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私の好きな人

鯨井行馬。

あの忌まわしい村から来たという少年。


『あ、岬さんおはようございます。』


毎朝、私のところへ挨拶に来る。


『・・・・。』


何しに来たのか。私と旦那様サイドの話し合いはもう終わったはずだ。養育費が惜しくなって私を殺しにでも来たのか。


『今日はお休みですか?』


『あなたに関係あるかしら?』


『はは!確かにそうですね。いや、実は岬さんがお休みかどうかは割とどうでもいいんです。何かお話したかっただけなんですよ。他に話題が思い浮かばなくて・・・・。』



この少年は娘と同い年くらいだ。

娘の涼子もかなり大人びているが、この少年もまた大人びた振る舞いをする。


『あなた学校は?』


『ああ、ウチの村の学校、こういう社会奉仕活動でも授業受けた代わりにしてくれるんです。あの村、いてもいいことないですから。』



『いてもいいことがない故郷なんて悲惨ね。』


『ええ。だから、僕はこうやって東京に来てはこちらでお世話になっているんです。』



『その年齢で、シングルマザーの苦しみや痛みなんてわからないでしょうに。物好きね。』


『そうですね。僕には父も母もいませんから。』


『そうだったの。ごめんなさい。』



『いやいや、岬さんがそんな顔しないでください!!ほら、顔を上げて。』


じっと見つめられる。何を考えているのか、この行馬という少年の思考が読めない。



『僕、中学を卒業したら、こっちの学校に来る予定なんです。ボランティアでも、ちょくちょく来ますが・・・・。そしたら、また会ってもらえませんか?』



『会うも何も、ボランティアで来るんじゃ・・・・・。』



『いえ、そうでなくて。』


手を握られる。心臓音が一際大きくなった。







『僕とお付き合いして欲しいんです、岬さん。』







『な・・・・。大人を揶揄うのはやめなさい。』


『僕は・・・本気です。』


『私のこと、何も知らないのに?』


『これから知りたいです。』


『ふーん、私の仕事が性風俗でも?』


『仕事=岬さんじゃないですから。』


『あなたと同い年の娘がいるのよ。』


『将来は3人家族ですね。』


屈託のない笑顔を向けてくる。

思わず胸が締め付けられる。



『私の何が・・・いいのよ。』


『青い髪、美しいお顔と体。』


なんだ、ヤリたいだけか。




『後はあなたが涼子さんを本気で愛してる姿勢。涼子さんに向ける表情。涼子さんを育てる為に仕事に命を燃やすべく出勤前の気合いの入った表情。この1ヶ月あなたしか目に入ってこなかった。

人を本気で愛しているあなたを見て、この人に愛して欲しいと思ってしまった。それだけじゃ、ダメですか?』



『・・・・私もう30過ぎてるわよ?』


『女盛りじゃないですか。』


『・・・・本当、行馬くん、中学生?』



『僕はまだ中学生ですよ。でも自立してます。稼ぎだってありますから。』



『そう、、、、』


中学生と30過ぎの女の恋愛。もはや罪だ。

私は罪をまた、重ねてしまうのか。






『涼子に許可を取ってちょうだい。』


『ママ、その子が私の将来のパパなんだよね?』


涼子だ。学校は、、ああ今日は土曜日か。



『いいの?涼子。』


『構わないよ。ママの好きにして。』


涼子も大人だ。

私は行馬くんと正式にお付き合いすることになった。

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