び込むか、君の犯罪を告発するか。どっちがお望みかな?』
おじちゃんの弱みを握っている。
『わ、わかりました。でも報酬は・・・。』
『はずむよ。よろしくね。』
行馬くんがこの探偵のおじちゃんと繋がりがあった。しかし、なんでこんなグレーな人とのつながりがあるのだろうか。
『じゃあ、涼子ちゃん、今日は行くね。』
『泊まっていかないの?お母さん今日は日付け変わる前に帰ってくるよ?』
お母さんは仕事を変えて大検予備校の講師をやっている。家もワンルームマンションを借りた。だから基本的には夜は家にいることが増えた。
『うん、お勤めが終わってないんだ。』
『お勤め?ああボランティアのことね。』
『・・・。』
行馬くんは相変わらず施設にボランティアに行っているようだ。週5日は日中で、週末は宿直で入っている。熱心なことだ。
ただいつも。ボランティアに向かう彼の背中が小さく見えるのは、どうしてだろうか。




