さようならは言わない。あなたは僕の中で、物語として生き続けるから。
あれから1ヶ月。
今年ももう終わる。
年内最後の通学の日。涼子に会いに来た。
『どうかしら?そのあとは?』
『三井とは接点はほとんどないよ。視線は感じるけどね。』
『いい気味ね。ぜーんぶ、自分のものにできると勘違いしている糞女がっ!はーはっはっ!いい気味よぉっ!!』
ベッドに寝たまま笑いとばす。
それほど涼子は元気がないのか。
『萩島も学校を辞めて、三井は失意のまま卒業を迎える。私の復讐はこれで完結したのよ!』
『ああ、そうだな。涼子。』
俺の手を握りしめてくる。その手はすっかり痩せ細ってしまった。力もない。
『涼子、ご飯食べてるか?』
『要らないわ。食欲ないもの。』
『そうか・・・・。なあ、何かして欲しいこととかないか?買ってきて欲しいものでもいい。』
涼子のこんな人生・・・・一つでも多くの願いを叶えてあげたい。
『太一クンには叶えてもらったもの。私の願い。』
『それだけで、、いいのか?』
『いいのよ。私はそうしたかったから。』
悲し過ぎる。人生の終幕の願いが、かつて自分をいじめた女たちへの復讐なんてーーーー
『でもね、この身が滅んでも意思は残るの。あいつらを許すな、滅せよ、されば己の魂は救われるってね。』
『・・・。』
『肉体としては死ぬけど、意思は残るわ。意思を引き継ぐ人も残る。だから、せめて一泡吹かせられたらってそう思ったわ。』
『涼子・・・・ごめんな。俺が弱いばかりに。』
『いいのよ。結果良ければって言うじゃない。』
涼子の顔色はどんどん悪くなる。
『はあ・・・疲れちゃった。ちょっと眠ろうかしら。』
手を強く握りしめる。お願いだ、涼子。
生きてくれ、俺の為に。
ガラッ!
『羽生様、本日の面会時間は終了です。』
看護師に告げられた。後ろ髪を引かれる思いだが、仕方ない。
『涼子、また来るよ。口づけしても?』
『嫌よ、恥ずかしい。』
『そうか、、じゃあまた。』
『ええ・・・・・。』
俺は涼子の病室を後にした。
私は病室で1人になる。
『羽生くん、別にあなたが他の人を好きでも、寝取られても構わなかったのよ。だってね、私ね。』
病室から見える景色を目に焼き付ける。
『あなたのことも復讐の対象としか、見てないから。』
目を閉じる。深い、深い闇の底へ誘われるように眠りに落ちていく。大丈夫。あとは任せるわ。
あとはあの人に。
♦︎♦︎♦︎♦︎
俺が洞島の死を知ったのは、明朝9時からのホームルームでの担任の淡々とした連絡によってだった。
俺はホームルームを終えて、図書館にいた。
窓越しに空を見上げる。雲一つない快晴。
そうこんな日だった。
涼子と俺が出会ったのはこんな晴れた日だった。




