3年前の時が動き出す
バイト生活も1ヶ月が過ぎようとしていた。
私は、大検に向けて勉強してきたことが無駄ではなかったことを痛感している。
校舎は古民家を利用しており、木造住宅である。
机も学校で使うような机だ。
古き良き古民家であるがゆえに隙間風もあるのだが、、。
『萩島せんせえーここ教えてー。』
『萩セン、こっちもー。』
頼られたり、求められるのはとても嬉しい。
3年間、誰にも必要とされていない感覚、社会から爪弾きにされていたように思えていたからだ。
教室の引き戸が開く。
『あ、萩島先生、教材運ぶの手伝ってもらえませんか?』
『はい、羽生先生。』
太一とも何事も無く、バイト仲間として毎日を過ごしている。腕まくりし、ダンボールを運ぶ太一。力が入るからか、筋肉や血管が浮き上がるのがわかる。私は、気づかれないようにそれを見る。メガネに黒髪、髪型も坊ちゃんカットをおしゃれにした感じで高校の時とは違うが、かられた襟足からうなじにしたたる汗に目がいく。
体の芯が熱くなるのがわかる。
火照り、粘液が精製されていき染み渡るのがよくわかる。
(いやだわ、、私これじゃあ、ただの変態だわ。)
『ありがとうございます、萩島先生。』
『いえ、じゃあ教室戻ります。』
そそくさと教室に戻る。
生徒指導に集中する。
『ねえ、先生?』
『なあに?』
女生徒に声をかけられる。
『今日も羽生先生かっこよかったよね?先生?』
『え??』
『先生わかっちゃうよー。だって羽生先生入ってくるたびに目で追ってるじゃん。』
他の女生徒もニヤついている。
『先生わかりやすいよなあ。』
『なー!』
生徒に笑われる。
そうか。そんなに私は、わかりやすいのか。もしかしたら太一にもバレてるのではないだろうか?
『・・・・。』
『?』
ふと誰かの視線を感じたが、気のせいだろうか。
♦︎♦︎♦︎♦︎
授業後、教室を掃除していた。
しかし、こう古いと床も微妙にでこぼこしていて転びそうになる。
・・・・。
やはり視線を感じる。窓を開けてみる。
『誰も、、、いないか。』
『萩島?』
『ぬわっ!!』
思わずつんのめる。
『危ないっ!』
転びそうになる。ガッと掴まれる。いや、腕に抱きしめられる。反射的に出した私の腕は程よく胴体に絡みつく。
『あ・・・・・。』
『大丈夫か?』
期せずして、太一と抱き合う形になる。
みるみる顔に熱を帯びる。
『あ、、、ご、ごめん。』
『ケガはないか?』
『うん。。』
太一から離れる。顔を伏せて一瞥する。全身の血液がいつもより早く流れるような感覚。
『なら、よかった。』
太一はニッコリ微笑む。
『・・・・っ!』
そんな風に微笑まないでーーー
私は、もうあの時のように。
清らかじゃないの、、
あの時と同じように微笑まないで、、
『なあ、萩島。』
『な、何?』
『飯でも食いに行かね?』
『え、、で、、でも。』
手を引かれる。
『酒も飲める年齢になったんだ。積もる話もあるだろうからさ。久々の再会なんだ。いいだろ?』
その眼は私を捉えて離さない。言われるがまま。
荻羽生村の夜を思い出す。
あの夜の続きが、そこにあるのかもしれない。
体の奥がじわりと暖かくなったような気がした。




