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青髪の使用人の悲劇

『岬さーーーん!』


僕の最愛の人が、ランチ一緒にと誘ってくれた。

大学近くのイタリアンが美味しいお店だ。

青い髪が綺麗な岬さんは、前髪を耳にかけるとこちらを向いて微笑んでくれた。



『今日は私の奢りだから、どんどん食べてちょうだい。』


『じ、じゃあピザと、イカ墨パスタと・・・・。』


『あらあら、イカ墨パスタなんて食べたら私の口も真っ黒になっちゃうわ。』


『・・・・っ!』



顔が熱くなるのがわかる。岬さんは大人だ。今日はこの後は授業がないから、岬さんの家でお泊まりだ。口の中も・・・。なんとも官能的で、この後の展開を期待させる一言だ。


そういうドキドキも大事だがーーーーー



『岬さん、筋書き通りだよ!ぜーんぶ、うまくいってるよ!!』


『あら、嬉しいわ。』


『萩島も、三井もそれにーーーふふ。楽しいね。』


『ええ。アイツらは相応しい復讐を成し遂げないといけないからーーー。』


『後はうまく動けば自爆してくれるよ。』


『ああ、やっとなのねーーーーあの忌々しい記憶、時代とさよならを告げる。』


『岬さん・・・・。』


ポケットから手のひらで包めるくらいの箱を出して、蓋を開ける。


『その、高いものは買えなかったんだけど。。

全部終わったら僕と一緒になって欲しいーー。』


『まあ、、!』


プロポーズリングだ。

岬さんは涙ぐむ。


『私なんかが、幸せになっていいのかしらーーーー。』


『いいんだよ。どんな人だってその権利はあるよ。』



良かった。あの人のように私の体だけを愛でるような人でなくてーーー


『僕、ほらぶっちゃけ大学なんて暇つぶしで来てるだけだから。稼ぎもあるからさ。全て終わったら籍を入れよう。』



『はい、よろしくお願いします。』




岬さんを幸せにしたい。だから、まずは岬さんが望んでいることを果たさないといけないのだ。

岬さんが作ったシナリオに従って動けば全てはうまくいくのだ。



♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎

すやすやと寝ている、彼。

『やっぱり若いわねえ。』


お昼を食べて帰ってから、ずっと嬌声を上げつつけていたような気がする。


外はもう真っ暗だ。



下着をつけてベランダに出る。こんな幸せは今までなかったのだ。つい思い出す。あの家にいた頃の自分をーーーー。














16年前。

私は、高校卒業してすぐある屋敷の使用人メイドとしての仕事を得た。


『き、今日からお世話になります!!な、名前はーーー』


『岬くんと呼べばいいかな?』


『は、はいっ、旦那様!』


いわゆるメイド服を着て仕事にあたっていた。ご主人様はシュッとしていて、少し癖っ毛のなんだか若々しい男性だった。




(大人の男性だ・・・・)


屋敷は広くよく、仕事でお客様が来ていたので来客対応している旦那様をそばで見る事ができた。


駆け引き、交渉を堂々とこなしている旦那様は率直に素敵な人だと思った。


高校を出たばかりの私にとって旦那様は洗練された憧れの人だった。当時、すでに旦那様には息子さんがいたが、奥様には一度もお会いすることはなかった。



『ねえねえ、岬さんー、今日のおやつなあに?』


『今日はチーズケーキを焼いていますよ。』


『わーい、チーズケーキ大好き!』


旦那様の息子さんはよく懐いてくれていて、岬さん、岬さんと呼んでくれた。奥様がいない寂しさもあったのか、本当に懐いてくれたのだ。



旦那様は昔から、主治医が定期的に訪問診療をしてくれていて付き添いの看護師がものすごく綺麗な人だった。看護師だけでくることもあり、採血なんかが必要なのか、一度訪問されると半日はかかっている状況だった。





『旦那様、お夕飯が出来ました。』

『岬くんのご飯は美味しいからな。息子に先にあげてくれ。私はそうだな。ちょっと仕事があるから、息子が食べ終わるくらいに部屋に持ってきて欲しい。ナイフとフォーク、スプーンは2セット頼むよ。』


『かしこまりました。』


いつもは食卓を囲むのに、その日は部屋食を所望されました。








コンコン。

『失礼しますーーー』

『やあ、入りたまえ。』


旦那様の部屋は書斎と寝室と応接間が1つになっているような作りだった。



『テーブルにおいていきますね。』


テーブルにお盆ごと置き、並べる。

『では、いただきます。』



『何かあれば、廊下におりますのでーーー』


『岬くん。』


『はい?』


『とても食べきれない。そうだ、キミも隣で一緒に食べないか?』


『ええ!そんな使用人の分際でーーーー。』

『いいから。』


旦那様は、自席の隣を叩く。ソファだ。ふかふかのソファ。一度座ってみたかったのだ。



『では失礼しますーーー』


『嬉しいよ。岬くん。』


座ったもの、どうしたらいいかわからない。

『はい、岬くん。』

旦那様はシルバーセットを渡してくる。


『私はこのパンと水だけで今日はいいんだ。後は食べてくれ。』


『し、しかし。』

『いいんだ。そのかわり私の話相手になっておくれ。』




旦那様は話をし始めた。当主としての苦悩、村の外との厄介な駆け引きなど、普段の堂々としている旦那様とは全く別の顔だった。


私だけが知っている旦那様の苦悩ーーーー

私の母性本能はすっかりくすぐられてしまっていたのだ。





旦那様とメイドの密会兼会食の日々は続いた。

2人分頼めたらーーとよく旦那様は言っていたが、やはり旦那様と使用人の垣根を堂々と超えるのは周りの目が許さなかったのだろう。


それでも、私は夜な夜な一緒に夕飯を食べ、旦那様の話を聞く時間がとても愛おしい時間だった。








ある日、旦那様はひどく弱っていた。

『どうされたのですか?』

『いやあ、仕事でちょっとしくじってしまってね。参ったよ。』


本当に弱っていた。

誰かが支えてあげないと、折れてしまいそうなくらいに。





私はーーーー体が反射的に動いたのかーーー


旦那様を後ろから抱きしめていた。

そして、頭を撫でて。

一回り年齢が違う男性に。


とんだ無礼だ。クビになるかもしれない。しかし、今日私が抱きしめないと旦那様は折れてしまいそうで、、、




『み、岬くん、、、』


奥様もおらず若くして当主を勤めているのだ。



その晩はずっとずっとそのままだった。



私と旦那様が男女の中になるのは早かった。

私が旦那様に初めてを捧げた日。私は嬉しくて泣いた。号泣した。旦那様は経験済みだったけど、荒々しくしかし包むような優しさがあって、私はとにかく泣きじゃくっていた。



使用人と旦那様。結ばれてはならない関係。

それでも私は旦那様に溺れていった。






ある日。

仕事をしていると吐き気をもよおした。

『はあはあ・・・・。』

ああたぶん。これは、、、


つわりなんだ。

旦那様との子どもを宿してしまったのだった。


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