愛欲への葛藤
太一くんとお邪魔虫の萩島が、ファミレスで楽しそうにしている。
許せない。
萩島あぁ、、、どうしてくれようかあ。
しかし、今は私よりあいつの方が太一くんとの距離は近いのだ。どうする??
♦︎♦︎♦︎♦︎
『まさか同じ大学だったとはなあ。』
『うん、私も知らなかったあ。』
ドギマギしてしまう。チーズハンバーグを頼むも、味がよくわからない。会話のペースは太一がリードしてくれてるが、上手く話せているのかわからない。
『で、でもすごいよねV大学の政治経済学部ってめちゃくちゃ偏差値高いよね。』
『うーん、受験当時はそう感じたけど入ってみたら別にそんなって感じ。偏差値と、社会でうまくやれるかは、比例しないし。』
『そっか、、、来年は太一は就職活動だよね?』
『ああ。なんだか、どうしようかなって感じ。ほら、実家のこともあるし・・・。』
『そっか、羽生家の次期当主だもんね。』
『うん。まあ、あの村の切り盛りに役立つ就職先がいいかな。金融機関かゼネコンか。法学だったら法律事務所という手もあったけど。法律事務所は、まあどちらかと言うと村の顧問弁護士を探してるって感じかな。』
『あれ?懇意にしている弁護士いなかったっけ?』
太一は箸を置く。
『うーん、なんかね。親父からの評価も微妙らしいし。これを機にって感じかな。』
『そっかあ。大変だね。』
『萩島は?来年、就職活動?』
ハンバーグを切る手が止まる。そっか。何も知らないのか、太一くん。そうだよね、3年間ずっと会ってもないし連絡も取ってなかったからなあ。
『わ、私は今年大学入ったばかりなんだあ。ちょっといろいろあってさ。高校辞めて、どうしようかなって思ってたら、3年経っちゃってさ。』
『そっか、、、まあでもいいんじゃないか?ようやく進む方向が見えたんだろ?』
なんだろう。幼なじみならば、もっと驚くだろう。いや、私が3年近く病んでたのを知ってるか。行馬はちょくちょく来てたし、だとしたら知ってて連絡を取らなかったのかな?ちょっとショックだ。同じ村で育った幼なじみなのに、少なくとも。
『おっと、もうこんな時間か。萩島は家は近いのか?』
『高校の時と一緒のところ住んでるよ。』
『そうなのか!良かった、まだ終電あるな!駅まで送っていくよ!』
駅までか。
そうだよね。私が期待しすぎたのかな。
あの荻羽生村での続きなんて、期待しちゃあ駄目だよね。
♦︎♦︎♦︎
『やばい!あれ、終電じゃねっ!?』
『ほんとだ!あれには乗らないと・・・・』
すでに出発のベルは鳴っている。
息が上がる。あの電車に乗らないと。乗ってしまわないと。私と太一はもうずいぶんと違う時間軸で過ごしているのだ。もう、あの綺麗な思い出のままでいないと。
抱いて欲しいなんて思ってはだめだ。仮に電車に乗れなくても、漫画喫茶にでも泊まればいいのだ。今日のたった1000円のチーズハンバーグとドリンクバーで過ごした、ファミレスでの夢のような時間で蹴りをつけないと。もう沼にハマってはいけない。だめなんだ。お母さんを悲しませられない。そう、あの高校生活最後の日は罰だ。私が背負った罪をあそこで精算したのだ。だから、もう幸せになんかーーーーー
『はあはあ、、はあはあ。』
良かった。電車に乗って1人で帰り、火照りは1人で、、
『あれ?』
1人で、、はない。
『やべ、勢い余って俺も乗ってしまったわ。はははは・・・・。』
終電。
私の最寄り駅には、漫画喫茶やホテルはない。何もない。いや、ある。
私の部屋がある。
プシュー。とりあえず駅に降りた。
『ははは、参ったなあ。タクシーでも呼んで帰るよ。』
『太一、どこ住んでんの?』
『えーと、S県のS駅。』
『え?なんで!!そんなところから学校通ってるの!?』
ゆうに片道1時間半はある。
『格安物件なんだ。こう見えても苦学生でね。親父は教育の一環で、学費も生活費も仕送りが無いんだわ。でも、まあ、タクシー代くらい・・・。』
『だったらさ!』
『え?』
『だったら、ウチ泊まりなよ。お金もったいないよ。』
血管が一気に膨張したかのように、全身の血流が私を熱くする。せっかくの決意を、太一が崩してくる。だったら、私のせいじゃない。太一が悪いんだ。何かあっても、太一のせいだ。




