アバズレ沼
なし崩しに、青春を取り戻す為に別荘に来たわけだが。
『萩ちゃーん、こっちこっち!!』
ぷるんと揺れる巨峰。
『玲奈ちゃーん、待ってよお。』
走るポニーテール。
熟す前の果実。
『なあ、太一悪く無いだろ?』
『あ・・・ああ。』
水を掛け合う水着美少女が2人。
三井は黒水着。萩島は白水着。
『あ、太一くーん!行馬くーん!海入ろーよー!!!』
三井がたわわな胸元をぶるんぶるん揺らして手を振ってくる。刺激的な風景だ。
『しかし、去年のミスコンがなんで俺らと海に来てるんだろうなあ。』
海に向かって歩いていく。
昨日までリア充とはほど遠い人生を過ごしていたのに、こんなことになっているのだろうか。
三井は頭が良いはずだ。でも、行動は突拍子も無い。思考速度が人より速いのか。何を考えているのだろうか?そんな勘繰りは不要なのだろうか。
だって。
手を振っている三井の笑顔はとてもきれいなんだから。
『はあ、よく遊んだねっ!』
キャミソールにホットパンツ姿の三井。
『太一ぃ、ワタシ、行馬と買い出し行くからあっ!!夕飯よろしくぅ!』
萩島は大きめのTシャツだ。履いているものがわからないくらいダボっとしたシャツ。頭にはリボン結びでバンダナを巻いている。
いつもと違う幼なじみの姿に少し心拍数が高まるのがわかる。
『はにゅーくん?行こ?ご飯炊かなきゃ。』
三井が俺の袖をいじらしく引っ張る。
上目遣いで、少し首を傾げる。
企み的なものを感じるが、、
率直に言ってかわいい女の子だ。
まあでも。刹那的な青春でも悪くはないだろう。
すでに青春は謳歌しているのだから。
『ご飯炊けたよ!羽生くん!』
『あ、ああ。うっ、目が染みる。』
玉ねぎというのはどうしてこう涙を流させる野菜なのだろう。
『は、羽生くん!どうしたの!泣いてるよ!』
『いや、玉ねぎが目に染みただけだからさ。』
目を手で拭こうとする。
『ダメだよ、バイ菌とか入っちゃう。』
三井がハンカチを取り出した。
そのまま、近づき髪の匂いがわかるくらいの距離で俺の目を拭く。
(ち、近いっ!)
少し近づけばキスができるくらいの距離。
湿った唇が目に入る
(う・・・!)
『はーい、ふけたふけた。ワタシお肉切っちゃうね。』
用を済ませるとさっと離れていく。
ああ、こういう感じで。
魅惑的で。ああ、そうかあ。
湧き上がる感情。
玉ねぎを切る。猛烈に。
感情を切り刻むように。
ダンダンダンダンダンダンダンダン!
『お、羽生くん精がでるねえ。イケイケゴーゴー!』
三井はニコニコしながら、俺の包丁捌きを見つめる。
『うらうらうらうらっっっ!!!』
青臭い男が、不器用さを隠す為に。
『なあ、太一。』
『ねえ、太一。』
『ん?なんだ?』
『このカレー、やたら玉ねぎ多いよな。』
『ああ、玉ねぎ好きなんだ。』