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好きな人と○○したい人

高校に入って間もないある、桜の散りかけた日のことだった。授業が面倒で、人生で初めてサボった日。図書館なら、格好のサボりスポットだった。調べ物をしている振りをすれば、司書だって騙せる。分厚い図鑑を何冊か持って奥の机に構えた。村の小さな学校から、東京の高校にきてクラスになかなか馴染めずにいた。いや、馴染むまいと思っていたのかもしれない。



『羽生の当主は品行方正であれ。』



父の言葉は重かった。

中学まではガチガチに管理された生活を送ったのだ。少しくらい羽を伸ばしたいーーーー





『あら、おサボりさんかしら?』


気品のある声色。目の前に青い髪のウェーブをかけた華奢な女の子が座ってきた。スカートを短くするのが流行っている中、彼女はロングスカートのようにしっかり制服を着こなしていた。西洋の人形のような造形美。指先から手首を見てもかなり華奢。栄養が足りていないのではないかと思うくらいの細さと白さ。だからこそ、こんな華奢な女の子を思い切り抱いて骨の一本でも折ってやりたい、そんな加虐的な感情を抱かせる色気がスカートとは対照的に緩い胸元から出ていた。


『キミは・・・?キミもサボり?』


『私は、クラスが嫌いなの。』


『え?でも、まだ、4月になったばかりじゃ、、』


『ふふ。田舎から出てきたのかしら?エスカレーター式の学校だから、中等部からそのまま上がったの。私、中等部の時から浮いていたから。あと、体があまり強くないの。だからこうやって図書館や保健室が私のテリトリー。』


頬杖をついて俺の顔を覗きこんでくる。萩島と違い、大人の女性の匂いだ。だらしない胸元からチラチラと見える女性の象徴。


『ふふ。キミって素直だね。』



『え、いや、ああ、ごめん。つい。』


唇に人差し指を当ててくる。



『いいの。私は見られても、あなたの今晩のおかずになっても構わないわ。』


血管が広がり、血流が全身に巡るのがわかる。この女は俺が欲していたものだ。手玉に取るような悪戯好き。そんな女を俺は屈服させたい。それが羽生の品行方正な女の愛し方だと思っていたから。



品行方正にだ。

話題を変える。



『どこか具合が悪いの?』

『ええ。とても。大人になれるかわからないわ。』


『そうなのか。』


俺が露骨に落ち込んだのを察したようで、クスリと笑う。


『初対面の女の子に感情移入してるのかしら?そうだとしたらあなたとても優しい子だけど、、なんだがどす黒いものを抱えているのだとしたらとんだ役者ね。』


俺の頭を撫でてくる。



『なっ・・・・。』


『ふふ。かわいいわあ。』



俺の加虐的な心を逆撫でする。それがまたたまらなくいい女だと思わせる。



このまま、親父がこの子のような青髪をした使用人のように襲ってしまいたくなる。



品行方正にあらねばならない。その教えが本能を沈めた。


『なあ、また会えるかな?』


『あら。私に会いたいの?ふふふ。図書館か保健室に来てくれれば、大概はいるわよ。まずは、お友達からかしら?はい、これお近づきのしるしのバナナ。美味しいわよ。』


色白、華奢、不健康の真逆の栄養価の高い食べ物を渡される。



『洞島涼子よ。あなたは?』


『は、羽生太一だ。』


『よろしくね。また会いにきて・・・。』


口元に笑みを浮かべながら、振り向きざまに手を頬に当てて伝えてくる。なんと艶やかな。リビドーが高まる。




涼子は図書館を出ていった。


♦︎♦︎♦︎

『ふふ、、やっぱり似てるわあ。』


スカートからペンダントを出す。

写真を見る。



『やっぱり羽生太蔵の子って感じね。ふふふ。私たちも似たもの同士なのかしら?』



♦︎♦︎♦︎♦︎

涼子から遅れて、数分後。

立ちあがろうとするとチャイムが鳴る。


涼子との逢瀬で1限まるまる費やしたのか。

男のリビドーというのは愚かしいと思う。だが、本能こそが人間の根源的な行動を決定づけるのだろうと思った。



図書館を出た。



『あ、痛っ!』


『あ、すみまーーーなんだ、萩島か。』


『なんだとは何よおっ!ってなんで、太一ここにいるのよ?』


『ああ、調べ物だよ。』


『調べ物ねえ、、バナナを抱えながら?』


涼子にもらったバナナだ。


『朝飯抜いてしまったからさ。』


『ふーん。』


なんだか萩島は不満そうな顔だ。


『まあ、いいけど。』


『じゃあな。』


『あ、うん。』



教室に戻ろう。


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