ケイカクノハジマリ
私は晴れて大検に合格し、志望大学に合格した。
足かけ3年。ずいぶん出遅れてしまった。
いや、心を癒すのに2年近くかかった。
完全に癒されることはなく、今もあの高校最後の日は夢に出てくる。それだけでない。荻羽生村での太一との夢のような一夜も夢見る時がある。
大学の履修登録を終えて、新歓ムード真っ盛りの大学構内を歩く。
サークルなんて入っていいのだろうか。
『おねーさん、政治サークル見てみない?』
ずいぶんと変な大学生だ。しかもサングラスに、ニット帽、そしてマスク。政治サークルとはまた、釣り合わないくらい怪しい。でも政治サークルだ。真面目に勉強するサークルならば、道を外すこともないだろう。
『じゃあ、少しだけ。』
『よっしゃ!かわい子ちゃん、1名ご案内ー!』
今日日、かわい子ちゃんなんて聞かない。
その大学生に連れてかれたのは、大学の空き教室だった。
『いいねー、キミうち入りなよ!合宿とか他大学との飲み会も多いし楽しいよ!!』
『えーどうしよーかなあ。』
絵に描いたようなナンパ大会。政治サークルではそんなことが繰り広げられていた。
帰ろう。
さーっと教室を眺める。1人だけ、真面目くんがいた。あんな真面目な人もいるのか。
何やら、簡単にサークルの説明をしているようだ。近づいてみる。黒縁メガネに、サラサラの黒髪。体型はシュッとしている。さらに近く。
その声を聞く。
その瞬間、私は教室から出て駆け抜けていた。何から逃げるように。涙を眼にためながら、心臓が痛いのは走っているからだけではない。血液が足りない。息が出来なくなる。
気がついたら、私は人気のない学校の中庭のベンチに座っていた。
『うあ・・・・。うっぷ。』
胃の中のものを全て出した。走りすぎたからではない。忘れようと思ったのに。ずっとずっと目を背けていたのだ。もうあのサークルには足を運ばない。
私の好きな人。
羽生太一がこの大学にいるなんて。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
『ふー。』
新歓1日目が終わった。
部屋でウィスキー片手に、タバコを吸う。
『萩島があそこに現れるのは想定外だったなあ。』
だって。涼子の筋書きにはなかったことだ。
『全くの偶然なのだろうか?』
行馬にメールを送る。
行馬は勧誘係だ。だったら、萩島だと気づいたはずだが。。
『ま、メール帰ってこないか。』
行馬はきっと新歓の飲み会中だろう。あいつのコミュ力は、新歓で一番発揮されるからな。
そう萩島とはここで出会わないのだ。
『まあ、問題ないか。事前準備は済んである。』
後は三井との距離だ。
手元にあるスマホに映っている写真を見る。
『まあ、この大学に来るのは知ってたけど。』
映っていたのは、大検予備校の合格者一覧。
『萩島玲 V大学福祉学部 合格』
時は満ちたのだ。ここから、洞島涼子の呪いが三井、萩島に襲いかかる。
生きていることを後悔させる計画の始まりだった。




