三井さんはストーカーです。
俺と行馬と三井が高校を卒業して、3年が経った。萩島は退学した後どうなったのかは知らない。ずいぶん悲惨な高校最後の日だったようだが、それでいいのだ。
だって涼子の青春をぐちゃぐちゃにした1人なのだから。
V大学。俺れが通っている大学だ。大学はたまたま、行馬と三井と同じになって、すでに3年の月日が経っていた。
計画は動き出す。
涼子の筋書きがまさにこの年から始まっている。
この3年いろいろあった。
『あ、羽生。』
『先輩お疲れ様です。』
その先輩の腕にしがみつくように歩く三井。
政治サークルの先輩だ。
『あら、こんにちは羽生くん?』
『あ、ああ久しぶりだな、三井。』
『久しぶりなんて、ひどいわあ。サークルでいつも会っているじゃない。』
『そ、そうだな。あ、俺バイトあるから。』
その場をそそくさと立ち去る。
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『なあ、玲奈。』
『なあに?』
『お前、高校時代、羽生と付き合ってたって本当か?』
『えー?どう思う?』
『いやだって、あんな黒縁メガネの真面目そうな奴。玲奈に合うか?』
『えーひどーい。玲奈がチャラついてるみたいじゃん。』
『いや、そういう意味じゃなくて。ほら、結構挙動不審だし、なんか暗いし。』
『んー、まあでも高校時代はもっとチャラけてたんだけどね、羽生クン。』
『へえ、意外。まあ、いいか。そんなことより飲みに行こうぜ。』
『うーん、今日はお家帰りたいんだよねー。』
『大丈夫だって、終電までには・・・・。』
『ごめん、今日は課題やりたいから!』
『真面目だなあ、玲奈は。』
このつまらない男が今の私の彼氏だ。
今日はお泊まりを断った。
やらねばいけないコトがある。
太一クンは、挙動不審だし、なんか真面目腐ってるし、浮いた話もない。側から見ると超つまらない男になったのだ。
だけど、私は彼と結ばれないといけないのだ。
三井家の為のミッションなのだ。
形だけでなく、しっかり捉えないといけない。
その為に、同じ大学、同じ学部、同じサークル、同じゼミに入った。でも絶対、私を避けている。隙がないのだ。
これ見よがしに男といて、嫉妬させようと企み3年。ミスコンにも出て、大学1かわいい女の子として名も馳せた。ファッションモデルも始めた。
一度ヨリを戻したい事を話したことがある。
しかし、彼はこう言った。
『時が来たらね。』
それだけ伝えて去っていった。来年は就職活動だし、その時とはいつ来るのだろう。
彼はバイトか。
確かフリースクールのサポーターのバイトをしていたはずだ。
彼がバイトだと言う度に後を付け回したものだ。
高校時代に比べて、地味になったけどフリースクールで子どもと関わる彼は、いい顔をしていた。
あんな顔を私に向けてくれればと何度思ったことか。バイト終わりは、必ず近くのラーメン屋で醤油ラーメンを食べて帰る。帰ってからは、最近趣味で始めたギターをかき鳴らすのが聴こえてくる。私のイヤホンには彼の生活音が全て聴こえてくる。アダルトサイトを見て、発情する太一くんも太一の寝言も、何回トイレに行きそのうち何回大きい方だったかも手に取るようにわかる。
『絶対、彼にも隙があるはず。そこをつけば・・・。』
自室で太一くんの生活音を聴きながら壁に貼られている太一くん写真コレクションを眺める。
『ふふふ。』
壁一面の、太一クン。こまめに撮り、どんな時にどんな表情をしているか毎日眺めている。
こんなに太一クンの事を考えているのだから糸口はあるはずだ。
私と太一クンが結ばれる未来の為に。




