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共犯者

私の子は、普通じゃない。

言うなら天才だった。



一度読んだ本の内容は全て覚えられるし、相手の身振り手振りを真似て再現することが出来た。


私は、この子の才能を潰してはならないと思い、働きに出る事にした。不倫の末にできた子どもだけど、私にとってはお腹を痛めて産んだ子なのだ。可能性を開花させてあげたい。


しかしーーーー










世の中は厳しかった。


就職面接が通らない。


『残業とかお願いすることもありますが、可能ですか?』


『早出もあるんですが、いかがですか?』




大抵はこの手の質問をされて、自分がまだ、未就学児がいることを伝えると、不採用になることが多かった。


『ママー、お帰りなさい!』

『ただ今、涼子ちゃん。』

『今日ね、施設のおばちゃんがね!折り紙折ってくれたの!』


折り鶴を見せてくれる。

『あらー、岬さん!この子すごいわよ!折り鶴見ただけで、作り方まで再現したのよ!』


屈託のない笑顔を見せる、娘。


『ママ、すごいでしょ!!』




しかしながら、恐ろしい。これが旦那様の血なのか。だからこそ育て上げないといけない。彼女ならあるいはーー。



『・・・・すごいわね。夕飯食べましょうか。』

『今日は、肉じゃがだって!!』

『じゃあ、食堂に行きましょ。』




♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

また1通不採用通知が増えた。私は確かにこれと言ったスキルはない。しかし、仕事を選んでいるわけじゃない。正社員はやはりすぐには難しいのだろうか。



ある就職面接の時の待ち合い室。



順番を待っていた。

『ねえ、おねえさん、かわいいですね。面接会終わったら、お茶でも飲みいかない?』


『・・・・・。』


よれよれのスーツ。茶髪のロン毛。

年齢は私と同じくらい。



『あれっ?無視ぃ?てか、なんでこんな綺麗なおねえさんがこの会社受けてんの?』


だったら、アンタはなんで受けてんだよ。



『俺はあ、実家継ぐんだけど社会勉強で面接受けてるっつうかー、東京行きたいって言えば金出してくれるしぃ。』





社会はどうしてこう不平等なのだろう。

私はただ男の人を愛しただけ。その末に身籠った娘を育てる為に頑張ろうとしているだけ。なのに、なぜだろう。生まれや育った環境だけ登れる階段は決まってしまうのか。



このナンパ男は、多分この会社の面接にも受かり、実家の後を継ぎ裕福に暮らしていくのだろう。私はどうなるのだろうか。養育費に頼り、職を得ないで社会におんぶに抱っこでも暮らしていけるだろう。それを是としてもいいのだろう。しかし、私の娘は?皮肉にも旦那様の血を引き継いでこんなにも才能ある我が子の未来を私は潰したくない。


私はーーーー








私は今、日本一の歓楽街と言っても差し支えないだろう。新宿は歌舞伎町にいる。

この子を育ててしっかり才能を開花させるためには、お金が必要だ。だから、夜の街で働くことにした。短時間だろうと、稼ぐ為に。幸い職はすぐ得ることが出来た。いわゆる性風俗だ。


とにかく稼ぐことができた。

娘を塾に通わせた。とにかく全てを娘に投資する。私はそのためだけに自分の力を出した。



支援員からは、風俗は・・・と最初は止められた。




『では、私が働ける職場を見つけてきていただけるのでしょうか?』




こう伝えれば、支援員は口を閉じた。

私はそれなりに稼ぐことはできるようになった。でも、相変わらず私がいない夜の時間は支援員に頼りっきりでまだ、施設を出るには程遠かった。




そんな生活を続けて数年。

娘も小学校高学年になったある日。

あなたは、私の前に現れた。





『今日はボランティアさんが来ています。自己紹介をーーーー。』


こういった施設には、ボランティアがちょくちょく来ていた。何のことないいつもの風景。


たまたま休みだった私は、そのボランティアの自己紹介を聞いていた。次々と自己紹介が終わっていく。最後のボランティアの自己紹介が始まる。






『はじめまして。荻羽生村から来ました、鯨井行馬と言います。今日から1ヶ月こちらでお世話になります。よろしくお願いします。』

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