私のお母さん
珍しくお母さんが東京に来るらしい。愛娘が急に退学したのだから驚きだろう。女手1つで、私を育てて東京の学校に出してくれた。それをこんな形でやめることになるなんて思いもしなかった。
私はあのあと何度も死のうと思った。太一に捧げるべきものをクラスメイトに捧げ、あまつさえちゃんと処理しなかったからか、子を宿していたことがわかった。
『俺がなんとかしようか?』
行馬は退学後もよく様子を見に来てくれた。
妊娠発覚後も、産婦人科を紹介してくれて保証人的な人を紹介し、私は子を産むことなく終えた。
1つの生命をこの手にかけた罪悪感に苛まれて、何度も東京のビルの屋上から地上を見下ろす日々が続いた。
太一。
太一にまた抱きしめてもらえないならば、
死ぬに死にきれない。
罪悪だ。
そんな娘を察したのか母が来る。お母さんには気づかれてはいけない。だってお母さんが傷ついてしまう。
お母さんとは、渋谷のレストランで待ち合わせすることになった。私の人生を狂わせたこの禍々しい街で。
『あ、おかーさーん!』
いつもの元気な自分を見せる。
お母さんは、もう若くないが肌にも張りがあって
ボディラインも男を惹きつける魅力がある。美熟女というのだろう。洋服は、ニットにロングスカートにPコート。髪は綺麗な金髪を肩あたりで切り揃えている。
『あら、玲ちゃん。元気だった?』
元気なわけがない。しかし、虚勢で元気を通す。
『うん、学校はいろいろあって辞めちゃったけど、、、』
『まあ、大学なんて大検受ければなんとかなるわよ。』
そうか、大検。学校去った日に青髪の綺麗なティッシュ配りの女の人にもらったんだっけ。
『ごめんなさい。』
涙がポロポロ流れる。
『辛かったのね、いいの。話したくなったら話してちょうだい。お金は大丈夫よ。なんとでもなるわ。あ、お冷とランチセット2つね。』
ウェイターにそう伝えた。
母は気付いているのだろう。職業柄こんなケースを見たことくらいあるだろう。だからこそ、何も聞いてこないのか。いや、まさか手籠にされたなんてとこまでは想定してないだろう。
『今はゆっくりしなさい。私もしばらくこっちにいるから。』
『ありがとう。でも大丈夫なの?』
『先生が代わりの人手配してくれたから大丈夫よ。』
『そうなんだ。』
『世間ではね、不足しているなんて言われているけどツテを頼ればなんとかなるのよ。期間限定だし。』
『そうなんだ。でも大変だね。お母さん。』
『そうかしら?』
母の仕事は。
『看護師なんてすごいなあ。私じゃあ、無理だ。』
村唯一の診療所の看護師だ。




