羽生、荻島、三井
だだっ広い畳。
庭園を見ながらかの愛しい人とお茶を飲む。
『今日のお茶は格別ですね。』
『私の付き添いの看護師を勤めてどのくらいかね?』
『子ども達と同じくらいの年月ですわ。』
『ずいぶんと大きくなったものだな。』
『さてさて。』
『旦那様、だめですよ。甘いお菓子はーー錦糸町されてますよね?』
『はあーーー。仕方ないのお。』
『次期当主の後継の時期になるまでは、、』
『いやーーそうだな。なれば、お前という蜜に吸い付くことにするのかのお。』
『旦那様。今日はこれから採血ですからーーお預けですよ。』
『致し方ないのぉ。なあ、玲子や。』
『なんですの?旦那様。』
『お前は、己が子ども達をどう思う?』
『そうですね。娘はーーなんだか、暗くなったような気がしますわ。』
『うむ。3年の時を経てやっと、前向きになったか。』
『でもあの時の判断は正しかった。そう確信しましたわ。私の庇護下にいるべき子ですわ。』
『そうだな。』
『ではーーーーーー』
『ええ。正しかったと思いますわ。もう1人の方は。』
『ああ。やはり、玲子。お前は聡明だ。』
抱き寄せられる体。
『旦那様。お預けですわーーーーーー』
口づけを交わす。
『ああーーーー私が人生で愛した、たった2人の女性はどちらも聡明だ。』
畳をすり減らしながら、私は旦那様の腕に沈んでいった。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
息が切れる。
どこへ行った?
あの2人が終電に向けて走るのを追った。なぜ、太一くんまで一緒の電車に乗ったのだ。萩島の家は知らない。なぜなら、つい最近まで萩島はノーマークだったからだ。監視対象は、太一くんだけだったから。まずい。あの2人が繋がれば、私はーーー。そう、どう切り返すか筋書きを思いつかない。太一くんにGPSでも付けていれば、こんなことにはならなかった。心臓が痛い。酸素が足りないから、心拍数を上げて血を全身に運ぶ。
つい、立ち止まる。
『ん?』
携帯が鳴る。
表示された名前は、、、
お父様だった。
『はい、玲奈です。』
『玲奈。羽生の御曹司とは懇意にしているのか?』
『申し訳ありません。未だにヨリを戻せていません。』
『困るな。お前の武器は女である事と、母親譲りの美貌だけなのだ。』
『・・・・。』
『お前が、羽生の御曹司と深い仲になれば、羽生にも深くとりいる事ができるのだ。いくら許嫁とはいえ、御曹司の意向は無視できまい。現当主の時代は良い。次期当主の時代にも、三井の家がしっかり食えていくにはあの、訴訟件数や揉め事が多い荻羽生村と繋がるのが不可欠なのだ。』
『はい、お父様。』
『無理に子種をつけても、懇意にならなければあっさりと離婚を突きつけられるぞ。』
『はい、お父様。』
『うむ。裏口までして環境を整えたのだ。精々励むが良い。』
電話は切れた。
三井家は荻羽生村との繋がりで財をなした弁護士一家だ。しかし現当主とお父様がそりが合わず、依頼件数もガタ落ちなのだ。要は稼ぎ頭の顧客との関係構築に私は不可欠という事だ。
なんで父親の営業活動の道具にされているのだろう。
私の父、三井聡は本当にクソだと思う。
要は私は政略結婚の真似事、枕営業を実の父にさせられている。
『さてとーーー』
探さねばならない。
萩島と太一が一線を超えないためにもーーーー




