3年越しに昔の女と。
『ふあああ・・・。』
朝の学生食堂。全学生5000人が収容できる巨大な食堂だ。運動部の学生の需要があるため、比較的早朝から空いている。
萩島が1限から授業があるから、見送りついでに食堂に来た。俺自身は3限からだから暇だ。
朝定食とブラックコーヒーを頼み、席に座る。
『太一くん?』
懐かしい声ーーーー
『ああ三井か。珍しいなこんな朝早く。』
三井はパンと、缶コーヒーを持って座ってきた。
Vネックニットに、ファー付きのダウンジャケット。黒のミニスカートに、ロングブーツだ。
三井のビジュアルなら一際目を引く。
『最近、図書館で勉強してるの。学生生活もあと少しだからねー。太一くんこそ、フル単の常習が3年のこの時期になんで、朝早くから?』
『ああ。ちょっと知り合いの家に泊まってさ。朝一緒に出たんだ。』
『知り合いねーーー。』
目を細めて見てくる。
腕を机について、少し胸元をチラつかせながら。
『変わらないなあ、三井は。』
『そう?』
『ああ。3年近くまともに話してなかったからな。あんまり変わってないから安心したよ。』
『ま、いいか。それよりさ。最近、なんかいい事あった??なんか、ニヤけていたから。』
『いや、別にーーーー。』
『そう。そう言えば、彼女とか出来た?』
『いや、別に。三井ほど、積極的じゃないからさ。』
『なあに?それ?私、そんなんじゃないわよ。まあ、いろんな噂は聞くのかしら?』
『同じサークルでも嫌でも入ってくるよ。』
顔を覗きこんでくる、三井。
わざとらしく豊満な胸元を見せつけてくる。
朝から刺激的な事だ。相変わらず、三井のこういうところは変わってないらしい。悪戯な笑みも変わらない。
『そう・・・。で、どう?』
『どう?って何がだよ?』
『かつての女の色恋沙汰を聞く気分は?』
『そうだね。まあ、あんまり気持ちのいいものではないね。』
『で?』
『そうだな。でもーーー。』
『でも?』
『そんな性に奔放な元カノを、身も心も俺に従順になってくれたら、それはそれで唆るシチュエーションかなあ。』
『へえ・・・・・。太一くんって意外とそういう外道なところあるんだ?』
腕に胸を押し付けてくる、三井。
『ねえ?学校サボっちゃおうよ。』
『別にいいけど、どこ行くの?』
俺の頬を撫でる三井。
『私、まだ眠いの。寝れるところ。』
舌舐めずりしながら、三井は俺に唇を重ねてきた。
その日俺らは授業をサボった。
♦︎♦︎♦︎♦︎
チャットを送る。
『太一、送ってくれてありがとね。』
お昼休み。大学構内の喫茶店でお昼をとりながら返事を待つ。
ホットココアを啜りながら昨晩の夢のような時間を思い出す。
愛に満ちた時間
高校最後の日にあったような乱暴なそれではなく、丁寧にとろけていった時間だった。
そうだって、私はやっと太一の女になれたのだから。
♦︎♦︎♦︎♦︎
太一くんはシャワーを浴びている。
私はタバコを燻らせながら、昼のワイドショーを見ていた。流れているのは大物芸能人の不倫報道だ。
『最近、芸能人の不倫多いわね。』
不倫自体の経験はない。そんなもの費用対効果が悪いからだ。だから、同世代や少し歳上で全て済ませてきた。
ピロン。
太一くんのスマホが鳴る。チャットの着信を見る。
『太一、送ってくれてありがとね。』
送り主は萩島だ。
『やっぱりそうだったんだ。』
太一くんは、あれだけ手を出さなかったのに、荻島と私と立て続けに手を出した。
一体、今更なぜだろうか?大学最後の思い出作り?いや、そんな事ではない。
どちらにせよ、萩島をまた排除しなくてはならない。私が太一くんの心を支配しなくてはならないのだ。
しかも今回は、太一くんにバレないようにしないといけないのだ。その為にも、ダイレクトなやり方はよくない。
『はあ。』
タバコを消す。
やはり私の未来の旦那様は食えない男だ。




